商品だけは、どうしても勧められませんでした。
独立して何年か経った少しずつ、お客様も増えてきた頃。
最初の頃は空いていた予約表も、少しずつ埋まるようになって、
「なんとかやっていけるかもしれない。」そう思えるようになってきた頃です。
追加の技術メニューも、
「こんなメニューもありますよ。」
「今の状態なら、こちらの方が合うと思います。」
そんなお話も、少しずつ自然にできるようになっていました。
でも、一つだけ。どうしても前に進まないものがありました。
商品です。
トリートメントをした方がいい。ホームケアを変えた方がいい。
そう思う場面はたくさんありましたが、話さなかったんです。言う理由が、自分の中でまだ見つかっていませんでした。
美容室の商品って、本当に必要なんかな。市販でも、いいものはたくさんある。テレビでもSNSでも、「これがすごい。」という商品は次々に出てくる。
そんな中で、どうして美容室の商品じゃないとあかんのやろ。
と思っていたくらいです。
その頃、お世話になっていたディーラーさんに言われたことがあって
「ハマグチさん、不思議なんですよ。」そう言って笑いながら、こんな話をしてくださいました。
「ここまで技術売上があって、お客様との関係もできている。それなのに商品だけ動いていないのは、おかしいんですよ。」
最初は、「そうなんですか???」くらいにしか思っていませんでした。
すると、続けて
「だって、お客様のことを思うなら、家へ帰ってからのことも考えますよね。」
その一言で、私は何も言えなくなりました。
「家へ帰ってから。」私は、そこを考えていたはずなのにな~と。
美容室で作ったヘアスタイルは、
家へ帰ってからが本番。次の日の朝。その次の日の朝。鏡の前で、
「今日もいい感じ。」そう思ってもらいたい。
そのために、カットも、カラーも、パーマもしていました。なのに、
ホームケアのことだけは、別のものとして考えていたんですよね。
あの時初めて、全部つながっていたんやと思いました。
商品を売るんじゃない。
家でも、その髪を楽しんでもらうために必要なものなんだ。
それまでは、「いい商品ですよ。」と紹介するものと思っていたけど、違うな~と。
美容室で過ごした時間を、次の来店まで少しでも気持ちよく過ごしてもらうためのもの。
だったんだ!!!!!
だからといって、
次の日から急に商品が売れるようになったわけではなくて(笑)
むしろ、そこからまた考え始めました・・・。
どう話したらいいんやろ?どうしたら、お客様が気持ちよく聞けるんやろ?
でも、お客様との空気だけは変えたくないしな~と。
「買ってください。」なんて、一度も思ったことないけど、
家で困ることが減るなら、朝が少し楽になるなら、
そのことはちゃんと話したい。
その二つを、どうやったら両立できるんやろ??
そのことばかり考えていました。
だから私は、その頃、一つ決めたことがあって
自分たちが納得できる形になるまでは、
商品は積極的に勧めない。
焦って形だけ真似しても、きっとお客様に伝わる。
「なんか今日は売られてる気がする。」その違和感は、
きっとお客様の方が先に感じると思っていました。
めちゃめちゃ考えて、何度も試したりし少しずつ、
私たちらしい形ができていきました。
今振り返ると、あの頃の私は、「商品の意味」を探していたなと。
私にとって商品は、美容室で作っヘアデザインを、お客様が家でも楽しめるようにするためのもの。
その役割が自分の中ではっきり決まったってからは、お客様の方から自然に聞いてくださるようになりました。
あの時ディーラーさんが言ってくださった、
「家へ帰ってからのことも考えますよね。」その一言は、今でも私の中に残っています。
17年経った今でも、新しい商品を選ぶ時、私が最初に考えるのは、
「売れるかな。」ではありません。
「これがあったら、お客様は家で少し楽になるかな。」そのことです。
あの日、商品の意味がわかったことで、
私の美容師としての仕事も、少し変わったように思います。
