Archive 010|午前2時半の商店街
午前2時半。
商店街のシャッターは、
一枚残らず閉まっていた。
昼間なら、
人の声や自転車の音で
少し騒がしい場所なのに。
今夜は、
街灯の音まで聞こえそうだった。
少女は、ゆっくり歩いていた。
隣には、いつもの小さなウサギ。
ふたりが古いベンチの前を通り過ぎたとき、
少女が足を止めた。
白いハンカチが、一枚。
ベンチの上に置かれている。
「忘れ物かな。」
少女が手を伸ばしかける。
そのとき、ウサギが動かなかった。
少女が見ると、
ハンカチの端に
小さなコインが置かれていた。
風が吹いても飛ばないように。
誰かが、そうしたのかもしれない。
少女は、しばらくそれを眺めた。
拾わなかった。
持ち主が戻ってくるかもしれないから。
ふたりは、そのまま歩き出した。
しばらくして少女が振り返る。
ベンチは、もう街灯の外に消えていた。
「……明日も、ここにあるかな。」
ウサギは答えなかった。
ただ、少しだけ空を見上げた。
月が出ていた。
その夜は、それだけだった。
それでよかった。
Collect the Quiet Nights.

