『寄り道の哲学者』
『寄り道の哲学者』
「Amazonの広告は、なぜ私の仕事を知ってはりますのやろ」
朝から書斎にこもり、机に向かいます。
お気に入りの紅茶を淹れ、窓を少し開け、背筋を整えます。
今日は書く。
今日は脱線しない。
今日は原稿を仕上げる。
その決意だけは、毎朝たいそう立派どす。
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脚本家という仕事は、不思議なものです。
何もないところから人物を生み出し、その人物に人生を与え、その人生を二時間ほどにまとめる。
そのためには、人間を知らなければなりません。
人の心。
暮らし。
時代。
道具。
何気ない癖。
すべてが取材です。
そやから私は時々Facebookを開きます。
もちろん遊びではありません。
世の中の空気を感じるため。
人間を観察するため。
創作の種を拾うため。
……そう、自分には説明しております(笑)。
人間というものは、他人を納得させるより先に、自分を納得させる術に長けているようどす。
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すると現れるのです。
Amazonの広告。
しかも実に礼儀正しい。
「買ってくださ〜い」
「安い安〜い」
どこかの名物社長のような言い回しw
とは言いません。
「今日はこんなものがございます。」
と、老舗の呉服屋さんのような顔をして現れます。
その日も目に飛び込んできたのは、アウトドア用品。
「これは何やろ?」
ほんの数秒のつもりでした。
ところが説明を読む。
レビューを読む。
他の商品と比べる。
動画を見る。
「なるほど、こんな使い方もあるのやね〜」
ここまでは、まだ引き返せます。
ところがAmazonという役者は、一人では舞台を降りませんねん。
「こちらもご覧になりますか?」
「これをご購入された方はこちらも…見てはりますよ〜」
絶妙な間で、次々と相手役を登場させます。
まるで名演出家どすわ。
気がつけば私は…
何やわからへん収納袋から登山用品へ。
登山用品から防災用品へ。
防災用品からロープワークへ。
ロープワークから結び方へ。
結び方から江戸時代の飛脚へ。
何でやねん!w
飛脚から街道文化へ。
東海道好きやから…仕方おへんw
街道から旅人へ。
弥次喜多道中どすw
旅人から松尾芭蕉へ。
あらら…文学へ入ってきました!
そして最後には、
「この本、面白そう。」
と、一冊注文している。📕
最初に見ていた収納袋は、もう舞台袖にもおりません(笑)。
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実は、これはAmazonだけの話ではありません。
図書館でもそうです。
一冊だけ借りるつもりが、気づけば五冊。📚
ホームセンターでは、釘を買いに行っただけやのに、防水塗料の性能について妙に詳しくなって帰ってくる。
Wikipediaでは、一人の人物を調べていたはずが、その師匠、その弟子、その時代背景まで読み終えている。
YouTubeに至っては、帰って来られる保証すらありまへん(笑)。
どうやら私は、目的地へ向かうより、途中の景色を見て歩くほうが性に合っているようどす。
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演出という仕事をしておりますと、つい考えてしまいます。
なぜ人は寄り道をするのでしょう。
目的を忘れたからでしょうか。
いえ、そうではありません。
人は目的を忘れたのではなく、
目的より面白いものに出会ってしまっただけなのです。
好奇心とは、真っ直ぐ歩かない心。
それは欠点のようにも見えます。
けれど私は、それだけではないと思うのです。
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人類の歴史を振り返っても、多くの発見は寄り道から生まれています。
思いがけない失敗。
偶然の出会い。
「つい、やってみた。」
そんなことが、新しい知恵を生んできました。
寄り道は、無駄のようでいて、文明を育ててもきました。
そやから私は、寄り道そのものを悪いとは思いません。
むしろ、創作とは寄り道を作品へと変える仕事なのだと思っています。
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ただ一つだけ問題があります。
私の寄り道は、
壮大な哲学へ向かったように見えて、
最後には必ず、
「これ、便利そうやな。」
で終わることです(笑)。
人類の知恵。
文明の発達。
創造性。
好奇心。
そんな立派なことを考えていたはずやのに……
気がつけば、
収納袋の素材や縫製について真剣に比較している。
…書いてて思うのですが、何で収納袋なんやろ?(笑)
そして、
「これは資料や!」
と自分に言い聞かせる。
ええ。
半分はほんまです。
でも、もう半分は……
単に面白がっているだけなのでしょう(笑)。
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昔、哲学者パスカルは、人は静かに一人で部屋にいることが苦手なのだという意味の言葉を残しました。
数百年経った今、その部屋にあるものが本からスマホに変わっただけで、人間の心はあまり変わっていないのかもしれません。
誘惑は、外からやって来るのではありません。
「知りたい❗️」
その小さな火種が心の中にあるからこそ、誘惑は魅力的に見えるのでしょう。
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さて。
こうして今日も一本の文章を書き終えました。
そやけどね…
この文章を書こうと思ったきっかけは、Amazonの広告どすぇ。
考えてみれば、仕事の邪魔をしたはずの広告が、結局は一つの作品を生んでくれました。
そう思えば……
これも仕事やった、と言いたいところですが……
そうやって自分を甘やかすから、また明日も同じことを繰り返すのでしょうね(笑)。
Amazonは何も悪うありません。
悪いのは、
「これは創作の資料どす。」
と言いながら、誰よりも目を輝かせて広告を開いている私なのでございます。
そして明日の朝もきっと、
「今日は絶対に脱線せえへん!」
そう固く決意して書斎に座るのでしょう。
……その決意だけは、毎朝ほんまに立派どす(笑)。
そやけど…
一本 脚本書けそうどすえ❣️👍
ちゃんと…
仕事してますやん………私。
この文章書きながら聴いていたのが
この歌♪
【黄昏のビギン】
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