見出し画像

背中スイッチは衰えない

子どもを連れて出かけると、
だいたい、抱っこで寝てしまう。

とくに、お散歩の帰り道。

歩き疲れた、と言われ、
抱っこをすると、
そのまま、すとん。

さっきまで、おしゃべりしていたのに。

まぶたが落ちて、
体の力が抜けて、
気づけば、完全に就寝。

抱っこ紐は、
もう卒業した。

今は、ヒップシートが大活躍している。

肩と腰に重みはくるけれど、
頑張れば、まあ、耐えられる。

問題は、ここからだ。

家に着く直前。
あるいは、買い物の途中。

そろそろ降ろしたい。

そう思って、
そっとベビーカーに乗せようとすると。

起きる。

確実に。

どんなに静かに。
どんなに慎重に。

まるで、
体のどこかにセンサーでも搭載されているかのように。

抱っこから離れた瞬間、
ぱちっ。

目が開く。

そして、泣く。

もちろん、
買い物カートに乗せようものなら、
だっこ、と全力で拒否。

眠いのに。
でも、抱っこじゃないと嫌。

どういう仕組みなのか、母には分からない。

きっと、
腕の角度。
揺れ方。
体温。

ほんの少しの違いを、正確に察知している。

抱っこで寝ているあいだは、こんなに重いのに。

降ろそうとした瞬間、こんなに軽く動く。

不思議だ。

眠っている顔を見ながら、いつも思う。

このまま、家まで抱っこで行くか。

それとも、起きる覚悟で降ろすか。

だいたい、前者を選ぶ。

そのほうが、結果的に平和だからだ。

腕は疲れる。
腰も痛い。

だけど、起きて泣かれるよりはずっといい。

今日も、
背中スイッチは、
正常に作動している。

異常なし。

どころか、精度が上がっている。

ため息ひとつついて、
その重みを受け止める。

小さな体。
規則正しい寝息。

この重さも、
いつかなくなるのだろう。

そう考えると、
今は仕方ないか、とも思える。

抱っこでしか、眠れない時間。

母の腕でしか、安心できない時間。

今日もまた、
スイッチに引っかかりながら、
ゆっくり歩いて帰る。

いいなと思ったら応援しよう!