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【値上げしてもシェア2倍】エバラ、明治、ライオンに学ぶ「高いのに選ばれる商品」の共通点(08/29)

8月29日、土曜日。
本日は物価高が続き多くの商品で価格改定が進むなか、値上げをしながらも市場シェアを大きく伸ばしているブランドに焦点を当てたニュースを取り上げます。
価格が上がれば買い控えが起きやすい現在の環境において「高くても選ばれ続ける商品」には何が起きているのか。
その背景にある共通の動きを読み解いていきます。

① ニュース:値上げをしながらシェアを伸ばした159のブランド

生活必需品から食品まで価格改定が相次ぐなか、値上げ後も市場シェアを大きく伸ばしている商品があります。
日経MJが日経POSデータを使い、食品・日用品分野について2019年と2025年を比較したところ、価格を引き上げながらシェアを10%以上伸ばした商品は159商品にのぼりました。
記事では、その代表例としてエバラ食品工業の「プチッと」シリーズ、明治のプロテイン飲料「ザバス」、ライオンの「NONIO」の舌クリーナーなどを紹介しています。
共通しているのは単に価格を上げながら既存の顧客へ同じ商品を売り続けたわけではない点です。

エバラ食品の「プチッと」シリーズは、もともと個食向けの鍋調味料として誕生しました。
しかし近年の猛暑によって鍋商戦の期間が短くなり、成長率が鈍化したため2024年から「鍋専用」ではなく「万能調味料」として利用場面を広げる取り組みを始めました。
炒め物や炊き込みご飯など600以上のレシピを提案し、2024年2月に希望小売価格を平均10%引き上げたものの、売上は約2倍に成長しています。

明治のプロテイン飲料「ザバス」も価格を23%引き上げながら、シェアを約2.5倍へと伸ばしました。
「筋トレをする人のための飲料」というイメージから、美容や日常の健康という付加価値を加え、新しい顧客層を開拓したことが大きな要因です。

さらにライオンの「NONIO」舌クリーナーは、これまで一般的ではなかった「舌を専用品でケアする」という新しい習慣そのものを広げ、価格を引き上げた後も販売を拡大させています。
これらに共通するのは値上げそのものを目的としたのではなく、利用する場面や人、売場での接点を広げることで、価格上昇を上回る新しい需要を生み出したことです。

出典:日経MJ(流通新聞)「なぜだ 値上げでもシェア2倍 フライパンにプチッと鍋/ザバス、美容飲料も 利用シーン広げ勝ち組に」(2026年8月28日、1ページ)

② 視点:価格が上がっても「売れる理由」をつくる

一般的な感覚として商品の価格が上がれば販売数量にはマイナスに働きます。
生活者が購入を控える、別のブランドへ移る、あるいは使用量を減らすといった行動が起きるからです。
しかし今回紹介されたブランドは価格を引き上げながらシェアも伸ばしました。
なぜこのような現象が起きたのでしょうか。

「鍋の素」から「万能調味料」へ、利用場面を変える
エバラ食品の事例が非常に分かりやすい例です。
鍋用調味料という枠組みのままであれば、気温の高い時期にはどうしても需要が落ち込みます。
そこで「鍋の素」という定義を外し、炒め物や炊き込みご飯など、一年を通して使える万能調味料へと役割を再設定しました。
商品そのものが劇的に変わったわけではありません。
しかし、その商品が使われる場面を増やすことで、これまでとは違う生活者を取り込むことに成功しています。

既存の顧客を手放さず、新しい接点を増やす
明治の「ザバス」も同様の動きを見せています。
プロテインといえば筋肉トレーニングをする人向けの飲み物という印象が強くありましたが、美容や日常の健康を意識する層へ向けて新しい価値を提示しました。
ここで注目したいのは、従来のコアユーザーを切り捨てたわけではない点です。
タンパク質の含有量を増やした商品など、既存の利用者が求める深い価値も用意しながら、同時に新しい顧客が参加しやすいきっかけをいくつも用意しました。
ブランドを横方向へ広げつつ、縦方向へも深くする。
この両立がシェア拡大を支えています。

「新しい習慣」と「新しい発見」を提案する
ライオンの「NONIO」舌クリーナーは、新しい行動そのものを定着させた好事例です。
歯ブラシで済ませていた日常のケアに、専用品を使うという新しい習慣を提案しました。
さらに定番のオーラルケアコーナーだけでなく、ラックの側面といったこれまで使われていなかったスペースに専用の什器を置くことで、生活者の目に触れる機会を増やしました。
優れた商品であっても存在を知られなければ買っていただけません。
広告だけでなく店舗内での発見率を高めることも、選ばれ続けるために欠かせない条件なのです。

値上げ後に必要なのは「高くなった理由」ではなく「買う理由」
価格改定を行うと企業側はどうしても「原材料や物流費がこれだけ上がったため」というコストの説明に意識が向きがちです。
しかし生活者がお金を支払う理由は、企業の事情ではありません。
「自分にとっての価値」という点に尽きます。
プチッとなら毎日の料理が手軽になる、ザバスなら美容や健康に役立つ、NONIOなら新しい爽快感が得られる。
価格が上がったこと以上に生活者が感じるメリットや魅力を上回るだけの「新しい買う理由」を提示できているかどうかが、すべての分かれ道になります。

③ まとめ

物価高が続き価格改定が相次ぐなかでも、エバラ食品の「プチッと」、明治の「ザバス」、ライオンの「NONIO」舌クリーナーのように、価格を上げながらシェアを大きく伸ばすブランドには明確な共通点があります。
それは従来のやり方をただ守り続けるのではなく、商品の使い方を広げ新しい顧客層を迎え入れ、生活者との接点を増やし続けているという点です。

価格が上がったときに心配になるのは「何人のお客様が離れてしまったか」という離反率ですが、それと同じくらい「新しく何人が買い始めたのか」という広がりを見ることが大切です。
カテゴリの枠組みにとらわれず、いつ、どこで、誰が使うのかを再定義する。
物価上昇の厳しい環境こそが、自社の商品やブランドが持つ本当の価値を見つめ直し、新しい可能性を引き出すきっかけになるのかもしれません。

出典 日経MJ(流通新聞)「なぜだ 値上げでもシェア2倍 フライパンにプチッと鍋/ザバス、美容飲料も 利用シーン広げ勝ち組に」(2026年8月28日、1ページ)

独り言

「値上げしたら売れなくなる」というのは当然の原則のように思えますが、今回のニュースを読むと価格以外の部分でどれだけ生活者の日常に入り込めるかが勝負なのだと気付かされます。
ただ黙って値上げを受け入れてもらうのを待つのではなく「これなら少し高くても買いたい」と思わせる工夫を積み重ねる。
知恵の絞り方が大事なってきます。

それでは素敵な週末をお過ごしください!
N.S.C.Labの荒木伸一郎でした。

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