見出し画像

特許庁ガイドブック「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」にみる中小企業にも求められる情報開示の改善

【今日のポイント】
2025年6月に特許庁が公表した、ガイドブック「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」は、
2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂を受けて、数多くの事例や専門家との検討などを踏まえて、企業と投資家の対話の改善に関する具体的な提言やチェックリストをまとめています。
本ガイドブックは主に大手企業向けのものですが、中小企業のステークホルダーとのコミュニケーションの参考にもなるものと一読をお勧めする次第です。


1.「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~

2025/6/24に、特許庁はガイドブック「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」を公表しました。
『「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」について』

上記のリリースサイトでは、本ガイドブックを公表した背景と目的を、企業と投資家の間の知財・無形資産に関する視点のギャップが双方のコミュニケーションを阻害するボトルネックとなっていると分析し、
そのボトルネックを解消する支援として、本ガイドブックを公表したと記載しています。

また、本ガイドブックの内容は、以下のようにまとめられていますが、
投資家へのヒアリング結果企業側との座談会などを踏まえて、企業と投資家の建設的な対話の在り方や、
それを実現するために取り組むべき事項のチェックリストが掲載されています。

(引用は『』でくくります。改行は筆者挿入。以下同じ。)

『・知財・無形資産の開示について、企業と投資家が有する視点のギャップを明らかにし、あるべき両者の関係性とそれを実現するために求められる建設的な対話の在り方を取りまとめたガイドブックです。
・企業成長を実現するための知財・無形資産の開示に必要なマインドセットとその方法について、コンパクトに整理しています。
・知財・無形資産の開示に取り組む企業での現地調査から得られた示唆、先進企業の取組事例及び中長期的な視点を有する投資家ヒアリングの結果をまとめたコラム、知財・無形資産の開示に取り組む企業の経営層・部門長の課題感を取り上げた座談会レポートなど、盛りだくさんな内容となっています。
・企業が投資家との建設的な対話を進めるために取り組むべき項目を整理したチェックリストを掲載しています。』

特許庁:『「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」について』

本ガイドブックの構成は、以下のとおりです。

『目次
第1章 ステークホルダーとの建設的な対話に向けた知財・無形資産開示の意義
第2章 本書の策定に向けた調査研究の概要
第3章 企業成長の道筋を効果的に伝えるための取組事例
第4章 開示の改善を経て見えてきた投資家との建設的な対話を阻む要因
第5章 建設的な対話に有効な知財・無形資産開示のチェックリスト
参考資料
有識者委員会構成・謝辞』

特許庁:『企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~』

また、本ガイドブックには、サマリが掲載されていますが、
内容としては、

・コーポレートガバナンス・コードの諸原則を受動的に実施することでは不十分であり、経営戦略の社内での継続的なフィードバックによるブラッシュアップと、その後の、企業のパートナーとなり得る投資家との対話が必要。
・投資家との対話における企業側の説明で重要なものが、知財・無形資産であるが、その特定は容易ではない。
・経営戦略やビジネスモデルを支える知財・無形資産を特定するために、社内・社外で積極的な対話機会を設け、企業成長の道筋を何度も磨き上げることが効果的であり、かつ企業価値の向上にもつながる。
社内外との対話とフィードバックのサイクルを回す必要性その対話の中で重要な要素となる知財・無形資産の特定を行うことが、企業価値の向上につながる

と語っています。

上記の構成やサマリをみると、本ガイドブックは、本ブログトピックスの

『QA>中小企業は知的資産をどのように社外へのアピールに活用しているだろうか?』

で紹介した、『【試行版】知財・無形資産の開示項目・観点集~中小企業の「強み」を企業価値につなぐ~』
を、
特許庁が2024年度(令和6年度)に実施した10件の調査研究『令和6年度特許庁産業財産権制度問題調査研究』の、
『(9)ステークホルダーとの建設的な対話に資する知財経営の開示に関する調査研究」』
(全体版はこちら: 概要版はこちら:
を踏まえてブラッシュアップしたものと言っても良いかと思います。

また、本ガイドブックは、目次が大きな章単位のみであるため、
前述のサマリと、P13の『本書で押さえていただきたいポイント』に加えて、
上記の試行版のP12に記載されている「概要」の項目を併せて読むことで、全体像が掴みやすくなるものとお勧めいたします。

2.相手の求める情報は何か?

本ガイドブックは自身でもサマリの冒頭で述べているように、豊富な事例も掲載されており、かなりの分量なので、上記の全体を俯瞰したあとに、各章の冒頭に記載されている『本章の全体像』を読んでから、
関心のある部分を拾い読みするのでも良いかと思いますが、

私が特に印象に残ったのは、
第1章のコラム【投資家の声】に記載されている、投資家側が知財・無形資産の開示で何を求め、それをどの様に企業判断に利用しようとしているかという、
本ガイドブックの作成の動機(問題意識)でもある、「企業と投資家の、知財・無形資産に関する対話で重視する内容の食い違い(ギャップ)」に関わる記載と、

図表2(P15他)に記載の、『対話のスパイラルによる経営戦略の高度化』サイクルを継続的に回すことの必要性の部分です。

特許庁:「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」

上記より、投資家は、特許など産業財産権の出願件数や登録件数の推移などのデータだけでなくそれらの知財・無形資産をどのように企業が提供する価値と成長に活用するのかという、「価値創造ストーリー」の提示を求めていることが窺えます。

また、投資家は、知財・無形資産を、事業のポートフォリオ全体の中で他の経営資源とどの様に組み合わせていくのかという、事業戦略や全社戦略との関係にも関心を持っており、これらの情報を開示することが企業に求められている事を改めて感じます。

企業が伝えたい自社の戦略や知財・無形資産などの経営資源と、それらを企業価値に結びつける実効性の高いストーリーの開示を求める投資家の間のギャップを埋めるためにも、
投資家が求めている情報とその伝え方を、本ガイドブックの事例やコラムなども利用して検討することが必要となっていると言えるかと思います。


3.データに基づく想像力の重要性

上記の「投資家が知りたい情報とどの様に伝えて欲しいか」に加えて、
本ガイドブックでも何度か出てくる『開示資料に基づく投資家対話』社外とのコミュニケーションにおいて、重要な要素となります。

この、知財・無形資産の特定(可視化)その活用(価値創造ストーリーの策定と実施)は、知的資産経営の考え方とも共通しており、
大手企業の統合報告書などと同じく、中小企業においては、知的資産経営報告書や経営デザインシートなどのツールの利用も、今後、金融機関なども含めて社外のステークホルダーとの対話・コミュニケーションにおいて有効性を増すのではと期待を持ちました。

なお、投資家との対話における具体的な検討・実施項目やその事例は、第3章「 企業成長の道筋を効果的に伝えるための取組事例」第5章「建設的な対話に有効な知財・無形資産開示のチェックリスト」が参考になるものと、まずは一読をお勧めする次第です。


特許庁:『企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~』


【今日のまとめ】

・2025/6/24に、特許庁はガイドブック「企業成長の道筋~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~」を公表した
・本ガイドブックでも指摘されている「企業と投資家の間の伝えたい情報と知りたい情報および伝え方のギャップ」を認識することがまずは必要となる
・相手のニーズを知ったうえで、説得力のある情報開示のために、データなどの事実と想像力の双方を活用して、自社の知財・無形資産の可視化とその活用による価値創造ストーリーの提示が必要性を増していると改めて感じた次第です


最後までお読み頂き、有難うございます(*^^*)!
コメント、ご質問お待ちしております(^o^)!

#知財・無形資産 #投資家との対話 #企業成長の道筋 ~投資家との対話の質を高める知財・無形資産の開示~ #ビジネス #知的資産 #特許庁


見出し画像:Gerd AltmannによるPixabayからの画像

いいなと思ったら応援しよう!