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第6章 チームで成果を出す(協働力) 第3節 チーム内でのリーダーシップ

入社して半年が経った頃、健太は初めて「チームリーダー」を任されることになった。
といっても大規模なプロジェクトではなく、四人のメンバーで取り組む短期タスクだった。
しかし、彼にとっては大きな挑戦である。
「リーダー」と聞くと、人を引っ張って強い影響力を発揮するイメージが先行し、不安と緊張が入り混じっていた。

最初の打ち合わせで、健太は「自分が全部決めなくては」と肩に力を入れてしまった。
進め方や役割を一方的に説明し、意見を求める余裕もなかった。
会議後、同僚の一人が「うーん、ちょっとやりにくいかも」とつぶやくのを聞き、胸が痛んだ。
リーダーとしての初日から壁にぶつかったのだ。

その夜、健太は先輩に相談した。
先輩は「リーダーって、全部を背負い込む人じゃないよ。むしろ、みんなが力を出しやすい場を整えるのが役目なんだ」と言った。

さらに、「リーダーは“司令塔”というより“触媒”に近い。自分が光るんじゃなく、周囲を光らせる存在なんだよ」と続けた。
その言葉は健太の胸に深く刺さった。

翌日のミーティングで、健太は意識を切り替えた。
まず「今日はみんなの意見を聞きたい」と伝え、自分の案を一方的に押し付けるのをやめた。
すると、普段は口数の少ない後輩が具体的な改善提案を出してくれ、それがタスクの進行を一気にスムーズにした。
健太は「自分が前に立たなくても、チームは動く」という実感を得た瞬間だった。

数週間後、タスクは予定よりも早く完了した。
健太自身がすべてを引っ張ったわけではない。
むしろ、メンバーが自発的に動けるように雰囲気をつくったことで、成果が自然と積み重なったのだ。
最後に上司から「健太くん、いいリーダーだったね」と言われたとき、彼はようやくリーダーシップの本質に触れられたような気がした。

健太は学んだ。
リーダーシップとは肩書きやポジションに限定されるものではなく、日常のちょっとした言動にも宿るものだ。

誰かが困っていたら手を差し伸べる、意見を出しやすい空気をつくる、目立たない部分を支える。
そうした小さな積み重ねこそが、チームを前に進める推進力になるのだ。


リーダーシップと聞くと「カリスマ性を持って人を率いる人物像」を想像しがちですが、組織心理学やキャリア研究の知見はそれだけにとどまりません。

近年注目されているのは「分散型リーダーシップ」や「サーバントリーダーシップ」といった考え方です。

分散型リーダーシップとは、リーダーシップを特定の人物だけが担うのではなく、チーム全体で共有するものとする立場です。
研究によれば、役割や状況に応じて誰もがリーダーシップを発揮できる環境のほうが、成果や満足度が高まりやすいとされています。

つまり、新人であっても「自分には関係ない」と思うのではなく、場に応じたリーダー的行動を意識することが大切です。

また、グリーンリーフが提唱したサーバントリーダーシップ(『サーバントリーダーシップ』)は、まず他者に奉仕する姿勢を重視します。

メンバーの成長や幸福を支援することが、結果としてチームの成果につながるという考え方です。
この視点は、健太が体験した「触媒としてのリーダー像」と重なります。

心理学的にも、リーダーの姿勢がチームの心理的安全性に大きな影響を与えることが明らかになっています
エイミー・C・エドモンドソンの研究(『恐れのない組織』(邦訳2019年))では、心理的安全性の高いチームほどメンバーが意見を出しやすく、学習やイノベーションが促進されると示されています。
新人がリーダーシップを発揮するときも、「正解を出すこと」より「意見を引き出す場をつくること」に重きを置くことが有効です。

このように、リーダーシップの本質は「力強く引っ張ること」だけでなく、「他者を生かすこと」にあります。
新人であっても、日常の小さな場面でその役割を担うことができるのです。


📘 自身を振り返ってみよう

  • あなたはこれまでに「小さなリーダーシップ」を発揮した経験がありますか? 例えば会議の段取りや、同僚のサポートなど。

  • 「自分が主役になるリーダー」と「他者を活かすリーダー」、あなたがより自然にできるのはどちらでしょうか?

  • チームの成果を高めるために、今の立場でできるリーダーシップは何か、一つ考えてみましょう。


「チーム内でのリーダーシップ」

リーダーシップというと、強いカリスマ性で人を引っ張る姿を想像しがちですが、実際にはもっと身近で多様なかたちがあります。

新人であっても、日常の小さな場面でリーダーシップを発揮することは十分可能です。

たとえば会議で意見を整理する、同僚が困っているときにサポートする、雰囲気を和らげて発言を促す──これらも立派なリーダーシップです。

重要なのは「自分が前に出ること」ではなく、「周囲が力を発揮できる環境を整えること」です。

サーバントリーダーシップが示すように、他者を支え活かす姿勢が結果的にチーム全体の成果を押し上げます。
また、心理的安全性のある場をつくることが、メンバーの主体性や創造性を引き出します。
これはリーダーだけでなく、誰もが意識できる振る舞いです。

新人にとっては「自分がリーダーであるべきか」と構える必要はありません。
むしろ、場に応じて小さなリーダーシップを積み重ねることが、自信と信頼を築く第一歩になります。
リーダーシップは肩書きではなく行動によって示されるもの。
自分の立場や役割の中で「いま何ができるか」を問い続けることが、将来に向けて大きなリーダーシップを発揮する基盤になるのです。


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