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長新太について読んでいく⑱-4 特集 長新太大研究 『飛ぶ教室』34 楡出版 1990年

長新太さんのインタビューや対談、特集記事など、長新太さんについて書かれたものを読んでいます。
第18回目は、『飛ぶ教室』34(楡出版・1990年)の特集・長新太大研究。前回の続きです。今回は、哲学者・鶴見俊輔さん(1922~2015年)と心理学者・河合隼雄さん(1928~2007年)の対談「長新太の作品を論ず」を読んでいきます。

もくじ
一人三人集 漫画 座談会 エッセイ『青春時代』 長新太
インタビュー 正体不明のフー・アー・ユー 長新太×宇野亜喜良・和田誠
対談 質の時代をつくる 太田大八×永田力
対談 長新太の作品を論ず 鶴見俊輔×河合隼雄
漫画 人間物語⑯ 春の日の飛行船の巻 長新太
ナンセンスの品性 佐野洋子
長新太についてのこま切れ未解決ノート 土井章史
長新太の絵 赤羽末吉
『なんだったかな』 いぬい・たかし
長新太の〈おしゃべり〉 寺村輝夫
長新太の絵本は日本を駄目にする まじめに働く人々の証言集 (採集者)田島征三
初めてチョーさーんになった人 桃井かおり
長山(ちょうさん)とマタギ 村上康成
長新太になりたかった…… 矢吹申彦
長さんの超絵本 山下明生
長さんの頭は洗濯機 杉浦範茂

『飛ぶ教室』34(楡出版・1990年)

対談 長新太の作品を論ず 鶴見俊輔×河合隼雄

   長さんは超近代です
鶴見
 私はね、長さんにマッチのラベルを二つ描いていただいたことがあるんですよ。
河合 それはまたどういう経緯からですか。
鶴見 岩国のアメリカ軍基地の傍らでね、コーヒー店をやってたことがあるんです。反戦喫茶ですね。今江祥智氏が応援してくれててね、長さんに頼んでくれたんですよ。
河合 はあ、はあ、そういうわけでしたか。
鶴見 二つ絵を描いてくれましてね、一つは「ほびっと」、というのはトールキンからきていますから小人でしょう。子どもの小人の半身像なんです。もう一つは、その小さい小人が大鷲になって空を翔ける絵なんです。二つのマッチが組合せになって反戦喫茶に置いてあるわけですよ。戦争が嫌だなと思った、アメリカの兵隊が遊びにきて、そのマッチをひょいと見るわけです。非常によくしていただいたんで記憶に残ってるんですが、長さんの漫画は、反戦運動の正義感で硬直しやすいところを和らげる力があるんですね。
河合 はい。よくわかります。
鶴見 近代に入ると、風刺漫画は大体、相手ばっかりを攻撃するんですよ。自分が硬直してるところがある。自分が隠れるわけ。近代以前はそうじゃなかったらしいんです。ルネッサンス中世は。とバフチーンはいってます。多分、そうなんでしょう。ところが、近代に入ってからはまずいんですよ。これ一種の近代の病なんですね。
河合 そうですね。
鶴見 ところが、長さんのは自分を笑うんですよ。だから、正義感一本になってる自分を笑われてる感じがあるんですね。その意味で近代の漫画家としては珍しいですよ。
河合 もう超近代ですね。
鶴見 ね。ルネッサンス中世に似てて、ちょっとはみ出てるところがあるんですね。自分を笑うという感じがいつでもありますよね。名探偵ネギヤセタロウにしたってね、正義の人らしいんだけども、やっぱり笑われてますよね。そこんところですね。さっき、対談に入る前に、長さんの絵本は、大人はわからないけれど、二歳、三歳の子どもだとわかるとおっしゃってたけど、二歳、三歳の子どものときから自分を笑うことを学べば、一生の宝じゃないですか。自分を笑えない人は迷惑ですし、また自分迷惑でもあるんですね。重大な問題だと思いますよ。
 後略

『飛ぶ教室』34(楡出版・1990年)
特集・長新太大研究

長さんが絵を描かれた反戦喫茶「ほびっと」(1972~1975年)のマッチの写真が、初代店長中川六平さんの著書『ほびっと 戦争をとめた喫茶店』(講談社・2009年)の表紙にあります。

『ほびっと 戦争をとめた喫茶店』ベ平連1970-1975 in イワクニ
著・中川六平(講談社・2009年)

鶴見俊輔さんの「自分を笑う」というおことばが心に残りますね。自分を笑えるということは、自分を客観視できているということかな。また、自分をゆるし、愛することにもつながっていくようにも思えます。
鶴見さんは、自分を笑えない人は自分迷惑でもあると。自分で自分を苦しめてしまうということでしょうか。
自分を笑えるって素晴らしいことですね。
長さんの作品には、そういう感じがいつでもあると……。

『飛ぶ教室』34(楡出版・1990年)の特集・長新太大研究は、濃密な内容のため今回も途中でおしまいです。
続きは、近いうちにご紹介させていただきます。



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