「復職可能」とだけ書かれた診断書で、人事が困る理由
休職していた社員から、
「〇月〇日から復職可能」
という診断書が届く。
人事にとっては、待っていた知らせかもしれません。
ただ、産業医の立場から見ると、この一行だけでは復職後のフォローを十分に設計できません。
復職できるかどうかだけでなく、復職後にどこまで働けるのか、何に配慮すればよいのかが分からないからです。
私は精神科クリニックの院長として診断書を書く側にいて、同時に産業医として診断書を受け取る側にもいます。
両方の立場から見ると、復職がスムーズに進む診断書には、共通点があります。
なぜ「復職可能」だけでは足りないのか
会社は、復職にあたって安全配慮義務を負います。
つまり、「戻れるかどうか」だけではなく、
「どこまでなら働けるのか」
「何に配慮すれば安全に働けるのか」
を確認する必要があります。
たとえば、
残業は可能なのか
出張は可能なのか
フルタイム勤務に戻れるのか
高負荷業務は避けるべきなのか
通院への配慮は必要なのか
こうした情報がないと、復職後の配慮が過剰になったり、不十分になったりします。
本人は「もう戻れる」と思っている。
会社は「どこまで任せていいのか分からない」。
そのズレが、復職後のつまずきにつながることがあります。
産業医が復職時の診断書で見ている4点
産業医が復職時に確認したいのは、主に次の4点です。
就業上の配慮の中身
例:残業不可、出張不可、深夜勤務不可、高負荷業務を避ける、など配慮の期間
「当面」ではなく、1か月、3か月などの目安があるか再評価の予定
次にいつ状態を見直すのか主治医への照会が可能か
確認が必要な場合、産業医から主治医へ診療情報提供を依頼することがあります。本人の同意を得たうえで、主治医に確認できると、その後の判断がスムーズになります。
この4点があると、産業医は復職後のフォロー計画を立てやすくなります。
実務に合う診断書を出してもらうには
診断書が職場の実務とずれる大きな理由は、主治医が会社の復職ルールを知らないことです。
たとえば、
復職は所定労働時間の勤務が前提
短時間勤務制度がある/ない
試し出勤制度がある/ない
在宅勤務が可能/不可
休職可能期間が決まっている
こうした情報は、主治医には分かりません。
そのため、会社の復職ルールを本人経由で主治医に伝えたうえで、
「この前提で、必要な配慮を書いてください」
と依頼することが大切です。
本当は、休職に入る時点で伝えてほしい
復職時だけでなく、休職に入る時点で会社のルールを伝えておくことも重要です。
休職開始時の診断書が、
「〇か月の休養を要する」
だけになるのは、ある意味自然です。
その時点では、復職時の状態まで正確に見通すことは難しいからです。
だからこそ、休職の入り口で、
・休職可能期間
・復職の条件
・会社にある制度
・復職時に必要な書類
を本人経由で主治医に伝えてください。
主治医はゴールから逆算して、治療計画を立てやすくなります。
休職期間満了の直前に、
「あと1か月で戻れますか」
と聞かれても、治療が間に合わないことがあります。
まとめ
復職時の診断書は、単なる許可証ではありません。
職場復帰の設計図です。
診断書が届いたら、
・どこまで働けるのか
・どんな配慮が必要なのか
・その配慮はいつまでなのか
・次にいつ見直すのか
を確認してください。
足りない情報があれば、本人の同意を得たうえで主治医に照会する。
そして、次の休職者からは、休職の入り口で会社のルールを主治医に伝える。
それが、復職をスムーズに進めるための近道です。
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