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【第522回】 Connections 2026 基調講演で発表された注目のイノベーション

本日、2026 年 6 月 4 日 午前 0 時(日本時間)より、アメリカ・シカゴで Salesforce の年次イベント Connections 2026 が開幕しました。

Marketing Cloud Next が初めて大きく打ち出されたのは、ちょうど 1 年前の Connections 2025 でした。それからの 1 年間で、Marketing Cloud Next は AgentforceData 360 と融合し、AI を中心とした次世代マーケティングプラットフォームへと大きく進化してきました。

今年の Connections では、その進化をさらに加速させる数多くの新機能や新たなビジョンが発表されています。

特に印象的だったのは、基調講演で繰り返し語られた 「Age of Marketing Makers」 というメッセージです。これは、マーケターだけがマーケティングを実行する時代から、人と AI エージェントが協力しながらマーケティングを創り上げる時代への変化 を表しているように感じました。


Age of Marketing Makers 時代の到来

Connections 2026 の基調講演では、「Age of Marketing Makers(マーケティングメーカーの時代)」というメッセージが何度も語られていました。

Salesforce が描く未来は、マーケターだけがマーケティングを実行する世界ではありません。人間と AI エージェントが協力しながらマーケティングを実行する世界です

その背景として Salesforce は、現在のマーケティングが抱える課題と、これから目指す方向性を以下のように示していました。

従来は、人間がデータを見て判断し、コンテンツを作成し、キャンペーンを実行していました。

しかし、顧客データの増加チャネルの多様化パーソナライゼーションへの期待の高まり に伴い、人間だけでは対応しきれなくなりつつあります。

そこで Salesforce は、

  • ① 人間がデータを活用する世界から、データが AI エージェントを動かす世界へ

  • ② 限られたパーソナライズから、AI による大規模パーソナライズへ

  • ③ 一方向の配信から、双方向の会話型マーケティングへ

  • ④ 人手による業務から、AI エージェントによる能力拡張へ

という変化が必要であると説明していました。

つまり、「人間だけがマーケティングを実行する世界」から
人間が AI エージェントを指揮し、AI エージェントと共にマーケティングを実行する世界」 への移行です。

そして、その実現のためのプラットフォームとして紹介されたのが Agentforce Marketing です。

このスライドの中心には、
Agents as Marketing Multipliers
(マーケターの能力を何倍にも拡張するエージェント)
というメッセージが大きく掲げられていました。

Salesforce は AI がマーケターを置き換えるとは考えていません。

むしろ、マーケター + AI エージェント
によって成果を最大化する世界を目指しています。

Agentforce Marketing は、

  • AI エージェントによる自律的なキャンペーン実行

  • Content Agent を中心としたコンテンツ制作プロセスの再構築

  • Email、SMS、RCS、Web を横断した会話型マーケティング

  • Data Cloud を基盤とする統合データ活用

  • 顧客単位での大規模パーソナライゼーション

  • AI エージェントの運用管理とガバナンス

といった要素で構成されています。

特に印象的だったのは、AI が単なるコンテンツ生成ツールではなく、セグメント作成やキャンペーン実行、分析、最適化まで担う存在として位置付けられていたことです。

また Salesforce は、Marketing Cloud、Data Cloud、Agentforce、Slack を個別の製品として提供するのではなく、「One Unified Platform(単一統合プラットフォーム)」として提供するビジョンも強調していました。


Agentforce Marketing のブランド再編

昨年の Connections 2025 では、Marketing Cloud Next が中心的なメッセージとして語られていました。しかし今年の Connections 2026 では、その上位概念として Agentforce Marketing が前面に打ち出されていたことが非常に印象的でした。

これまで Data Cloud を基盤とするマーケティング製品は、

  • Marketing Cloud Growth Edition

  • Marketing Cloud Advanced Edition

  • Marketing Cloud on Core

  • Marketing Cloud Next

など、さまざまな名称で呼ばれていました。

Salesforce は、この製品の正式名称を Marketing Cloud Next に統一することを打ち出しました。

従来の Marketing Cloud Next は、

  • Marketing Cloud Growth & Advanced Editions

  • Salesforce Personalization

  • Marketing Intelligence

  • Loyalty Management

などを包括するブランド名称として使用されていました。

しかし、今回の変更により、Marketing Cloud Next は Marketing Cloud Growth Edition および Marketing Cloud Advanced Edition の正式な製品名称 として位置付けられることになります。

一方で、これまで Marketing Cloud Next が担っていたブランドアンブレラの役割は、Agentforce Marketing が引き継ぐ形となりました。

整理すると、Salesforce の現在の製品体系は以下のようになります。

Agentforce Marketing(ブランド)

Marketing Cloud Next(製品)

Growth Edition / Advanced Edition(エディション)

なお、エディション名自体に変更はなく、以下の名称で提供されます。

  • Marketing Cloud Next Growth Edition

  • Marketing Cloud Next Advanced Edition

今回の基調講演で、「Marketing Cloud Next」という言葉がほとんど聞かれず、代わりに「Agentforce Marketing」という言葉が繰り返し使われていたのは、このブランド再編を象徴しているようにも感じました。

昨年の Connections 2025 が「Marketing Cloud Next の登場」を印象付けるイベントだったとすれば、今年の Connections 2026 はAgentforce Marketing の時代の始まりを示すイベントだった と言えますね。


それでは、Connections 2026 で発表されたイノベーションや、Salesforce が描くこれからのマーケティングの姿について紹介していきます。


Agentforce Coworker と Slackbot

今回の発表では、Agentforce Coworker と Slack 上で利用できる Agentforce(Slackbot) の両方が紹介されました。これらは、Connections 2026 より前に発表された機能になります。

両者は似た役割を持っていますが、利用する場所が異なります。

Agentforce Coworker(ベータ版)は Salesforce 内の検索バーから利用する AI アシスタントです。ユーザーは Salesforce を操作しながら、自然言語で質問したり、AI エージェントを呼び出したり、業務アクションを実行したりできます。

一方で、Slack 上の Agentforce(Slackbot)は、Slack から同様の機能を利用できる仕組みです。ユーザーは Salesforce を開かなくても、Slack 上で Agentforce に指示を出し、Salesforce のデータや機能を利用できます。

マーケティングでの活用で言えば、

  • キャンペーンのアイデアを考える

  • メールや SNS 投稿を作る

  • 競合や市場を調査する

  • 顧客の声を要約する

  • プロジェクト管理をする

  • キャンペーン結果を分析する

  • レポートを作る

  • デザインや A/B テストの案を出す

などを、Slack の会話画面から実行できます。

これらの分かりやすいイメージとしては、

  • Agentforce Coworker = Salesforce 内で利用する AI 同僚

  • Slack 上の Agentforce(Slackbot)= Slack 内で利用する AI 同僚

という違いです。

Salesforce は、エージェントを Salesforce の画面の中だけに閉じ込めるのではなく、ユーザーが普段働いている場所へ持ち込む ことを目指しています。

つまり今後は、Salesforce を開いていても、Slack を利用していても、同じ Agentforce の能力を活用できる世界が実現されようとしています。


マーケター向けの AI エージェント群

Salesforce は、マーケターがレポート確認・制作依頼・調整作業に追われるのではなく、AI エージェントと一緒にキャンペーン作成、リード創出、コンテンツ制作、最適化を進められる世界を目指しています。

Agentforce Coworker に加えて、主な発表内容は以下の通りです。

  • SDR Agent(Piper):Web サイト訪問者をリアルタイムで判定し、有望な見込み顧客を営業担当者へ引き継ぐ AI SDR

音声によるやり取りや多言語化対応ももちろん可能

以下のサイトで Piper に出会えます。

  • Agentforce Content Agent:メール、SMS、RCS、モバイルアプリなど、複数チャネル向けのコンテンツを自動生成

これまでのエージェントとは全く異なる UI からコンテンツの作成を依頼
AI が作成するまったく新しいコンテンツのキャンバス
  • Marketing Goals Agent:目標、予算、制約条件を入力するだけで、AI エージェントがキャンペーンの企画、実行、最適化までを支援

目標に向かってエージェントと切磋琢磨する
Slack 上にも登場

さらに、

  • Prospecting Agent(Hunter)

  • Campaign Previews

  • Agentic Segmentation

  • Agentic Search

  • Retail Triggers

  • Flash Sending

  • Conversational Analytics

  • Brand Center

  • Mobile App Personalization

  • Marketing Objects(AMPscript 対応)

  • Slack Collaboration in Campaign

  • Real-Time Offer Management

  • RCS & MMS

  • Tableau MCP

など、多数の新機能や機能強化も発表されました。

今回の Connections 2026 では、「AI エージェントがマーケターと協働しながらマーケティング業務を実行する世界」が、これまで以上に具体的な形で示されたと言えるでしょう。

また、Salesforce は Contentful の買収 も発表しており、今後はコンテンツを一元管理し、AI エージェントが各チャネル・各言語・各顧客向けに展開する構想です。


ヘッドレス化:マーケターが働く場所に AI を持ち込む

今回の発表で特に注目したいのが Headless 360 の考え方です。

従来は、キャンペーン作成やジャーニー管理を行うために Marketing Cloud の画面へアクセスする必要がありました。

しかし今後は、Agentforce Marketing の機能が MCP(Model Context Protocol)ツールとして公開 されることで、Slack など普段利用しているツールから直接利用できるようになります。

例えば Slack 上で、

  • オーディエンスセグメントの作成

  • キャンペーンの作成

  • ジャーニーの更新

  • パフォーマンス分析の問い合わせ

などを会話形式で実行できます。

これは単なる Slack 連携ではありません。

Salesforce が保有する顧客データ、ビジネスロジック、AI エージェントの能力を、Marketing Cloud の画面の外へ持ち出し、マーケターが普段働いている場所へ組み込むという発想です。

Salesforce はこれを Headless 360 と呼んでおり、「アプリケーションを開いて作業する」世界から「どこで仕事をしていても AI が支援してくれる世界への移行を目指しています。


主なツールの利用可能な時期

  • SDR Agent(Piper):一般提供中

  • Slack での MCP によるキャンペーン管理:2026 年 6 月 一般提供開始

  • Agentforce Content Agent:2026 年 6 月 パイロット版

  • Marketing Goals Agent:2026 年 6 月 パイロット版


いかがでしたでしょうか。

今回発表された内容を一言で表現するなら、Marketing Cloud Next / Agentforce Marketing は、従来の「人がキャンペーンを作るツール」から、

「AI エージェントがマーケターの指示を受けて、コンテンツを作り、顧客を見つけ、キャンペーンを実行し、継続的に改善するプラットフォーム」

へと進化しようとしている、と言えるでしょう。

さらに Headless 360 の考え方により、その AI は Marketing Cloud の画面の中だけに留まらず、Slack をはじめとするマーケターの日常業務の中へ直接組み込まれていきます。

今回の基調講演では、Salesforce の担当者たちは非常に楽しそうに未来像を語っていました。しかし、Agentforce Content Agent や Marketing Goals Agent のデモが始まると、会場からは戸惑いとも取れる空気が感じられたのも事実です。

それも無理はありません。AI がコンテンツを作り、顧客を見つけ、キャンペーンを実行し、さらには自律的に最適化していく世界は、これまでのマーケティングの常識を大きく変える可能性を秘めています。

正直なところ、「これまでの手法はまったく通用しなくなるのか」「ここまで進化した世界に本当に着いていけるのだろうかなど感じた方も少なくなかったのではないでしょうか。私自身も、その凄まじい進化のスピードに驚かされました。

とはいえ、いきなり未来の姿を追いかける必要はありません。

まずは Data 360、Agentforce、Marketing Cloud Next の基本機能を一つずつ理解し、実際に触ってみることが大切です。その積み重ねが、これからの AI エージェント時代を迎えるための最も確実な準備になるはずです。

今回は以上です。


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