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上勝町の進化と運動 #5|晩茶——発酵がつなぐ地域の記憶

日々起こることを日記に残しながら、頭の中を整理させてもらってます。

ノマドシェフはどんなことをしているのか?
どんな人に会ったのか?など、
感性の赴くままにペラペラと書かせてもらってます。

最近はノマドシェフで訪れた場所にテーマも持って書かせて頂こうと思います。


この連載では、四国・上勝町での体験を通じて「進化と運動(世界を変える活動)」を考える。
第5回は、上勝町に根付く発酵文化「晩茶」と、長野県木曽町の発酵文化「すんき漬け」の共通点を交えながら掘り下げる。


百野さんに聞いた、晩茶の物語


晩茶は後(こう)発酵茶といい、普通のお茶とは違います。まず、茶葉を茹でて、それから発酵させるんです


そんな百野(ひゃくの)さんの言葉から始まり僕は引き込まれた。

発酵させるお茶?それは、今までに聞いたことのない製法だった。

百野さんによると、晩茶は7月から8月の暑い時期に作られる。普通のお茶は新芽を摘んで作るのに対し、晩茶成熟した葉を使う。さらに、発酵を促すために茶葉を「茹でる」。


乳酸菌による自然発酵が進み、酸味のある独特の味わいになる。
まさに、乳酸発酵の食品と同じ発酵プロセスを経ているのだ。

晩茶は、プーアール茶と同じく「後発酵茶」に分類される。
茶葉を発酵させることで独特の風味が生まれるこの製法は、富山県のバタバタ茶や、四国のほかの発酵茶とも共通するものがある。

百野さんと晩茶。
阿波晩茶

晩茶とすんき漬け——発酵がつなぐ二つの地域


晩茶を作る工程を聞きながら、僕は木曽町の「すんき漬け」を思い出した。

すんき漬けも、晩茶と同じく「塩を使わない乳酸発酵食品」だ。
木曽地域の寒冷な気候では、塩が貴重だったため、塩を使わずに発酵させる技術が発展した。

▶ 共通点
茹でる工程がある
すんきはカブ菜を、晩茶は茶葉を茹でる
乳酸菌発酵による酸味
どちらも発酵の過程で独特の酸味が生まれる
【家ごとに味が異なる】
それぞれの家庭の微生物や環境が影響する

すんきと晩茶って、遠く離れた場所にあるけど、考え方は似ている

そう呟いた僕の言葉に、百野さんは驚いた。

そうですね。すんき聞いたことない。他にも同じようなものがあるんですね。

すんき漬けの原料であるカブ菜は、かつては冬に食べる葉物として使われていたが、保存のために発酵させる技術が発展した。
晩茶もまた、新芽ではなく成熟した葉を使い、「その土地にあるものを活かす」という発想から生まれた。

無駄にしない文化

日本人である僕らの誇るべき特徴だと思う。


発酵文化は、それぞれの土地の気候や暮らしに根ざしたものだ。
でも、その根本には、「限られた資源をどうやって有効に使うか」という共通の考え方があるのかもしれない。


ノマドシェフをやっていて気がついた日本の底知れぬ食文化に感動した。

日本全国に行くから見えてくるものがある。
何か手応えを感じる訪問となった。

乳酸菌を感じる晩茶。
木曽町のすんき。

晩茶の製造工程——発酵が生み出す「家の味」



晩茶の製造工程にはそれぞれの家のやり方がある。

▶ 1. 茶摘み
7月から8月の暑い時期、成熟した茶葉を手摘みする。
晩茶は自生している茶の木から収穫することが多く、自然の力を活かして作られる。

▶ 2. 茹でる
大きな釜で3分ほど茶葉を煮る。
普通のお茶は蒸すが、晩茶は茹でることで発酵に適した環境を作る。
この時の茹で汁は、発酵の際に加えられ、発酵を促す役割を果たす。

▶ 3. 揉み込む(じゅうねん)
茹でた茶葉を広げ、専用の機械や臼で揉み込む。
発酵を促すための重要な工程。

▶ 4. 発酵
桶に入れ、しっかりと踏み込んで空気を抜き、漬物石を乗せる。
この工程は嫌気発酵(空気を遮断する発酵)を促すために欠かせない。
さらに、上から芭蕉の葉やシュロの葉を敷き、雑菌の繁殖を防ぎながら、微生物の活動をサポートする家庭もある。

▶ 5. 天日干し
数週間の発酵を終えた後、天日干しにして仕上げる。
この干し加減が、家ごとの風味の違いを生むポイントのひとつでもある。
絶対に雨に濡れてはいけないので、ここがすごく大変な作業。


これらの工程を家庭ごとにやり方があり、それぞれの味わいを生んでいる。
本当に面白い文化だ。

漬物....

これこそ家庭の味が出るもっともローカルな食べ物なのかも知れない。


昔ながらの揉み込む機械。

ノマドシェフの視点——「飲む漬物」としての晩茶


晩茶を改めて飲んだとき、僕は「飲む漬物」だと感じた。

発酵茶」というカテゴリーの中でも、ここまで乳酸菌発酵の特徴が際立っているお茶は珍しい。

すんき漬けの発酵とも似た点が多く、どちらも「塩を使わない」という特徴を持つ。
そして、どちらも地域の知恵として生まれた食文化だった。

発酵食品は手間がかかる。
しかも、晩茶のように家庭ごとに違う伝統を守るとなると、継承は簡単ではない。
ずっと守り続け、23代にもわたり代々やっている家庭もある。(本業ではなく)

でも、この晩茶のような文化こそ、地域に根付いた食の記憶として残していきたい。
発酵の力を借りた料理や、新しい食体験としての晩茶の可能性を、もっと探っていきたいと思った。


たくさんの家庭の晩茶たち。

上勝町が教えてくれたこと——進化し続ける田舎の姿


この旅を通じて、上勝町には「進化」と「運動」の両方があることを実感した。

進化とは、新しい仕組みを取り入れ、変化を受け入れること。
彩のビジネスモデルやゼロウェイストの取り組み、クラフトビールの挑戦など、町全体が「未来へ向かう動き」を続けていた。

一方で、運動とは、「伝統」や「文化」を守り、受け継いでいくこと。
晩茶や発酵文化は、ただ残すだけではなく、新しい視点で発展させることで生き続ける可能性がある。

田舎だからこそできること、田舎にしかできないこと——そのヒントが上勝町には詰まっていた。


ノマドシェフとして、これから考えたいこと


この旅で出会った人々、風景、食文化のすべてが、僕の中でつながっている。
特に、「循環」というキーワードが強く心に残った。

食材が育ち、使われ、また新たな形で循環する仕組み
地域の文化が継承され、新しい形で未来へつながる仕組み
人と人が出会い、何かを生み出す場としての田舎の可能性

この旅で感じたことを、料理を通じてどう表現できるか——それが、僕の次のテーマになる気がしている。

上勝町で得た気づきを胸に、また新たな土地へと旅を続けていきたい。




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#循環


読んでいただきありがとうございます!

感想や質問があればコメントお待ちしております。



丘の上のオーベルジュ ハートンツリー


ノマドシェフ服部大地
@hattori.daichi
ノマドシェフとは世界中をフィールドとして、
食材や生産者に向き合い、インスピレーションのままに料理する料理人。(だと思います笑)



〒085-1200
北海道阿寒郡鶴居村字雪裡496-4

電話 0154-64-2542

  営業時間 
 ランチ   11:00~14:00(ラストオーダー)
 ディナー  17:00~(要予約)   
       木曜定休

  HP
 http://heartntree.jimdo.com 

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