生成AIと文学の新たな地平 ― AIが「私」を代弁する実験的プレゼンテーション
AIに「私」を語らせてみた
「生成AIと文学:創作・教育・批評の未来 by Genspark & Canva」というプレゼンテーション動画を公開しました。しかし、これは通常の講義動画ではありません。GensparkのスライドAIに “私” に関するデータを与え、AIが「都留文科大学文学部教授の野中潤」として語るという実験的な試みです。
つまり、この動画の「野中潤によるプレゼンテーション」とは、実は私自身ではなく、AIが私になりきって生成したコンテンツです。
「生成AIと文学」について、高校生の出前授業をすることになったので、移動中の新幹線の中で作り上げ、教室で制作プロセスを披露しました。
文学界に起きている静かな革命
ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の登場により、文学の世界は大きな転換期を迎えています。創作、教育、批評――文学を構成するあらゆる領域で、AIがもたらす変化の波が押し寄せています。
今回のプレゼンテーションでは、この革命的な変化を多角的に掘り下げました。たとえば、芥川賞を受賞した『東京都同情塔』の事例が取り上げられています。この作品は、人間とAIの協働創作の最前線を示す象徴的な存在として議論を巻き起こしました。
教育現場での革新的な活用
また、学校教育におけるAIの活用法も取り上げられています。小学校から高等学校まで、各段階での具体的な実践事例を紹介しながら、AI時代における「自分軸」の重要性に関する考察がなされています。
「自分軸」という言葉は、私自身は使った記憶がないので、AIがどうしてこの言葉を使ったのか、ちょっと不思議です。
ともあれ、実践事例からうかがえるのは、AIは単に文章を生成するツールではないということです。
AIは、子どもたちの創造性を刺激し、文学へのハードルを下げる「拡張」のツールとして機能します。
誰もが文学に触れ、創作に挑戦できる未来――それがAIがもたらす新たな可能性なのです。
実験の全貌:AIによるAI時代の講義
この動画制作は、以下のような実験的プロセスで作成されています:
スライド作成:GensparkのスライドAIが私の考えを自動生成し、それをCanvaで編集
ナレーション生成:Canvaで読み原稿を自動生成し、AI音声生成機能で音源化
動画公開:MP4ファイルでダウンロードしたものをYouTubeにて公開
あえて残した「不完全さ」
お断りしておかなくてはならないのは、新幹線の車内で作業をしたこともあり、不完全であることです。AI音声の読み間違いや不自然なイントネーション、さらには私が削除し忘れた「ト書き」(「ここで間を置いてください」など)がそのまま収録されています。
これは2025年9月19日現在のAI生成技術の実力を、ありのままに示すための実験的な試みです。
扱った主要トピック
動画では以下のような幅広いテーマを扱いました:
技術と創作の融合
生成AI技術の進化と文学界への影響
国内外における生成AI文学の現状と事例
芥川賞受賞作に見るAI活用の最前線
教育への応用
国語教育における生成AIの活用法
小・中・高等学校での具体的な実践事例
AI時代に求められる「自分軸」の確立
新たな可能性と課題
AIによる文学批評とテキスト分析の可能性
著作権や倫理的課題への対応
人間とAIの創作性の比較と今後の展望
私の考え:AIは文学を拡張する
「AIは文学を終わらせるのではなく、新たな可能性を『拡張』するツール」――これが “私” の基本的な立場です。確かに、著作権や倫理といった新たな課題も生まれています。しかし、それ以上に、AIは文学の民主化を促進し、創作の門戸を広げる可能性を秘めているのです。
今回の実験的な動画制作自体が、その証明となっています。AIが私の考えを代弁し、私の声を模倣し、私のプレゼンテーションを構築する――この循環的な構造こそが、AI時代の新たな表現形式の一つなのかもしれません。
おわりに:実験は続く
このプレゼンテーション動画は、単に知識を伝えるだけでなく、「AI時代の文学と教育がどこへ向かうのか」を、形式と内容の両面から問いかける試みです。
AIが「都留文科大学文学部教授の野中潤」を演じ、私の考えを語る。この入れ子構造の中に、AI時代の創作と教育の本質が隠されているのではないでしょうか。
実験的なコンテンツとして、現在進行形で変化し続けるAIと文学の関係性を、リアルタイムで体感していただければ幸いです。文学の未来は、AIによって閉ざされるのではなく、むしろ新たな地平へと開かれつつあります。
