服・バッグ・柄の海外意匠出願が変わる――ロカルノ分類第16版で確認すべき実務


結論から言えば、2027年1月1日以降に出願日を持つハーグ国際意匠出願には、ロカルノ分類第16版が適用されます。

一方、2027年1月1日より前の出願日に基づく国際登録は、第16版へ自動的に再分類されません。

したがって、ファッションブランドが2026年中に行うべき対応は、商品分類番号を一括で新しい番号へ置き換えることではありません。

商品分類マスタに、少なくとも次の3項目を追加することです。

  • ロカルノ分類のクラス・サブクラス

  • 適用した版

  • 国際出願の出願日

さらに、先行意匠検索では、旧版と第16版の分類、商品名、権利者名、画像検索を組み合わせる必要があります。

分類が改訂されても、意匠権の保護範囲が一律に拡大・縮小するわけではありません。しかし、出願のまとめ方、商品表示、検索結果、過去登録との対応関係には、実務上無視できない影響があります。

本記事では、2026年7月24日時点で確認できる特許庁とWIPOの公式情報に基づき、衣服、バッグ、ジュエリー、テキスタイル、表面模様を扱う企業が準備すべき事項を整理します。


特許庁がロカルノ分類第16版の発効に関する参考訳を掲載

2026年7月23日、特許庁は「ロカルノ分類第16版の発効(参考訳)」を新着情報として掲載しました。

ここで注意したいのは、特許庁が掲載したものは、ロカルノ分類第16版の全商品リストを日本語化した資料ではなく、第16版の発効と移行時の取扱いを示すWIPO情報通知第4/2026号の参考訳だという点です。

基礎となるWIPOの情報通知は、2026年7月10日付です。第16版の英語・フランス語による分類本体は、WIPOのLOCPUBで公開されています。

第16版には、第15版に対する商品表示の追加、名称変更、クラス間の移管、クラス・サブクラスの説明変更が含まれます。

出典:特許庁「ロカルノ分類第16版の発効(参考訳)」・2026年7月23日掲載WIPO情報通知第4/2026号・2026年7月10日

ロカルノ分類は何を決める仕組みなのか

ロカルノ分類は、意匠を使用する商品を国際的なクラスとサブクラスへ整理する仕組みです。

分類は、主に次の目的で使用されます。

  • 意匠出願と国際登録の整理

  • 登録公報への分類番号の表示

  • 先行意匠の検索

  • 意匠情報の統計・データ管理

  • 複数意匠を一つの国際出願へまとめられるかの確認

第16版は、32のクラスで構成されています。

ただし、分類番号は商標の指定商品・役務区分と同じものではありません。ロカルノ協定第2条は、分類を原則として「行政上の性格」の仕組みと位置付けています。

各国は国内法上の効果を定められますが、ロカルノ分類自体が、各国における意匠保護の性質や範囲を一律に決めるものではありません。

出典:WIPO「About the Locarno Classification」・2026年7月24日確認ロカルノ協定第2条

第16版は2027年1月1日から適用される

ロカルノ分類第16版は、2027年1月1日に発効します。

WIPO国際事務局は、同日以降の出願日を持つすべてのハーグ国際意匠出願に第16版を適用します。

判断基準となるのは、原則として「国際出願の出願日」です。

例えば、2026年12月に日本出願を行い、その優先権を主張して2027年2月にハーグ国際出願を行う場合、国際出願の出願日は2027年です。この場合、優先日が2026年であっても、ロカルノ分類は第16版が適用されます。

反対に、国際出願の出願日が2026年12月31日以前であれば、登録や公開が2027年になっても、第16版への自動切替えは行われません。

なお、方式上の不備によって出願日が繰り下がる場合もあるため、社内の送信日だけではなく、WIPOが認定した出願日を記録する必要があります。

出典:WIPO情報通知第4/2026号・2026年7月10日

過去の国際登録は自動的に再分類されない

WIPOは、2027年1月1日より前の出願日を持つ国際登録について、旧版で分類された商品を第16版へ再分類しないと明記しています。

したがって、同じブランドが同じ種類の商品を継続して出願しても、登録時期によって異なる版や分類番号が混在する可能性があります。

過去の分類番号を第16版の番号で上書きすると、次の問題が起こります。

  • 国際登録簿の表示と社内データが一致しなくなる

  • どの版で出願したのか確認できなくなる

  • 旧分類で検索すべき登録を見落とす

  • 分類変更前後の商品対応を説明できなくなる

  • 外部弁理士や現地代理人との照合に時間がかかる

必要なのは上書きではなく、旧分類と新分類を対応付けることです。

「旧版の登録情報」と「現在の社内分類」は、別々の項目として保存しなければなりません。

衣服・バッグ・ジュエリー・柄で使用するクラス

ファッション分野では、主に次のクラスを確認します。

衣服・服飾用品

衣服は、原則としてクラス2です。

代表的なサブクラスは次のとおりです。

  • 02-01:下着、ランジェリー、コルセット、ブラジャー、寝間着

  • 02-02:衣服

  • 02-03:帽子・ヘッドウェア

  • 02-04:履物、靴下、ストッキング

  • 02-05:ネクタイ、スカーフ、ネッカチーフ、ハンカチ

  • 02-06:手袋

  • 02-07:裁縫用品、服飾アクセサリー

第16版では、患者用ガウンが02-02へ追加されました。また、02-03の説明が変更され、保護用のヘッドギアやヘッドウェアの部品を含むことが明確になっています。

履物についても、「Ballet shoes」が「Ballerina shoes/Ballet flats」へ変更され、別項目として「Ballet shoes/Ballet slippers」が追加されるなど、用語の整理が行われています。

バッグ・財布・旅行用品

ハンドバッグ、ショルダーバッグ、財布、旅行バッグ、スーツケースなどは、主に03-01です。

第16版では、03-01に次の商品表示などが追加されました。

  • 旅行用圧縮パッキングキューブ

  • コスメティックオーガナイザー

  • スマートウォッチ用カバー

  • 携帯電話用バッグ

  • 時計用ボックス

一方、眼鏡コードは03-01から16-07へ移管されます。

このような移管があるため、先行意匠検索では、新しい分類だけを検索しても過去登録を網羅できません。

なお、商品の販売用パッケージや輸送用容器は、バッグと同じ03-01ではなく、クラス9に該当する場合があります。

ジュエリー

ジュエリーは、原則として11-01です。模造ジュエリーやコスチュームジュエリーも含まれます。

第16版では、「Finger rings」が、より一般的な「Rings[jewellery]」という表示へ変更されています。

ただし、腕時計は11-01ではなく10-02です。スマートリング、腕時計、腕時計用カバーなど、装身具に見えても機能や商品種類によって分類が異なるため、外観だけで判断できません。

テキスタイル・生地

織物、編物、フェルトなど、反物や未完成の生地として扱うものは、主に05-05です。

クラス5は、原則として、メートル単位などで販売される未完成のテキスタイルやシート材料を対象としています。完成した衣服はクラス2、完成した家具用製品などはクラス6となります。

第16版では、05-05の見出しが「Textile fabrics」から、より広い「Fabrics」へ変更され、「Metal fabrics」が新たに追加されました。

表面模様・グラフィックパターン

独立した表面模様、二次元グラフィック、ロゴ、装飾は、主に32-01です。

第16版では、32-01の説明へ、商品への適用先にかかわらず、グラフィック・シンボル、ロゴ、表面模様、装飾を含むことが明記されました。一方、画面表示用のグラフィック・シンボルは14-04から除外されません。

ただし、「模様が施されたバッグ」と「バッグへ使用する独立した表面模様」は、同じ出願対象とは限りません。

バッグ全体の形状と模様の組合せを対象にするのか、模様そのものを対象にするのかによって、商品表示、図面、分類、指定国での保護方法が変わる可能性があります。

32-01と記載すれば、あらゆる商品における模様の使用が自動的に保護されるわけではありません。出願対象をどのように表現するかは、指定国の制度を踏まえて専門家へ確認する必要があります。

出典:WIPO「ロカルノ分類第16版・クラス及びサブクラス一覧」・2026年2月26日先行公開、WIPO「第15版・第16版改訂比較ファイル」

商品分類マスタを版管理すべき理由

商品分類マスタには、分類番号だけでなく、次の情報を持たせるべきです。

  • 社内商品ID・SKU

  • 商品名

  • 出願時の商品表示

  • ロカルノのクラス・サブクラス

  • 適用版

  • WIPOの商品表示ID

  • 国内出願日

  • 優先日

  • 国際出願日

  • 国際登録番号

  • 指定国・地域

  • EC公開予定日

  • 実際の初回公開日

  • 旧版分類と新版分類の対応

  • 分類判断を行った担当者・専門家

  • 判断根拠となった資料のURLと確認日

版は、「現行」「最新」という文字だけで管理してはいけません。

例えば、「LOC(15-2025)」「LOC(16-2027)」のように、版を特定できる値として保存します。

分類マスタを更新する際も、過去の登録レコードを変更するのではなく、新しい適用開始日を持つ別レコードとして追加する方式が安全です。

先行意匠検索では旧版と新版の両方を確認する

WIPOのGlobal Design Databaseでは、キーワード、権利者名、分類、日付、国・地域などを組み合わせて検索できます。

しかし、旧登録が再分類されない以上、第16版の分類だけで検索しても十分ではありません。

例えば、眼鏡コードを調査する場合、少なくとも次の検索が必要になります。

  • 旧分類の03-01

  • 第16版の16-07

  • 「spectacle cords」などの商品名

  • 権利者名

  • 出願日・登録日

  • 画像による類似検索

表面模様についても、32-01だけではなく、その模様が使用される可能性がある衣服のクラス2、バッグの03-01、生地の05-05などを確認する必要があります。

ロカルノ分類は検索の入口ですが、検索範囲そのものではありません。

分類検索、商品名検索、権利者検索、画像検索を重ねなければ、視覚的に近い意匠を取りこぼす可能性があります。

出典:WIPO Global Design Database・2026年7月24日確認WIPO「Searching Protected Designs」

2026年中に外部弁理士へ確認すべき事項

海外出願を予定するブランドは、2026年中に日本の弁理士と必要な指定国の現地代理人へ、次の事項を確認しておくべきです。

  • 既存の商品分類表を第16版へどう対応付けるか

  • 第15版から移管・追加・名称変更された商品があるか

  • 衣服、バッグ、生地、表面模様を別出願にする必要があるか

  • 模様単体での保護を認める指定国はどこか

  • 完成品の外観と模様単体をどの図面で表現するか

  • 一つの国際出願にまとめられる意匠の範囲

  • 指定国ごとに必要となる図面・説明・クレーム

  • 旧版と第16版を用いた先行意匠検索の範囲

  • 最初の国内出願から6か月以内の優先権主張期限

  • EC、展示会、SNS、ルックブック公開前の出願期限

  • 自己公開後の新規性喪失の例外を利用できる国

  • 2027年をまたぐ出願案件の担当者と承認期限

2026年7月24日時点のWIPO案内では、一つのハーグ国際出願に最大100意匠を含められますが、原則として同じロカルノクラスに属する必要があります。

分類を誤ると、単なるデータ上の問題ではなく、出願の分割、補正、追加費用、出願スケジュールの遅延につながる可能性があります。

出典:WIPO「Hague System: Questions and Answers」・2026年7月24日確認

EC公開前に意匠出願日を管理する

ロカルノ分類の改訂以上に重要なのが、公開日と出願日の前後関係です。

多くの国では、出願前に意匠を一般公開すると、新規性または独自性を失う可能性があります。WIPOも、原則として、意匠を公開する前に出願することが重要だと説明しています。

ファッション分野では、次の行為が公開となり得ます。

  • ECサイトへの商品掲載

  • SNSへの写真・動画投稿

  • 展示会や受注会への出品

  • ルックブックやカタログの配布

  • インフルエンサーへの商品提供

  • クラウドファンディングへの掲載

  • プレスリリースの配信

  • 秘密保持契約のない商談

  • 店頭での先行展示・販売

日本には、一定の条件の下で公開から1年以内に利用できる新規性喪失の例外制度があります。

しかし、海外では対象となる公開行為、期間、必要書類、申請時期が異なります。自社公開後でも必ず海外で登録できるとは限りません。

商品発売フローには、次の管理項目を組み込む必要があります。

  • 最初の公開予定日時

  • 実際の公開日時とタイムゾーン

  • 最初の国内・地域出願日

  • 6か月の優先権期限

  • ハーグ国際出願日

  • 出願完了を確認した担当者

  • 公開を許可した法務・知財担当者

  • 出願前公開が発生した場合の証拠

EC担当者が「公開」ボタンを押せる状態と、知財担当者が「出願完了」を確認した状態を、システム上で連携させることが重要です。

出典:WIPO「Frequently Asked Questions: Industrial Designs」・2026年7月24日確認特許庁「意匠の新規性喪失の例外規定」・2026年7月24日確認

分類変更と意匠権の保護範囲を混同しない

第16版で商品が追加された、名称が変わった、別クラスへ移管されたという事実だけで、既存の意匠権の保護範囲が自動的に変わるわけではありません。

WIPOによれば、意匠の保護範囲は指定国・地域によって異なり、原則として出願時に提出した写真、図面その他の図示によって定められます。

つまり、重要なのは分類番号だけではありません。

  • 何を商品として表示したか

  • どの部分を意匠として示したか

  • どの図面・写真を提出したか

  • 部分意匠や模様単体を認める国か

  • 指定国の国内法がどう解釈するか

これらを総合して確認する必要があります。

ロカルノ分類は、権利の境界線そのものではありません。しかし、分類を軽視すれば、出願、検索、登録管理のどこかで、守るべきデザインを見失います。

美を分類するのではなく、美を見失わないために分類する

ファッションは、本来、分類からはみ出すことで新しい価値を生みます。

服とジュエリーの境界。バッグとウェアラブル機器の境界。生地とグラフィックの境界。現代のデザインは、既存の商品名を横断することで進化します。

一方、法制度は、無数の創造物を登録し、公開し、検索するために、世界へ番号を与えなければなりません。

ロカルノ分類は、美の価値を決める尺度ではありません。

それは、制度が美を見失わないための座標です。

第16版への対応で問われるのは、分類番号を暗記できるかではありません。ブランドが、自らのデザインを「何として保護したいのか」を説明できるかです。

服なのか。生地なのか。模様なのか。完成品の印象なのか。

その問いに答えられるブランドは、分類改訂を単なる事務変更ではなく、デザイン資産を再定義する機会に変えられます。


※本記事は、2026年7月24日時点の特許庁およびWIPOの公表情報に基づく一般的な解説です。個別の出願、分類、先行意匠調査、指定国における保護範囲については、弁理士および必要に応じて各国・地域の専門家へ確認してください。

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