【第四話】 辺境の街
第四話 辺境の街 ― 魔獣汚染の序章 ―
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第四話 辺境の街
辺境の街に到着
辺境伯領の門をくぐると、そこには小さな街が広がっていた。
――平和なはずの場所だった。
山間の土地に寄り添うように建てられた石造りの家々。
小さな広場、整備された石畳。通りには人々が行き交い、子どもたちの笑い声が響く。
屋台からは焼きたてのパンや香辛料の匂いが漂い、商人たちの呼び声が通りに溶けていた。
「おお、久しぶりに街だな!」
レオンハルトが大きく伸びをする。
「さっきまで魔獣と戦ってたのに、急に平和ね」
私は周囲を見回した。
街灯の代わりに、青白く光る石が吊るされている。
「それ、魔石ランプだよ」
「へぇ……」
文明レベルは中世なのに、魔石で電灯のようなものがある。
錬金術もあるらしい。――この世界、技術ツリーがちょっと変だ。
武器屋、ポーション屋、雑貨屋。
いかにも異世界な店が並んでいる。
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神殿の異様な列
だが――
一つだけ、異様な光景があった。
神殿の前に、妙に長い列ができている。
怪我人のような者が多く、腕や首に包帯を巻いていた。
その顔には疲労と焦りの色が混ざる。
「神殿ってこんなに混むもの?」
「最近ちょっと騒ぎがあるらしい」
レオンハルトはそれ以上語らなかった。
私は通りの脇の路地へ視線を向ける。
壁にもたれる男。腕に巻かれた包帯。
その隙間から――黒い斑点。
男は慌てて袖を引き下ろした。
「……?」
引っかかるものはあった。だが、今は関係ない。
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少女の消失
「ちょっと見て回っていい?」
「迷子になるなよ」
軽口を交わし、歩き出した――その時。
ドンッ。
衝撃。
小さな影が、私のトランクを掴んで走り出した。
「待て!」
細い路地へ逃げ込む影を追う。
奥で、少年は立ち止まっていた。
痩せた体。ぼろぼろの服。
そして――その後ろ。倒れている少女。
「……妹か?」
レオンハルトの声が低くなる。
私は言葉を失った。
少女の体の半分が、黒い結晶に覆われていた。
まるで――石になりかけている。
「妹を助ける金が必要なんだ!」
少年の声は震え、唇はわずかに紫色になっていた。
「神殿に行っても追い返される!薬も買えない!」
足音。
「真琴?」
フィオナが駆け寄ってくる。
少女を見た瞬間、その顔色が変わった。
「……汚染」
すぐに膝をつく。
「大丈夫、今助けます」
淡い光。
治癒魔法。
その時――
《浄化魔法ログ》
《構文エラー:5・3》
《浄化率:42%》
――低い。
光が少女を包む。
黒い結晶が、わずかに砕ける。
だが――止まる。
「……くっ」
フィオナの額に汗。
「お願い……!」
少年が妹の手を握る。
その手には、必死な祈りが込められていた。
「大丈夫だ!絶対助ける!」
少女は弱く笑った。
「おにいちゃん……だいじょうぶ……」
――その瞬間。
黒い部分が崩れ始めた。
音もなく。
粒子になって。
「え……?」
少女は――兄の手を握ったまま、消えた。
沈黙。
少年は動かない。
ただ、そこを見つめている。
フィオナの手が震える。
「……助けられなかった」
その声は、かすれていた。
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ヴィクトルの登場
私はもう一度、ログを見ていた。
《汚染魔力》
《侵食率:78%》
――高すぎる。
「やはり君か」
振り返ると、ヴィクトルが立っていた。
黒い粒子を手に取り、冷静に観察している。
顔には静かな緊張が漂っていた。
「魔獣汚染だ」
「人間にも起こるのか……」
「稀だがな。しかし、この症例は異常だ」
視線が、こちらに向く。
「真琴」
静かな声。
「君には何が見えている?」
一瞬、迷う。
だが――
「魔法のログ」
ヴィクトルの口元がわずかに歪んだ。
「やはりな」
そして告げる。
「この世界の魔法は、壊れている」
「君の力が必要だ」
冷たい風が吹いた。
――これが、呼ばれた理由。
魔獣汚染。
それが、人間にも広がる。
もしこれが事実なら――世界は、壊れ始めている。
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過去の記憶
「……なあ」
レオンハルトが呟く。
「俺たち、これ……昔見たことがある」
「それって――」
「話は後だ」
彼はフィオナの元へ戻る。
少女を失った少年に寄り添う彼女。
その背中は、小さく見えた。
私はもう一度、ログを見る。
《侵食率:78%》
――これは、ただの病気じゃない。
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第1話〜第三話 異世界ログシリーズ
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