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人生は、途中では採点できない

駅のホームで見かけた横顔

画面の光に照らされて

駅のホームで、若い人がスマートフォンを見つめていました。

画面には、短い動画が次々に流れていました。

笑っている人。

海外で働く人。

起業した人。

結婚した人。

指先ひとつで、誰かの人生のハイライトが流れていきます。

その人は、何度か画面を止めました。

そして、少しだけ目を伏せました。

もしかしたら、その瞬間、自分の人生にも点数をつけていたのかもしれません。

私はその横顔を見ながら、昔の自分を思い出していました。

あの頃の私は、会社の廊下で聞こえてくる会話や、年賀状に書かれた近況に、何度も心を揺らしていました。

同期が昇進した。

友人が結婚した。

たったそれだけのことなのに、自分だけが置いていかれたように感じていました。

今は、もっと速い。

知りたいことは、すぐに答えが返ってきます。

でも、胸の奥だけは、いつまでも既読にならない。

そんな夜が、誰にでもあるような気がします。

私は、自分の人生を失敗したと思っていました

若い頃の私は、とにかく急いでいました。

早く一人前になりたい。

早く認められたい。

朝、会社へ向かう電車の窓に、自分の顔が映ることがありました。

疲れているのに、まだ何者でもない顔。

その顔を見るのが、少し苦手でした。

ある時期、私は本気で思っていました。

「自分は人生を間違えた」

だから転職もしました。

環境を変えれば、何かが変わる気がしていました。

でも、急に景色が明るくなったわけではありません。

また迷いました。

また、自分を責めました。

正直に言えば、あの頃の私は、「遠回りをした」とさえ言えませんでした。

遠回りという言葉には、あとで意味が見つかる人の余裕があります。

あの頃の私には、その余裕はありませんでした。

ただ、失敗した。

そう見えていました。

けれど何年も経って振り返ると、あの頃の悔しさは、誰かの痛みに気づくための感覚になっていました。

失敗にしか見えなかった道が、振り返れば、自分だけの道になっていました。

あの夜の私は、負けていなかった

ある夜、友人の結婚と昇進の報告が同じ週に重なりました。

「おめでとう」

そう返しました。

ちゃんと笑ったつもりでした。

でも、家に帰ってから、ベッドに座ったまま動けなくなりました。

悔しかった。

情けなかった。

誰も私を責めていないのに、世界中から責められているような気がしました。

今なら、その夜の自分に少しだけ近づけます。

あの夜の私は、負けていたわけではありません。

冷たい人間だったわけでもありません。

ただ、自分の人生を途中で採点していただけでした。

まだ物語は続いているのに。

まだ登場していない景色があるのに。

その途中で、自分に「失敗」という点数をつけてしまっていました。

人生は、歩いている途中には全体の形が見えません。

振り返ったとき、初めて曲がっていた理由が少しだけ分かることがあります。

急がなくていい問いがあります

若い頃の私は、答えばかり探していました。

肩書きが変われば安心できると思っていました。

給料が増えれば、自信が持てると思っていました。

会社の名前や住む場所も、自分の価値を決めるものだと思っていました。

でも、不思議なくらい、その安心は長続きしませんでした。

何かを手に入れても、また次の不安が現れます。

人生には、急いで答えを出さないほうがいい問いがあります。

「私は何を大切にしたいのか」

「どんな人でありたいのか」

同じ問いでも、歳を重ねるたびに返ってくる声は変わります。

前の答えが間違っていたからではありません。

人が変わるからです。

すぐに答えが出ない問いほど、その人の奥行きを育ててくれる。

そんなふうに思います。

まだ名前のない問いを抱えているあなたへ

もし今、

「自分は遅れている」

「もう取り返せない」

そう感じているなら、その結論だけは、まだ先に置いておいてほしいのです。

私にも、そういう時期がありました。

朝が来るのが嫌だった日。

誰かの報告を素直に喜べなかった日。

その場所にいると、先の景色は見えません。

でも、時間が経ってから意味が変わる出来事があります。

無駄だと思っていた時間が、あとで誰かの言葉を受け止める力になることがあります。

今日抱えている問いが、答えのような形になるまでに、10年かかることもあります。

その10年は、ただ待つ時間ではありません。

景色が変わるのではなく、自分の見え方が少しずつ変わっていく時間です。

あの頃の私は、人生を急いで採点していました。

今は分かります。

人生は、途中では採点できません。

だから今日の点数だけで、自分を決めなくていい。

あなたの胸に、まだ名前のついていない問いはありますか。


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二毛猫 虹をありがとうございます。