ヨーロッパで聴いた260回余りのコンサート――記録を振り返って見えてきた私の好み
260回あまりのコンサート記録を振り返ってみた
2014年からのドイツ在住で、コロナ禍を挟んで260本あまりのクラシックコンサートを聴いてきました。ほとんどは管弦楽で、オペラはたったの一本(キリル・ペトレンコ指揮バイエルンシュターツオーパーによる薔薇の騎士、当然演出はオットー・シェンクによるもの)だけです。ワーグナーやヴェルディの音楽は好きですが、オペラは歌手、演出、舞台芸術それに管弦楽の総合芸術なので、中々慎重になってしまいます。日本も含めて人生でオペラを観たのは3回しかありません。
今シーズンの準備をしている中で、これまでの記録を振り返ってみましたが中々興味深い傾向を見つけることができたので紹介したいと思います。自分の好みがはっきり分かれているのは面白いですが、ちゃんと苦手な指揮者や演奏家も複数回聴いているのは我ながら公平であるなとも思います。もっとも、苦手意識を持った演奏家の公演はここ数年はなるべく避けるようにはなってきましたが。
一番聴いたオーケストラはやはりミュンヘンが多かった
オーケストラで最も多いのはMPOミュンヘンフィルで59回です。まぁミュンヘンに住んでいるので意外では無いですが、近年の凋落ぶりはちょっと残念です。もはやチェリビダッケ時代の音は聴こえてきませんし、現主席のLahav Shaniは悪くは無いんですが指揮者としてはちょっと魅力に欠けますし、オケとうまくいっているようには見えないです。次はこれもミュンヘンなので当然ですがBRSOバイエルン放送響で31回です。ヤンソンス時代はチケットを取るのがかなり難しく、客演指揮者の公演ばかり聴いていましたがラトルになってチケットの発売時期を逃さないようにしてからは聴きたい公演に行くことができています。ラトルとのコンビは絶好調で、BPh時代よりもラトルは生き生きとしているように見えます。総合的に見てBRSOが世界一のオーケストラであると思っています。
続いてはSKDシュターツカペレ・ドレスデンで20回です。現首席指揮者のガッティが始めたマーラーツィクルスもありますが、前任のティーレマン時代にはブルックナーも聴いています。未だにあの独特の渋い音色は健在です。
続いてはBPhベルリンフィルで17回です。ラトル指揮では実演では聴いたことはありませんが、ペトレンコになってより筋肉質の響きになってきたと思います。しかし、このオケから一度も綺麗な音を聴いたことがなく、単にパワフルなだけで年々このオケへの興味は薄れてきています。BPhが世界最高のオケという人ももちろんいるでしょうが、ちょっとあの音色は私にとってはマイナスです。
続いては同じベルリンのコンツェルトハウス管で12回です。先日第二子を出産したヨアナ・マルヴィッツ率いるこのオケはBPhよりもはるかに魅力的です。彼女の攻めたプログラムやキレの良い指揮、歌劇場からたたき上げの彼女の指揮者としての引き出しの多さは毎回発見があります。
以上がベスト5です。
一番聴いた指揮者はガッティ
次に指揮者で見ていきますと、1位はちょっと意外でしたがダニエレ・ガッティで24回です。セクハラ事件でクビになってしまいましたがRCOでも聴いていますし、BRSO、MPO、BPh、バンベルク響そしてSKDと複数のオケで聴いています。SKDと継続しているマーラーツィクルスは全曲聴きに行きます。
続いてはトゥガン・ソヒエフで18回です。トゥールーズ管では一度も聴いていませんがMPOとBRSO、BPhにSKDで聴いています。いずれも客演なわけですが、明らかに音が変わるのは面白いです。日本でもルイージの次にN響の首席にと希望されている方が多いようですが、SROスイスロマンド管の首席に就任するのが決まりましたので果たしてどうなるでしょうか。
続いてはセミヨン・ビシュコフで15回です。やはりMPOへの客演で聴いているのが一番多いですがNDR、RCO、BPhでも聴いています。彼のショスタコーヴィチは特に素晴らしいです。
続いてはアンドリアス・ネルソンスで13回です。常に安定した解釈を示してくれるので信頼できる指揮者です。マーラーやリヒャルトといった大きな曲よりはシューマン、メンデルスゾーン、ベートーヴェンといった小さめの曲の方がいい印象です。
続いては名前を出すのも嫌なワレリー・ゲルギエフで11回です。もう二度と聴くことは無いでしょうが、よくもまぁ我ながら10回以上聴いたなと思います。ブルックナー、マーラー、プロコフィエフ、チャイコフスキー、ストラヴィンスキー、ラフマニノフと聴きましたが一度も心を動かされたことがありません。次点にフルシャとマルヴィッツが8回、7回で控えているのでそのうちゲルギエフの回数を超えるでしょうが、未だにゲルギエフが実演回数でベスト5に残っているのが恥ずかしいというか気持ち悪いというか。

ソリストは意外とばらけていた
ソリストは突出したのが無く、1位はブニアティシヴィリとフランク・ペーター・ツィマーマンで5回、2位はブーフビンダー、ゴーティエ・カピュソン、ハーデリヒ、ヤンセン、トリフォノフで4回、3位はブロンフマン、ファウスト、ゲルシュタイン、カントロフ、沙良・オット、オラフソン、テツラフの3回です。ソリスト目当てで出かけることも多いのですが、メイン目的でサブメインで付いてきたというのもあります。複数回聴いていますが、ブーフビンダーとオラフソンは嫌いですねぇ。
最も聴いたメイン曲はブラ4
メインの演目で言うと1位はブラームスの交響曲第4番で13回、2位は意外でしたがブルックナーの交響曲第9番で10回。いわゆるブルヲタではない私ですが、9番だけは大好きでこの結果になったのでしょう。続いてはチャイコフスキーの悲愴で8回、それから幻想交響曲、マーラーの1番、4番、5番、ショスタコーヴィチの交響曲第5番が並んで7回です。ベートーヴェン以前とストラヴィンスキーが苦手なので偏りが出ますね。音楽家の友人にストラヴィンスキーが苦手な理由はメロディが無いからでは?と指摘されたことがありますが確かにそうかもしれません。
協奏曲はシューマンのピアノ協奏曲
協奏曲だとシューマンのピアノ協奏曲が多く、9回。続いてはシベリウスのヴァイオリン協奏曲、ラヴェルのト長調協奏曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で5回です。ベートーヴェンは4番が好きなのですが3番の方が実演が多かったのは意外です。ヴァイオリン協奏曲はシベリウス、ベートーヴェン、ブルッフの1番、ショスタコーヴィチの1番が好きで、メンコンはそうでもないのですがメイン目当てで行ってサブメインがメンコンだった、というだけだと思います。
コンサートホールはミュンヘンが圧倒的に多い
最後にコンサートホールですが、ミュンヘンのガスタイクHP8、通称イザールフィルハーモニーで74回。これは客演オケもここを使うのでまぁ当然です。続いてちょっと意外でしたが現在改装中のガスタイクで72回。あの悪名高い音響のホールでこんなにも聴いていたのは驚きです。続いてぐっと回数が減って同じくミュンヘンのヘルクレスザール。ここを本拠地としているBRSOがHP8も使うのでこういう結果になりました。続いてはドレスデンのゼンパーオーパーで15回、ベルリンのフィルハーモニーで13回、同じくベルリンのコンツェルトハウスで11回と続きます。次点はライプツィヒのゲヴァントハウスの8回とアムステルダムのコンセルトヘボウの7回が続きます。ホールの記事はいずれ掲載しますが、音響や視覚面で好きなホールはバンベルクのヨゼフ・カイルベルト・ザールとライプツィヒのゲヴァントハウスですね。コンセルトヘボウの音響は確かに素晴らしいですが、音が降ってこないので平土間で聴くのはお勧めしません。あとはウィーンの楽友協会ホールは別格ですね。
以上がヨーロッパで私が聴いてきたクラシックコンサートの上位回数です。傾向がご理解いただけましたかね。

