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Phil Collins と E.C. そして BISH

普段はライバル同士なのでしょうが、困っているときには手を差し伸べる。そんなミュージシャンシップに微笑みながら記事に目を通していました。

私がフィル・コリンズの声を初めて聞いたのは、ラジオから流れてきたジェネシスの「Follow You Follow Me」('78)。サウンドとメロディの美しさに聴き惚れて、一聴しただけで気に入ってしまいました。

プログレと呼ばれる音楽は、これを聴く以前に エマーソン・レイク&パーマー、イエス、キング・クリムゾン、キャメル辺りのレコードを、私が頼まなくても「これ聴いてみなと」貸してくれるありがたい友人T君がいたので体験済みでしたが、「Follow You Follow Me」を聴いた時はまだジェネシスまで辿り着いておらず、ジェネシスがプログレの仲間だとは知らずにいました。

「「Follow You Follow Me 」を聴いて気になっているんだけど、ジェネシスのレコードを何か持ってない?」と友人たちに声をかけたところ、「それだったらこれが良いよ」と『Seconds Out 眩惑のスーパー・ライヴ』('77) を貸してくれたのはやはりT君。T君は次のようなことを教えてくれながらレコードを手渡してくれました。ジェネシスのリードボーカリストだったピーター・ガブリエルがバンドを脱退したため、フィル・コリンズがドラムを叩きながら歌っていること。チェスター・トンプソンという凄いドラマーと、イエス、クリムゾンに居たビル・ブラッフォードが参加しているので、フィルとのツインドラムを堪能すべし・・・などなど。

まず、アルバムジャケットを見てみると、照明に映し出されたステージの美しさに目が留まり、音を聴いてみればジャケットから受けたイメージのまま、サウンドの美しさとその広がりにいたく感動したました。また、T君が言っていたドラマティックなツインドラムに「これは凄い!」とすっかり虜になったのでした。

余談ですが、初めてこのアルバムを聴いたとき「Los Endos」のエンディングで、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズのアルバムでエリック・クラプトンが弾いていた「Steppin' Out」のギターリフが聞こえてきて「何で?」と驚きましたが、スティーヴ・ハケットはブルースが大好きだったようです。


その後私は、ピーター・ガブリエル時代のジェネシスへは遡らず、フィルが居た頃のブランドX『Unorthodox Behaviour 異常行為』('76) へ寄り道。やっている音楽はまさに異常な行為でした。

その後、フィルのソロ作品を徐々に追いかけていきました。すると、フィルとエリック・クラプトン、スティーヴン・ビショップという、音楽スタイルが異なる3人が互いに絡み合っていくのを知り、とても興味深く思いながらそれぞれの曲を聴き続けました。以前、それら記録をしたためたものが手元にありますので、それをもとに3人の活動を振り返って見たいと思います。



① Stephen Bishop『Careless』('76)

produced by Henry Lewy, Roy Halee, Stephen Bishop

スティーヴン・ビショップ(以下、BISH)のデビューアルバム。ラジオから流れてきた「On And On」を聴いて「これは良い!」と、レコード屋さんへ速攻買いに走ったのがBISHとの出会いだった。

曲を聴きながら『Careless』のクレジットを見ていたらクラプトンの名前を発見して「意外な組み合わせだな」と吃驚。調べて見ると、クラプトンはBISHのソングライターとしての魅力に惹かれて自ら参加を買って出たそうだが、BISHのどの曲を聴いてそう思ったのかが気になるところ。

スタジオにやってきたクラプトンはひどく酔っぱらっている状態で、BISHはクラプトンよりも彼が連れてきたパティ・ボイドのほうに強い関心を抱いたそう。「何故かって、パティはビートルズと関わりがあった人だものね。」とはBISH談。BISH は「頭の中でビートルズの曲が1枚のCDになっている」というほどのビートルズ・ファンだった。

★ Save It For A Rainy Day 雨の日の恋
BISH (vo,g), Chaka Khan (b-vo), Eric Clapton (g), Russ Kunkel (ds) …
クラプトンのソロはワウ・ペダルを使用した短いもの(下の1)だが、ライノ編集のベスト盤『Best Of Bish』には長めのソロが入った別テイク(下の2)が収録されている。

★ Sinking In An Ocean Of Tears
BISH (vo,g), Eric Clapton (g), Jay Graydon (g) …
クラプトンはエンディング付近で軽くスライドギターを弾いているらしいが、私には聞き取ることができない。


② Stephen Bishop『Red Cab To Manhattan 哀愁マンハッタン』('80)

produced by Mike Mainieri, Tommy LiPuma

BISHの2作目『BISH 水色の手帖』('78)発表後、所属していたabcレコードが崩壊したため、このアルバムからWarner Bros.へ移籍。ニューヨークの錚々たるスタジオ・ミュージシャン達に囲まれ、これまでの柔らかく暖かみのあるサウンドから都会的でシャープな音作りへとシフトされた。

以下の2曲のみ、クリス・スティントン(p)、プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカー(key)とクラプトン繋がりのメンバー。それに加えてブランドXのジョン・ギブリン(b)、そしてフィル・コリンズ(ds)を加えたメンバーによるロンドン録音。

BISHが初めてフィルと出会ったのは『BISH』発表後の1978年。イギリスにあるクラプトン宅に滞在していた時のこと。「(クラプトン夫人となっていた)パティがフィルを紹介してくれたんだ。フィルは僕のアルバムを2枚とも聞いてくれていた。その時点で僕はフィルのことを単にドラマーだとしか思っておらず、歌も上手いなんて知らなかった。でも素晴らしい奴だと思ったよ。」と、BISHは当時を振り返っている。

★ Little Moon
BISH (vo,g), Eric Clapton (g), Chris Stainton (p), Gary Brooker (key), John Giblin(b)、Phil Collins (ds)
恋人へのつのる想いを歌った曲。美しく物悲しいメロディから転調した後、クラプトンはコードを刻んでいるだけだが、フィルのドラミングは引き締まっている。

★ Sex Kittens Go To College おてんば娘
BISH (vo,g), Eric Clapton (g), Chris Stainton (p), Gary Brooker (key), John Giblin(b)、Phil Collins (ds)
ベートーベン第九の調べに続いて、ブルース風~カントリー風へと転調する小品。クラプトンは軽くいかにもなオブリガードを入れている。アルバム中、この曲だけは明らかに雰囲気が異なる。


③ Phil Collins『Face Value 夜の囁き』('81)

produced by Phil Collins

フィルの1st ソロアルバム。ゲートエコーと呼ばれるエフェクト処理がかけられたドラムサウンドや、切れ味鋭いアース・ウインド&ファイアーのホーン・セクションが参加したソウル趣味も見える曲作りなど、後のフィル・コリンズ、ジェネシスの核となるスタイルを確立。フィルが幅広い音楽性、娯楽性を持ったメロディーメイカーであることを世に知らしめた。ビートルズ「Tomorrow Never Knows」のカバーも話題になった。

★ This Must Be Love 愛の証
Phil Collins (vo,per,key), BISH (b-vo), Alphonso Johnson (b) …
物静かで美しいメロディーを持った曲。BISHがハーモニーを付けている。

★ The Roof Is Leaking 天を仰いで
Phil Collins (vo,per,p), Eric Clapton (g), Joe Partridge (slide g.)
こちらもメロディーが美しい。ジョー・パートリッジが弾くスライドギターは目立つが、クラプトンがどの辺りで弾いているのかは良くわからない。

★ If Leaving Me Is Easy  甘い囁き
Phil Collins (vo,ds,key), Eric Clapton (g), Alphonso Johnson (b) …
とてもムーディーな曲。クラプトンのプレイはイヤホンで聴いてやっとわかる程度。前曲同様、クラプトン云々よりもフィルのボーカルを味わう曲だろう。だが、デモバージョンではクラプトンのオブリガートをはっきりと聞くことができる。


④ Phil Collins feat. Marilyn Martin「Separate Lives」('85)

フィル・コリンズとマリリン・マーティンのデュエットで全米1位を獲得した「Separate Lives」はBISH作。映画《ホワイト・ナイツ》のテーマ曲として使われアカデミー賞の最優秀主題歌賞にノミネートされたが、残念ながら同映画のテーマ曲としてライオネル・リッチーが歌った「Say You, Say Me」に賞を奪われてしまった。もともとこの曲はBISHが1985年にリリースを予定していたアルバム『Sleeping With Girls』のために準備していた曲で、それを聴いたフィルが気に入りカバーしたのだった。

BISH によるバージョンは『Sleeping With Girls』収録予定だったものが『Best Of Bish』。アンプラグド版が『Blue Guitars』 『Yardwork』。ボサノバアレンジが施されたものが『Romance In Rio』に収録されている。また、ルーマーとのデュエットだなんて、たまらないライブバージョンも有り。


ちょっと横道。
ルーマーはBISHを敬愛しているようで、自身のアルバムでBISHカバーを披露しているのですが、これが涙ものの出来栄えなのです。逆にBISHもルーマーのことを気にかけている様子で彼女のアルバムに曲提供をしていますが、そちらはまた別の機会に。


⑤ Eric Clapton『Behind The Sun』('85)

produced by Phil Collins / Ted Templeman, Lenny Waronker

クラプトンからプロデュースを依頼されたフィルは「エリックの音楽をもう1度掘り起こして彼を奮い立たせる最高のチャンスだと思った。彼はアルコールを断ち、かつてないほど演奏も歌も素晴らしかった。」と語っている。事実「Same Old Blues」「Just Like A Prisoner」などは、ここ数枚のアルバムに比べると歌声に力強さがみなぎりギタープレーも冴え渡っている。クラプトンにはオーバープロデュースだという反論もあろうが、スタジオ盤において久しぶりに弾きまくるクラプトンを聴けばフィルの言葉も納得だろう。

フィルは全11曲中8曲をプロデュース。次の3曲でドラムス。他数曲でパーカッション、キーボード、バッキングボーカルでプレイヤー参加している。

★ She's Waiting
Eric Clapton (g,vo), Donald"Duck"Dunn (b), Chris Stainton (key), Phil Collins (electronic-ds), Jamie Oldaker (ds) …
シンプルながら力感溢れるギターリフと歌声が印象的なナンバー。本アルバムリリース後に行われた来日公演で演奏され、かなりステージ映えしていた。

★ Same Old Blues
Eric Clapton (g,vo), Donald"Duck"Dunn (b), Chris Stainton (key), Phil Collins (electronic-ds), Jamie Oldaker (ds) …
すすり泣くようなソロに身悶えする。スタジオ版でこんなに長いソロが録音されたのはデレク&ザ・ドミノスのアルバム以来ではないか。「今のソロ良いね!でも、もう一回録っておこうか。」などとフィルにおだてながら何回もやり直しをさせられたよ。」と、クラプトンは笑いながらコメントをしていたようだ。

★ Just Like A Prisoner
Eric Clapton (g,vo), Donald"Duck"Dunn (b), Chris Stainton (key), Phil Collins (ds), Jamie Oldaker (ds)
この曲も「Same Old Blues」同様、感動的な仕上がり。曲後半、次々とフレーズが湧き出て流れるようなソロはクラプトンここにありといった風。右チャンネルから聞こえるドラムがフィルで、左チャンネルは長年バンドの一員としてクラプトンを支えてきたジェイミー・オールデイカー。


『Behind The Sun』リリースと同じ年に行われた「ライブ・エイド」にアルバムと同じメンバーで参加し「White Room」「She's Waiting」「Layla」3曲を披露。眠い目をこすりながらテレビ中継を見ていた私は、顔つきが精悍になったクラプトンが登場した瞬間、目がぱっちりと覚めました。ソロになって以降、ライブでクリームの曲を演奏したのはこの時が初めてだったと思います。


⑥ Eric Clapton『August』('86)

Produced by Phil Collins / Tom Dowd, Eric Clapton

『Behind The Sun』に引き続きフィルが全面プロデュース。コンテンポラリーなクラプトン・ミュージックが確立された記念碑的なアルバムと言っても過言ではない内容。前作にも増してしなやかな力強さと逞しさを身につけたクラプトンの歌いぶり、弾きっぷりが印象に残る。

全12曲中11曲をトム・ダウドとフィルが共同プロデュース。フィルはその11曲でドラム、バッキングボーカルを担当。全面的にクラプトンをバックアップしている。

★ Run
Eric Clapton (g,vo), Greg Phillinganes (key), Nathan East (b), Phil Collins (ds), Randy Brecker (tp), Michael Brecker (sax) …
この曲を初めて聴いたとき「これが新しいクラプトンか?!」と大胆なイメージチェンジに驚いた。前作からフィルが呼び寄せた、グレッグ・フィリンゲインズ、ネーザン・イーストも大活躍。

★ Tearing Us Apart
Eric Clapton (g,vo), Tina Turner (vo), Greg Phillinganes (key), Nathan East (b), Phil Collins (ds)
ティナ・ターナーとのダブルボーカルによる強烈なダンスチューン。ティナに煽られてクラプトンはかなりがなっている。ビシビシと決まるフィルのドラミングも絶好調。この後のライブで重要なレパトリーとなった。

★ Holly Mother
Eric Clapton (g,vo), Greg Phillinganes (key), Nathan East (b), Phil Collins (ds) …
クラプトンとBISHの共作で、故リチャード・マニュエル(ex-ザ・バンド)に捧げられた美しいバラード。天にいるリチャードに届けと言わんばかりのギターソロが心に染みる。


ちょっと横道。
この前後、ティナ・ターナーはブライアン・アダムス、ロッド・スチュワートなど、錚々たるロックボーカリスト達と共演を果たして強烈なインパクトを与えてくれました。


『August』リリース以降、フィルが参加したライヴセッションの動画を少しばかり。

★ Eric Clapton & Friends Live 1986
フィルのパフォーマンスに目を見張った。

★The Prince's Trust Rock Gala 1986
このライブ映像を弟と見ていたとき「ティナ・ターナー vs クラプトンは、がぶり寄りでティナの勝ちだな。」と言って、二人で笑っていました。笑い事ではなく激アツ・圧巻のステージ。マーク・ノップラー、エルトン・ジョンの姿も見えます。

★The Prince's Trust Rock Gala 1987
ジョージとクラプトン。目を合わせながらギターで会話している二人の姿を見ていると泣けてきます。ジョージが頻繁にマイクを直す姿を見て、ビートルズ日本公演の時にポールのマイクもくるくる回っていた事を思い出し方もいるのでは。レスポールを手にしたクラプトンの立ち姿が格好良すぎ。ジェフ・リンの姿も有り。

★ B.B. King & Friends - A Blues Session 1987
B.B. とクラプトンもギターで会話をしています。ポール・バターフィールドがハープで参加。渋っ。


⑦ Phil Collins『...But Seriously』('89)

produced by Phil Collins, Hugh Padgham

躍動感と美しさが同居したこのアルバムは1990年の全米年間チャート2位にまで昇り、フィル最大のヒットアルバムとなった。私も一番良く聴いた、そして一番好きなフィルのアルバムだ。

★ Do You Remember ?
Phil Collins (vo,key,per), BISH (b-vo), Pino Palladino (b)...
シリアスな失恋ソングだがBISHのハーモニー聞こえてくると、何故かしらほのぼのとしてしまう。

★ I Wish It Would Rain Down 雨にお願い
Phil Collins (vo,ds,key), Eric Clapton (g), Pino Palladino (b) …
さすがはフィル。クラプトンを使うツボを心得ている。こういった壮大でドラマティックなバラードナンバーにおいて、クラプトンが燦めきを放つことを良く知っている。クラプトンは 演劇仕立てのMVにも出演してバンマスを演じている。


⑧ Eric Clapton『Journeyman』('89)

produced by Russ Titelman

クラプトンが単独で作った曲は1曲も無く、共作でさえ2曲のみ。「曲を書けなくなってしまったのでは?」とも囁かれた。しかし、これまでギタープレイの評価しかしてもらえなかったクラプトンが、ロックボーカリストとしての境地を切り開いたのがこのアルバム。プロデュースをつとめたラス・タイトルマンはこう語っている。「こんな事を言ったらエリックに悪いけれど、このアルバムで一緒に仕事をするまでは彼がこんなに素晴らしいオールラウンド・プレイヤーだとは知らなかった。ギタリストとしてだけではなくアレンジャー、そしてボーカリストとしてもグレイトだった。」

★ Bad Love
Eric Clapton (vo,g), Pino Palladino (b), Phil Collins (ds,b-vo) ...
クラプトンとフォリナーのギタリストであるミック・ジョーンズの共作。「しばらく遠のいていたハードなエッジが欲しかったので、ミックと曲を作ったんだ。同じギタリスト同士、気持ちも分かり合えると思ったしね。」というクラプトンの思惑通り、フックの効いたロックナンバーに仕上がっている。クリーム「Badge」に良く似たブリッジもミックの提案によるもの。フィルのドラムがリズムを引き締めハーモニーもキマッている。ピノ・パラディーノによるイントロのフレットレスベースも印象的だが、MVに映っているベーシストはネーザン・イースト。また、この曲はホンダの車、アスコットのCMに使用された。

ダリル・ホールとチャカ・カーンがバッキングボーカルで参加した「No Alibis」、ジョージ・ハリスンが楽曲提供、ギターとハーモニーで参加した「Run So Far」も話題に。

フィルの『...But Seriously』とクラプトンの『Journeyman』は1989年11月と同じタイミングに発売されて、ジャケットを並べるとこの構図。二人で示し合わせてアルバムジャケットの撮影に臨んだに違いないと睨んでいます。


⑨ Stephen Bishop『Bowling In Paris』('89)

produced by Michael Omartian, Phil Collins, Hugh Padgham, Gus Dudgeon...

フィルはアルバムの裏ジャケにこうコメントを寄せている。

皆さんもそうだと思うけれど、僕がBISH のことを知ったのは彼のデビューアルバム『Careless』を聞いたことがきっかけだった。その次の彼のアルバムを聴いて、僕はBISHのファンだ・・・という気持ちがますます強くなってきた。僕たちは共通の友人であるエリック・クラプトンとパティを通じて知り合い、素晴らしい仲間になった。BISHはラブソングを作る達人の一人だけど、僕とBISHは、BISHのことをバラードシンガーという狭い器でしか見ていないラジオ局やレコード会社が多いことに不満を感じていたんだ。そこで僕が "Bring Back BISH" キャンペーンを行うことを引き受けることにして、BISHの「Separate Lives」をレコーディング、そしてヒュー・パジャムと一緒にこのアルバムのうち4曲をプロデュースしたのさ。

★ Sleeping With Girls
BISH (vo,g), Nathan East (b), Phil Collins (ds), Brenda Russell & Randy Crawford (b-vo) …
チープなリズム・ボックスの音色、ゲート・エコーがかけられたドラミング。フィル・コリンズのアルバムに入っていてもおかしくないような曲だが、インド風の音階が現れる中間部は中期ビートルズのような雰囲気もあり。

★ Walking On Air
BISH (vo), Phil Collins (ds,b-vo) ...
明るく楽しく軽やかでチャーミングな曲。フィルはハーモニーも付けている。

★ Love At A Distance
BISH (vo), Phil Collins (ds) ...
「1 ! 2 !」 と、フィルのカウントで始まるパワフルなポップ・ナンバー。

★ Hall Light
BISH (vo,g), Sting (vo,b), Eric Clapton (g), Michael Omartian (key), Phil Collins (ds)
曲調はスティング風。そのスティングがハーモニーを付けベースを弾く。クラプトンがソロをとり、フィル・コリンズがリズムを刻む。「僕のことは無視して 3人で楽しそうにやってたよ」とは BISH だが、これだけのイギリス大物ミュージシャン達に囲まれたアメリカのソングライターというのもBISHくらいではなかろうか。クラプトンのソロはチョーキングとビブラートだけで聴かせてしまうという悶絶もの。数多くのクラプトン参加曲の中でも、このソロは指折り数える中に入ると思った。ちなみにこの曲は、クラプトンが制作中だった1984年の『Behind The Sun』と同時期に行われたセッションを録音したもののようだ。


古くからのクラプトン、BISHファンからはフィルがプロデュースをすると装飾過多になってしまい本来の持ち味が消えてしまうという意見が多かったようだ。でも私は、二人の体内に隠れていてそれまで表現し切れていなかった部分を掬い取り、それをパワーアップさせたという点に関して言えばフィルの力量はかなりのものだったのではないかと思った。また、クラプトン、BISHに復活のきっかけを与えたのはフィルであることに間違いないとも思った。


ちょっと横道。
フィルの『...But Seriously』収録曲「Another Day in Paradise」「That's Just the Way It Is」にハーモニーで参加していたデヴィッド・クロスビー。一聴してそれとわかる深みのある歌声は貫禄十分だった。

デヴィッド・クロスビーが1993年にリリースした『Thousand Roads』には、フィルとクロスビーの共作「Hero」にフィルがドラム、キーボード、バッキングボーカルで参加しプロデューサーをつとめ、さらにはMVにも出演している。また、BISHが「Natalie」を曲提供しハーモニーを付けている。


⑩ Stephen Bishop『Romance In Rio』(2007)

produced by Oscar Castro-Neves, Peter Bunetta, Jim Brandmeier

『SAUDADE』というタイトルでリリースされたものと同内容。既存の曲をブラジル風にアレンジして作られたアルバムだが、ただの焼き直しと言うなかれ。実に良く練られていて心地良し。

★ Save It For A Rainy Day
BISH(vo,g), Eric Clapton (g), Don Grusin (key) …
BISHとクラプトン。まだまだ交友が続いていたんだなとほっこり。曲を聴いてもほっこり。クラプトン2001年リリースの『Reptile』タイトル曲と良く似た雰囲気有り。


と、ここまで書いて締めようと思っていたら、BISHが次のアルバムで自身の音楽キャリアの幕を閉じると発表した・・・というニュースが飛び込んできました。

昨年の11月に次の記事を読んで「そろそろニューアルバムが出るのかな?」と喜んでいたのですが、そういう結末になってしまったのですか。

豪華なゲスト陣の中にフィルの名前が無いのは、フィルも次のような理由で引退を表明していたのですね。調べて初めて知りました。

BISHとフィルは同じ1951年生まれで今年満74歳。クラプトンは満80歳で、今年も日本にやってきてくれたのだからら、二人だってまだまだと期待したいところですが、そう決めた気持ちは尊重したいと思います。

『THIMK』の発売日8月15日を楽しみに待ちましょう。そして、それを手にしたら、BISHのミュージシャンシップを称えながら、BISHからのラブレターをじっくりと受け止めたいと考えているところです。


最後までご覧いただきありがとうございました。

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