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【幼馴染はじめました】 #毎週ショートショートnote

町役場に貼り紙が出た。

「幼馴染はじめました。初心者歓迎」

少子化対策もここまで来たか、と私はため息をついた。

申し込むと担当者に聞かれた。

「何歳からの思い出をご希望ですか?」

「え?」

「泥だんごコース、ランドセルコース、初恋未満コースが人気です。」

私は勢いで「ランドセルコース」を選んだ。

翌日、公園へ行くと、女性が待っていた。

「遅いよ、とし!」

開口一番、自然すぎる。

「昨日貸したゲーム返して。」

「昨日?」

「昨日。あなたの記憶にはまだないだけ。」

彼女は昔話を延々と始めた。

私が犬に追いかけられて泣いたこと。
運動会で転んだこと。
好きだった給食が揚げパンだったこと。

全部、覚えていない。

でも、なぜか懐かしい。

一週間もすると、不思議なことに私の頭にも「思い出」が増え始めた。

夏祭り。
秘密基地。
夕焼けの帰り道。

存在しなかったはずの記憶なのに、涙が出そうになる。

ある日、私は彼女に聞いた。

「これ、本当に作り物なの?」

彼女は少し笑って言った。

「半分はね。」

「半分?」

「私は本物。」

その瞬間、役場から電話がきた。

「申し訳ありません。手違いで本物の幼馴染を配送してしまいました。回収に伺います。」

彼女は私の腕をつかみ、小さく笑う。

「返却期限、過ぎちゃったね。」

私は電話に答えた。

「すみません。この幼馴染、もう中古なので返品できません。」

(556字)

たはらかにさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!


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