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「あの場所で手を振れる日まで」運動会を見送る親の想い



静かな朝、聞こえない号砲

運動会の朝。
SNSには、お弁当の写真や、リレーの順番が決まったという投稿が並ぶ。
私も、かつては「今年はどんな運動会になるんだろう」と、ワクワクした気持ちで前日を過ごしていた。

でも、今は違う。

私の子は、学校の行事に行っていない。
不登校になってから、季節の行事がいつの間にか遠いものになってしまった。
その日、朝から子どもは静かにお絵かきをしていた。
私は静かにカーテンを閉め、外の音をひとつひとつ遮るように過ごす。


「今日は運動会なんだよ」

言えなかった。

あの子が傷つかないように。比べないように。
でも、本当は私自身の気持ちも守っていたのかもしれない。

近所から聞こえる太鼓の音、拡声器の声。
私の心の奥が、少しずつざわついていく。

「本当は、私もあのグラウンドにいたかった」
声には出さなかったけれど、心の中で何度も何度も、つぶやいた。


小さな背中が並ぶ光景を、いつか

カメラを構えて、手を振って、大きな声で「がんばれー!」って叫びたい。
リレーでちょっと出遅れたあの子を、それでも誇らしく見守って、「よくがんばったね」と抱きしめたい。

運動会は、勝ち負けだけの場じゃない。
「一緒にその場にいる」っていうことが、何よりの意味を持っているんだと、今になって気づいた。

でも、今はそれが叶わない。




無理に笑わなくていい、でも希望は手放さない

「行けなくてもいいんだよ」
そう言いながら、私は自分にも言い聞かせる。
今はまだその場所に行けなくても、心が追いつかなくても、あなたがダメなわけじゃない。

そして、私もダメな親じゃない。
子どもを守るために、今日も笑ってご飯を作って、となりにいる。

でもね、いつかは…
グラウンドの端っこで、あなたにそっと手を振れる日が来たらいいなと、私は心の中で願っている。


「あなたのペースで」

それでも待ってる

「みんなと同じじゃなくてもいい」
その言葉の重みが、こんなに深いものだったとは、親になって初めて知った。

今日、運動会に行けなかったとしても、
明日、少し笑えたら、それでいい。

でも、願いはある。

来年かもしれない。
もっと先かもしれない。
それでも私は、あなたと一緒にグラウンドに立てる日を、そっと夢見ている。



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