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ショートショート『三度目の遭遇』


——ある夢の記録より——

 あの日集まっていたのは、いつもの四人だった。誰かの部屋に集まって、最近界隈で噂になっている怪しいセミナーの話をしていた。

与えられたのは、奇妙な"仕事"だった。セミナーの講師が新しく始めるという、カラオケボックスに似た店舗みたいだ。なぜか自分が選ばれ、偉い人たちの会議に同席させられていた。理由もなく頼られる事に驚く。その間に会議はどんどん進んでいった。

これはおかしい、とそうたに相談したのは数日後のことだ。みあも交えて三人でそうたの家で話していると、玄関の呼び鈴が鳴った。あのセミナーの講師だった。にこやかな顔で、新しい"チャンス"への勧誘を続けてくる。丁寧に、けれどきっぱりと断った。すると奥の部屋から俺の父親が出てきて、「うるさい」と一喝した。なぜ父がそうたの家にいるのか、誰も——自分自身でさえ——疑問に思わなかった。講師は特に気を悪くした様子もなく、「また来ますね」とだけ言って帰っていった。

 翌日、あのカラオケボックスに似た建物に行ってみると、もぬけの殻だった。看板もない。什器もない。最初から何もなかったかのように、空っぽの部屋がひとつあるだけだった。

 講師の顔を一年前の記憶と重ねてみたのは、いつだったか。けれど確かに知っていた。一年前、あの講師は「詐欺師養成施設」と呼ばれる場所にいた、ということを。そうたが調べて教えてくれた。

「危うく騙されるところだった」と誰かが笑いながら言い、皆でその手口の稚拙さを笑い合っていた——そのときだった。

 窓の外、夕暮れの空の奥に、紫色の瞳のようなものが浮かんでいるのに気づいた。瞬きする間もなく、空は薄いガラス細工のようにピシリと音を立てて裂けた。裂け目の向こうから、謎の金属の塊がゆっくりと降りてくる。逃げようとしたのに、足が地面に縫い付けられたように動かなかった。俺は掠れる声で「宇宙人だ」とつぶやいたのを覚えている。

 気づけば、作業服のようなつなぎを着た誰かに腕をつかまれていた。顔は影になっていて見えない。ただ、その手の感触はひどく人間的だった。

 連れて行かれた先には、見覚えのある顔がいくつもあった。テレビでよく見る漫才師や、深夜番組の司会をしている芸人。誰かが小さく囁いた。「どうやら、面白い人間しか連れて来られないらしいよ」

 それを聞いて、俺は笑うしかなかった。

 宇宙人の試練は、全部で三つあった。

 一つ目は、格闘だった。相手は全身をスーツのようなもので覆っていて、体格からてっきり男だと思い込んでいた。組み合ってようやく分かった。相手は、女だった。まわりで見ている誰の顔も、拍子抜けするほど普通の人間のものだった。

 二つ目は、誘惑だった。ひとりの女が近づいてきて、甘い声で何かを囁いた。船の外へと続く扉のほうへ、そっと手を引かれる。誘いに乗れば、外へ落とされる。そして、多分もう戻れない。断った。あとで知ったことだが、彼女の本命は自分ではなく、少し離れた場所に立っていた冴えない中年の男だったらしい。どうやらこの船では、恋愛のマッチングもされているようだった。

 三つ目のことは、あまりよく覚えていない。ただ、バスの荷台のような場所で、次々と無茶振りをされ続けている一団を遠くに見た記憶がある。かつて深夜番組でバスに乗せられ、無理難題をこなしていた若手芸人たちの姿と、どこか重なって見えた。

 目が覚めてから、これが今年三度目の"招待"だったことに気づいた。そういえば一度目も二度目も、銃で撃たれたり戦ったりした記憶がある。ただ、相手はどちらも人の形をしていなかった。ファンタジー小説のリザードマンのようだったり三メートルの4足歩行の獣っぽい怪物だった。

今回、初めて人の姿をとった。そして、これまでのどの回よりも鮮明だった。腕をつかまれた感触も、友達の家で父に一喝された後の微妙な空気も、まだ肌感覚に残っている気がする。

 もし彼らが、招待のたびに少しずつ"人間らしさ"の解像度を上げているのだとしたら——次の招待状は、もう夢の中には届かないのかもしれない。


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nankul naisa(なんくるないさ) 「正義と正義の間に落ちた涙は誰が拾うのだろう」