打合せで言えるといい、性格の悪い一言を8つ
仕事をしていると、色々な部署をまたいで判断する場面がある。営業は売上を守りたい。生産はラインを守りたい。物流は現場を守りたい。商品はブランドを守りたい。品質は品質を守りたい。
どれも正しい。どれも正しいからこそ、会議は散らかる。正しさ同士がぶつかると、誰も間違っていないのに話が進まない。そういうとき、SCMとして言えるといいなと思う言葉がある。少し性格の悪い一言(SCМ以外のお仕事でも使えるのがあるのかなと思います)。
①「前提が変わってきたかもしれません」
これは誰かを否定する言葉ではない。でも、今まで積み上げてきた話を一度止める力がある。需要、生産能力、納期、在庫水準、得意先の温度感。SCMの現場では、前提なんてわりとすぐ変わる。議論が噛み合わなくなったときは、結論を急ぐ前に前提を疑った方がいい。
②「一旦、散らかしませんか? 散らかしてから整理しましょう」
会議でいきなり整理しようとすると、都合の悪い情報が落ちる。まず材料を出さないと、何を整理すればいいかも分からない。散らかった報告は嫌われる。でも、散らかす工程を飛ばした会議はもっと危ない。
③「この数字、少し強く見えていませんか?」
「逆にここは弱く見過ぎていませんか?」
前年比120%は強そうに見える。でも前年が弱すぎただけかもしれない。在庫日数30日は安心に見える。でも偏在していたら使えない在庫かもしれない。数字は嘘をつかない。ただし、数字の見せ方は人を誘導する。だから数字そのものより、数字の顔つきを見る。
④「それって今決める必要ありますか?」
これは一番性格が悪いかも。せっかく真面目に話しているところに水を差す感じがある。でも大事だ。今決めないと間に合わないこと、仮置きでいいこと、来週まで待てること、そもそも決めなくていいこと。これを分けないと、会議は全部が緊急案件になる。
⑤「いったん、何を守るか決めませんか?」
SCMの判断は、だいたい何かを守るために何かを諦める仕事だと思っている。売上、利益、得意先、工場の安定稼働、物流現場、ブランド、将来の在庫リスク。全部守れれば最高だ。でも全部守れるなら、たぶん会議になっていない。だから、まず何を守るか決める。それが決まると、判断は少し静かになる。
⑥「皆さんそれぞれ、どの時間軸で話していますか?」
営業は今週の納品を見ている。生産は来月のラインと要員を見ている。需給は月末在庫を見ている。財務は四半期を見ている。マーケや商品企画は半年後のブランドを見ている。全員正しい。でも時間軸が違う。意見が割れているように見えて、実は時間軸が違うだけのこともある。
⑦「その要因で説明し切れますか?」
天候です。販促です。競合です。工場トラブルです。需要予測のズレです。分かりやすい原因が一つ出ると、会議は少し安心する。でも本当にそれだけか。その要因で全部の動きが説明できるのか。原因を一つにまとめると報告はきれいになる。でも現実はだいたいそんなにきれいではない。
⑧「このまま進めた場合の一番悪いケースを見ておきませんか?」
ポジティブに進めたい場では嫌な一言だ。でもSCMでは絶対に必要だ。このまま売れたらどこで欠品するのか。このまま売れなかったらどこに在庫が残るのか。このまま作ったら何が詰まるのか。このまま作らなかったら誰に迷惑がかかるのか。最悪ケースを見るのは、悲観するためではない。先に見ておくためだ。見えているリスクは、まだ扱える。見えていないリスクは、だいたい後から人を殴ってくる。
結局は、
SCMの会議で必要なのは、声の大きさでも、論破する力でもない。前提を疑い、数字の顔つきを見て、時間軸を揃え、何を守るか決め、最悪ケースを見ておくこと。そのための一言は、少し性格が悪いくらいでちょうどいい。性格が悪い一言は、人を傷つけるためではない。会議を前に進めるために使う。
正しさがぶつかって話が散らかったときに、
「で、結局どう判断するんでしたっけ?」
と、静かに場を戻すための道具である。SCMの仕事は、きれいな正解を出す仕事ではないとおもってる。
たぶんSCMでは、いい人ほどこういうことに疲弊して、性格の悪い奴が生き延びてしまう(すごくいい人も多いですよ!!)。
なお、仕事でリスクばかり考え、悪い可能性を口にしている反動で、プライベートでは推しの良いところばかり考えています。
