夜店から君へ
夜店からソースの良い香りがして、君が嬉しそうに足を止める。
「焼きそば食べたい!」
少し悩んで、焼きそばを1パック購入した。
「私、焼きそば大好き!」
焼きそばを夢中でほおばる姿が、リスみたいでおかしくて。頬にソースをつけていることにも気付いてないのが可愛い。
思わず笑ったら、背中を軽く叩かれた。
りんご飴のキラキラ輝く赤色に、君はまた足を止める。
「りんご飴食べたい!」
これも悩んだけれど、1つ購入した。
「半分食べる?」
甘いものが苦手な僕は、丁重にお断りをする。
「美味しいのに」
そう言いながら、自分の分が減らなくてホッとしてるだろう。
「甘いもの食べたら、しょっぱいものが食べたくなるね」
たこ焼きの屋台を指差す君。
その小さい体で、まだ食べるのかと驚いた。
また悩んだけれど、たこ焼きを1パック買った。
「やっぱりお祭りに来たら、綿飴は食べたいよね!」
さすがに食べすぎではないかと思う。
僕の気持ちを察したのか、君はニッコリ笑った。
「甘いものは別腹だから」
僕は苦笑した。
その “別腹” に何度付き合わされたことだろう。
綿飴の屋台へ向かう途中、見覚えのある顔が手を振った。
「久しぶりだな。会うのは1年半ぶりか?」
「そうだな。今更だが、妻の葬儀に来てくれてありがとう」
「…元気そうでよかったよ」
「ぼちぼちかな。でも、ちょうど良かった。これ、もらってくれないか?」
僕は手にしていた食べ物を友人へ差し出した。
「いいのか?誰かと来てるんじゃないのか?」
僕は人混みの中に目を向ける。
綿飴の袋を抱えて、嬉しそうに笑う君が見えた気がした。
「いや」
僕は静かに首を振った。
「今年は妻の思い出と来てるんだ」
「夜店から」からはじめるnote企画に
参加させていただきました☕️
(企画ページはこちら)
いいなと思ったら応援しよう!
「いいな」と思ってもらえたら。
あなたの応援が次の物語につながります。