私はまだ夢の続きを探している
久しぶりに漫画を買った。
しかも、ただの衝動買いじゃない。
ずっと気になっていたTHE BAND。
大好きな漫画『BECK』の作者、ハロルド作石の新作が出たと知ってから、ずっと心のどこかが落ち着かなかった。
私はロックバンドが好きだ。
音楽ジャンルとしても、空気としても、生き方としても。
下手でも、売れてなくても、音にしがみついている人たちの姿にどうしても心を掴まれてしまう。
その感覚を、漫画という形で初めて真正面から突きつけてきたのがBECKだった。
だからハロルド作石がまたバンド漫画を描くと知ったとき、期待しないフリをしながら、内心ではかなり身構えていた。
案の定、のっけからやられる。
大好きなバンド、Hump Backの拝啓、少年よ。
いや、そこでそれ出す?ってくらい早い段階でぶっ刺してくる。
音が聴こえる漫画は強い。
ページの上に、勝手にBGMが流れ始める。
ロックバンド好きの記憶を、いきなり鷲掴みにしてくる感じがある。
新作『THE BAND』の主人公は、前作のようなボーカリストではなく、ギタリストだ。
前に立つ人間ではなく、音を信じて積み上げる側。
同じバンド漫画でも、視点が変わるだけで、音楽の輪郭がまるで違って見える。
物語の流れ自体は、正直BECKを思い出す部分もある。
少年がギターを手にし、練習し、バンドを組む。
でも今作で強く残るのは、才能や成功じゃない。
指先の痛み。
うまく弾けないまま、それでも音を出し続けること。
昨日できなかったフレーズを、今日も同じように練習して、ほんの少しだけ前に進むこと。
拙いながらも自分の感覚を信じて、真っ直ぐに練習を続ける姿と、その成長の仕方が丁寧に描かれている。
それがやけにロックだった。
場数を踏み、段違いでレベルの高いアーティストたちと出会い、世界が更新されていく感覚もいい。
うまい人に出会うと、心が折れるんじゃなくて、「まだ先がある」と知ってしまう。
戻れなくなる。
その感じが、妙にリアルだ。
ただ、この漫画には大きな問題がある。
これを読んだせいで、BECKを読み返したくなってしまった。
BECKを読み返したら、漫画が好きだった頃の作品を、全部読み返したくなる未来が見える。
漫画は面白い。でも恐ろしい。
全20巻が当たり前で、今はKindleが管理コストまで消してくれる。
止める理由が、どんどん減っていく。
残るのは、お金と時間。
楽しいけれど、吸い取られすぎる。
でも、それでも読みたい。
この葛藤ごと引き受けてしまうのが、たぶん私にとっての漫画との距離感なんだと思う。
好きだけど、無制限には踏み込まない。
踏み込みたい気持ちを、横目で見ながら歩く。
たぶんこれからも迷う。
1巻だけのつもりで続きを買い、気づけば時間が減っている。
それでも「まあ、いいか」と思ってしまう。
漫画は恐ろしい。
でも、音が聴こえるページを前にしたら、手を引っ込める理由も、そこまで多くはない。
今日も私は、少しだけ慎重な顔で、次のページをめくっている。
