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須藤輝彦(新連載)「運命の文学史:終わりから始まる物語」(『群像』2025年7月号)

☆mediopos3871(2025.6.25.)

■須藤輝彦(新連載)「運命の文学史:終わりから始まる物語」
 (『群像』2025年7月号)

□ヴォルテール(吉村正一郎訳)『カンディード』(岩波文庫 2005/2)
□ヘロドトス(松平千秋訳)『歴史 上』 (岩波文庫 1971/12)
□安岡正篤『知命と立命』(プレジデント社 1991/5)

須藤輝彦「運命の文学史」の連載が
『群像』誌上で始まっている
副題は「終わりから始まる物語」

西洋文化には「運命とその終わりへの並々ならぬこだわり」
「フェティシズム」があることから
主にヨーロッパの文学作品における運命のあり方を
「終わり」の観点から作品の読解を通じて探っていくとしている

運命を考えるにあたって重要なのは
「やれたことをしなかった自分の正当化になること」と
「どうしようもない状況を受け入れる慰めに、
またそこから立ち直るある種のたくましさにも繋がること」
という二重性である

一八世紀ヨーロッパの小説である
ヴォルテールの『カンディード』は
一七五五年にリスボンを襲ったM9の地震に
衝撃を受けて書かれたものだが

この小説の主眼はカンディードが
旅しながら見聞きするあらゆる種類の悲惨に直面し
世界と人間への楽観的な見方を変えていくところにある

小説の最後に
「最善説って何ですか」と尋ねられ
「具合が悪いときに、すべては善だと言い張る熱病のことだ」と
それまで信じていた「性善説」を捨てる決心をするのである

読んでいくことになるのは
「人間の終わり」「神の終わり」といった
比較的とらえやすい「終わり」の物語
そして「歴史の終わり」「世界の終わり」といった
少し抽象的な「終わり」の物語
さらには「愛の終わり」「理性の終わり」といった
「限界」をめぐる「終わり」の物語だとしているが

重要なのは
終わりをめぐる物語であると同時に
「終わりから始まるための物語」
つまり「成熟の物語」でもあることで

その際には
その「運命」が
ほんとうは変えることができる狭義の運命なのか
変えることができない宿命なのか
と考えることがひとつの方針になるという

記事では「運命」について次のように説明されている

運命とは「ある人間やものごとにとって
変更不可能で決定的な力をもつもの」であり

そのなかには容姿や身体的特徴などのように
人が生きる上での前提あるいは制約となるような「条件」
あるものごとの「限界」をかたどる要素であり
それらは「終わり」まで続くということにおいて
「終わり」を含んでいる

運命というものの典型的なイメージは
「その人が「始まる」とき
(場合によってはその前)から決まっていて、
少なくともその人が「終わる」までは続く」ものであるため
「終わり」を抜きにして運命を語ることはできない

日本語でも「終わりが肝心」「終わりよければすべてよし」
という言葉があるように
古代ギリシャのヘロドトス『歴史』にも
アテネの政治家ソロンの考えとして
「いかなる事柄においても、それがどのようになってゆくのか、
その結末を見極めるのが肝心でございます」と書かれている

また「終わり」という言葉は
「端」や「先」から転じた
「目的」という観念とも関係しているように
決定論や本質主義といったものを批判的に検討する
「目的論」の検討にもなってくる

さて西洋的な視点とは少し角度を変えて
「運命」についての東洋哲学的な視点を補足しておきたい
参照するのは安岡正篤『知命と立命』である

『論語』には
「命を知らざれば以て君子たること無きなり」とある

「運命」の「命」であり
そこには絶対的で必然的な意味が込められている

数学的にいえば「必然にして十分」ということであり
自然科学は天(宇宙・大自然)の「命」を究尽するもの
そして人間における「命」は
そのなかに「複雑微妙な因果関係」があり
それを「数」という

究尽していけばそこに絶対的必然的なものがあり
それが「天命」であり
哲学や宗教において天命を追求していくことが
「立命」である

変えることのできない定められた運命は「宿命」だが
「知命」によって人間を支配する因果律を知り
それによってみずからの運命を創造するのが
「立命」なのである

「終わりよければすべてよし」になるためには
「命」を知り「命」を「運」び「命」を立てなければならない

立命することは簡単なことではないが
「終わり」に向かってそれぞれの仕方で
「成熟」していくことはできる

「終わり」はただの「終わり」なのではなく
「始まり」でもあるのだから

そんな「成熟の物語」を
連載「運命の文学史:終わりから始まる物語」」で
読んでいくことにしたいと思っている

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