僕が書いた本の話15 新旧ふたりの個性的な天才アスリート クラファン挑戦中
一部の人しか知らないかもしれない天才アスリート
週刊新潮に連載している《アスリート列伝 覚醒の時》では、誰もが知る有名レジェンドを中心に紹介している。けれど中には一部のファンだけが敬愛する〈知られざる伝説のアスリート〉もいる。
単行本第二弾、第二章の締めは、そんな個性的な存在。通常のスポーツ情報では取り上げられる機会の少ない新旧ふたりの天才がテーマだ。
ひとりは女子体操のケイトリン・オーハシ
深夜インターネットを検索していて偶然、彼女の演技をYouTubeで見た。その時の衝撃はいまも忘れない。体操・床運動の演技だが、それは体操を超えるダンス・パフォーマンス、いやダンスというにはアクロバチックすぎるから、やはり〈体操を超える体操〉と呼ぶよりほかにない……。
これまでの体操・床運動の概念を打ち破る独自の輝きに魅了された。その映像の舞台は、大学体操選手権。彼女の踊りに合わせて、マットの脇で応援する10人以上のチームメイト(UCLA)が歓声を上げ、一緒にポーズを決める。その楽し気な雰囲気も含めて、採点競技特有の重苦しい緊張感など、どこにも感じられなかった。
ケイトリン・オーハシはただ表情豊かなゴムまりのように溌溂と撥ね、踊り、鮮やかなアクロバットを次々に決めた。場内も一体になって歓喜した。採点の結果など見るまでもない。踊り終わった時点で場内全体が彼女に女王の栄冠を贈っていたも同然だった。そして結果は10点満点。
競技に挫折してたどり着いた自由な表現の境地
急いで調べて、彼女のそれまでの道のりを知った。
彼女は十代前半まではアメリカのナショナルチームのメンバーで、オリンピックでメダル獲得を期待された逸材だった。けれどその路線から降りた。そして、苦しんだ末に、徹底して自分らしく楽しむ体操の道を見つけた。
彼女の胸にオリンピックの金メダルはない。だが、僕が見たその映像はいまや再生回数2億4千万回を超えている。その数字が意味するところは、金メダルの価値を遥かに超えている、と言っていいのではないだろうか。
アロハ・シャツを全米の人気アイテムに押し上げたレジェンド
もうひとり、こちらは100年以上も前のレジェンド。デューク・カハナモクの名前は、伝説のサーファーとして僕の知識に刻まれていた。ハワイのワイキキビーチには、彼の銅像も建立されている。そのデュークが、オリンピックの水泳・自由型で3個の金メダルを獲った伝説のスイマーであることは、調べるまで知らなかった。さらに引退後は映画俳優として活躍する傍ら、サーフィンの普及やハワイの文化発展に貢献した。中でも「アロハ・シャツをハワイのローカル・アイテムから全米の人気ファッションに育てた立役者」とも呼ばれる存在でもあった。
そんな知る人ぞ知る伝説も、第二弾単行本には収録する予定だ。
