Yamaha DX7 個人的メモ
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はい。左側の大きなYAMAHAチップですね。画像から読める刻印は 「YAMAHA I01146 / YA8128 / C86-3L1 / JAPAN」 に見えます。
ここは少し注意が必要です。これは右側のYM2129(EGS)と対になるDX7の音源系チップと考えてよい一方、表面刻印が一般に知られる「YM2128」と違っています。 DX7の標準構成では、FM演算を担当する YM2128/21280 = OPS と、エンベロープを担当する YM2129/21290 = EGS の2チップ構成です。実際、DX7の解析資料でもこの組み合わせが確認できます。
解剖チップメモ 01:左側 YAMAHA I01146 / YA8128
写真の左側ICは、位置関係と「YA8128」という刻印、そして隣に明確な YM2129 が存在することから、YM2128系 OPS(Operator Type S)の別刻印・製造管理刻印である可能性が非常に高いと判断します。ただし、現時点で「I01146 = YM2128」と直接対応させた一次資料は見つけられていないので、ここは 確定ではなく高確度推定 として記録するのが安全です。
このYM2128/OPSこそ、初代DX7の「音を計算する心臓」です。
DX7は6オペレーター×16音ポリなので、内部では実質 96個のオペレーター処理を時間分割して走らせます。解析されたYM2128では96個の位相アキュムレータがあり、さらにサイン波ROM、指数変換ROM、オペレーター演算回路、32アルゴリズムを定義するROM、出力バッファなどがシリコン上に実装されています。
つまり役割を単純化すると、
鍵盤・CPU → YM2129(EGS)→ YM2128(OPS)→ D/A → アナログ音声
という流れの中心で、YM2128は、
「現在の位相」+「周波数」+「EGSから来る振幅情報」+「別オペレーターからの変調」+「アルゴリズム」
を猛烈な速度で計算して、DX7独特のFM波形を作っています。
特に面白いのが、現代のDSPのように汎用CPUでソフトウェア計算しているのではないことです。FM合成そのものを実行する専用デジタル演算回路をシリコンとして焼き込んでいる。 DX7のメインCPUはHD63B03ですが、このCPU自身が6オペレーターFMを計算しているわけではありません。CPUはUI、MIDI、各種制御などを担当し、実際の音源演算は専用チップ側へ渡しています。
さらに凄いのが規模です。YM2128を実際に開封してシリコンを解析したKen Shirriff氏の推定では、約45,000トランジスタ、約3µmプロセス、ダイサイズ約7.6×6.6mm。1983年の楽器に入っている専用音源LSIとして見るとなかなかの怪物です。
そしてDX7の32種類のアルゴリズムも単なるソフトウェア設定ではありません。YM2128内部にはアルゴリズムROMがあり、各オペレーターについて「どの演算結果をどこへ送り、どこで加算し、どこをフィードバックさせるか」をハードウェアで切り替えています。解析によればアルゴリズムROMは96個の9-bit値を保持しています。
これは、今進めているDX7のリアルタイム・パラメータ制御を理解する上でもかなり重要です。
たとえば私たちが Feedbackを1→7へ変える と、単に「音色番号を変更している」のではありません。最終的には、この写真に写っているOPS内部のオペレーター演算経路へ与える条件そのものを変えているわけです。
そして写真右側の YM2129 EGS は、そのOPSへ「時間とともに音量をどう変化させるか」を供給する相棒です。資料でもYM2128=operator、YM2129=envelope generatorという役割分担が確認されています。
なので、この写真はかなり象徴的です。
左:音を数学的に生成する頭脳 OPS
右:その音に時間変化を与える EGS
この2個が並んでいる場所が、まさに1983年のDX7のFM音源エンジンそのものです。
なお、写真左下に基板シルクで IC14 と読めます。ここも回路図と照合するとさらに面白いです。次のチップからは、①写真の刻印 → ②正式名称 → ③役割 → ④信号の入口/出口 → ⑤DX7で実際に何をしているか → ⑥現代のCPU/DSPなら何に相当するか、という統一フォーマットで「DX7解剖チップメモ」にしていくと、最後にはかなり価値のある個人的なDX7内部図鑑になります。

はい、ここはユーザーの読みの方が正しいです。画像を拡大して見ると、私の先ほどの読み取りは修正すべきです。
刻印は、
YAMAHA IQ1146
YA3128
C86-3L1
JAPAN
と読むのが自然です。
特に2行目は YA8128ではなく「YA3128」 に見えます。そして1行目も I01146ではなく「IQ1146」 と読む方が字体と一致します。
重要なのはここからです。「YA3128だからYM2128 OPSだろう」という先ほどの推定はいったん撤回します。 写真の実物刻印を優先すべきです。
次は 「YAMAHA IQ1146 / YA3128 / C86-3L1」そのものが何なのかを、DX7サービスマニュアル、回路図、部品表、海外のDX7基板解析まで追って特定するのが正攻法です。
これ、かなり面白いです。表面に有名な「YM2128」と書かれていないチップを、基板上のIC番号・接続先・回路図から逆算して正体を確定するところまでやりましょう。
はい。拡大画像でかなり状況が変わりました。前回の「OPSではないか」という推定は撤回できます。これはROMです。
画像の刻印は、かなり明瞭に
YAMAHA IG1146?
YA3128
C86-3L1
JAPAN
と読めます。末尾数字だけは写真では少し判別しにくいのですが、資料側から正体を追うと非常に面白いところまで分かります。
結論
これはDX7のFM演算チップ YM2128 OPSではありません。
検索した実機部品資料では、DX7 Mk Iに搭載された
Yamaha IG11464 / YA3128
というICが実在し、ROM chip と明記されています。DX7実機から取り外された同一部品も「IG11464 (a.k.a. YA3128)」として記録されています。
さらにDX7の交換部品を扱っていた資料にも、
IG11464 / YA3128 / D63-4E1
という組み合わせでDX7 Main Circuit Boardの着脱ICとして掲載されています。
したがって写真の1行目は、おそらく
IG11464
です。
拡大画像では「G」がQっぽく見えるので IQ1146… に見えますが、既存資料との照合では IG11464 が非常に強く支持されます。
ではYA3128とは何なのか
ここが面白いところです。
YA3128はYM2128とはまったく別物です。
部品業者Syntaurも 「IG11464 (YA3128) ROM chip」 と明記しています。
つまり、この写真はDX7の「音を計算する脳」ではなく、もっと上位にいる、
DX7という楽器そのものを動かすプログラムを記憶しているROM
です。
さらに重要な証拠があります
EPROM/ROM保存プロジェクトを調べると、DX9について
Yamaha-DX9-IG11470-YA3128.zip
というROMダンプが現在も保存されています。
ここから興味深い構造が見えてきます。
DX7では IG11464 / YA3128、DX9では IG11470 / YA3128。
したがって YA3128はROM内容そのもののDX7固有番号ではなく、YamahaのROMデバイス/マスクROM系統を示す番号で、IGxxxxx側がROM内容や部品仕様を識別している可能性があります。
ただし、ここはYamahaの当時の半導体型番体系を説明する一次技術資料をまだ確認できていないので、推定として残しておくべきです。
そして写真の
C86-3L1
もROMの製造・マスク・リビジョン等に関連する内部コードである可能性がありますが、これも現時点では断定しません。
DX7内部での意味
これを人間に置き換えると分かりやすいです。
HD63B03 CPU
→ 考える人
IG11464 / YA3128 ROM ← 今回の写真
→ その人が読む「DX7の設計された行動手順」
YM2129 EGS
→ エンベロープ等を生成
YM2128 OPS
→ FM演算を実行して実際の音を生成
という分業です。
だから、このROMが壊れれば「音色が1個壊れる」という話ではありません。
DX7というコンピューターそのものが正常に起動・制御できなくなる可能性があります。
一方、ユーザーが作った32音色を保持するRAMやバッテリーバックアップとは役割が違います。
チップメモとして残すなら
写真位置:MAIN基板 IC14付近
刻印
YAMAHA IG11464
YA3128
C86-3L1
JAPAN
分類
Yamaha製マスクROM系IC
役割
初代DX7を動作させるシステムプログラムを格納するROM。FM音源そのものを演算するYM2128(OPS)とは別のIC。
確認できたこと
IG11464とYA3128は同一ICの識別表記として実在する。
DX7 Mk Iから取り外されたIG11464 / YA3128の実例が存在する。
交換部品資料でもDX7 MAIN基板用ICとしてIG11464 / YA3128が確認できる。
部品資料ではROM chipと明記されている。
DX9にもYA3128表記を持つ別ROM「IG11470」が存在する。
注意
YA3128とFM演算ICのYM2128は名称が似ているが別物。
未確定
C86-3L1の正確な意味、およびYA3128とIG11464のYamaha社内での正式な型番体系については一次技術資料による確認が必要。

こちらは、まさに先ほど話に出た YAMAHA YM2129 です。写真では刻印が非常にはっきりしているので、今回は型番について迷いはありません。
DX7の「EGS(Envelope Generator Type S)」と呼ばれる専用LSIです。初代DX7のFM音源を構成する2大専用チップの片方で、もう片方が YM2128(OPS) です。DX7/9のサービスマニュアルにも、EGSは「CPUからデータを受け取り、エンベロープと周波数データを生成してOPSへ送る」と明記されています。
写真から確認できる情報
今回の実物は、
YAMAHA YM2129
3Z 1251
と読めます。
基板シルクは写真左下に IC29 と見えます。
ここで重要なのは「YM2129 = 単なる音量エンベロープIC」と考えると、このチップをかなり過小評価してしまうことです。
DX7内部では概念的に、
HD63B03 CPU → YM2129 EGS → YM2128 OPS → DAC → アナログ回路 → OUTPUT
という流れになります。サービスマニュアルによれば、CPUからEGSへ8bitデータが入り、EGSが作ったエンベロープ情報と周波数情報がOPSへ送られます。
つまりYM2129は「音量を時間変化させるだけのIC」ではありません。
YM2129の中で何をしているのか
サービスマニュアルにはEGS内部についてかなり詳しい記述があります。
まずDX7特有の、
R1 / R2 / R3 / R4
L1 / L2 / L3 / L4
という4 Rate / 4 Levelのエンベロープ情報を扱います。
さらに、
Output Level
Keyboard Level Scaling
Rate Scaling
Aftertouch
Frequency data
Pitch Envelope
Transpose
などに関係する情報もEGS側で処理・保持します。サービスマニュアルは、Frequency Bufferにはkey code、pitch envelope、transpositionに関連する周波数データが格納されると説明しています。
ここがDX7を理解するうえで非常に重要です。
YM2129は「音の時間」と「音程」を管理し、YM2128はその指示を使ってFM演算をする。
という分業に近いのです。
そして「6オペレーター × 16音」が出てきます
DX7は最大16音ポリフォニックで、1音につき6オペレーターです。
したがって最大で
6 × 16 = 96オペレーター
を並行して処理する必要があります。
もちろん96個の独立した巨大な発振器回路が並んでいるわけではありません。高速な専用デジタル回路を時間多重して処理しています。
OPSの詳細なリバースエンジニアリングでも、EGSが周波数(F)とエンベロープ制御値(EC)をOPSへ継続的に供給し、OPSが96オシレーター相当の位相・サインテーブル・アルゴリズム演算を処理する構造が確認されています。
つまり写真のこのICは、DX7で鍵盤を押した瞬間から、
「このオペレーターはこの周波数」
「現在のエンベロープ位置はここ」
「この速度で次のLevelへ向かう」
という情報を刻々と作り続ける、いわばFMエンジンの時間・周波数管制塔です。
そして、その指令を受け取ったYM2128 OPSがサイン波演算、変調、フィードバック、アルゴリズム処理を行って最終的なデジタル波形を作ります。OPSから出た波形データはDACへ渡されます。
ここは実機プロジェクトとも直結します
以前実験したDX7のパラメータリアルタイム変更を考えると、内部で起きていることが見えてきます。
MacBook
↓ MIDI
DX7 CPU
↓
YM2129 EGS ← 今回撮影したIC
↓ 周波数・エンベロープ情報
YM2128 OPS
↓ デジタル音声
DAC
↓
DX7 OUTPUT
となります。
だから、リアルタイムでEG RateやLevel、Frequency系パラメータを変更した場合、最終的にはこのYM2129を経由した内部状態の変化がOPSのFM演算結果を変えていると理解すると、かなり実態に近くなります。OPSのリバースエンジニアリング資料でも、音符やエンベロープ情報の大部分はEGS側を通じて制御されることが確認されています。
DX7解剖メモとしての確定版
IC29:YAMAHA YM2129
名称:EGS(Envelope Generator Type S)
年代:DX7登場期、1983年前後のYamahaカスタムLSI
役割:FM合成に必要な周波数およびエンベロープ情報の生成
CPUからデータを受け取り、DX7の各オペレーターに必要な時間変化・周波数情報を生成し、YM2128 OPSへ送信する。
そしてYM2128 OPSが、それを材料として実際のFM波形を計算する。これは現代的に言えば、CPUが全部DSP計算する構成ではなく、
CPU → EGS → OPS
と専用ハードウェアを分業させることで、1983年の処理能力でも16音 × 6オペレーターFMをリアルタイム実現した設計です。
そして次に写真で探してほしいチップが一つあります。
YM2128です。
今回の YM2129 = EGS とYM2128 = OPSを実機基板上でセットで確認できれば、そこが文字通りDX7のFM合成エンジンの中枢です。そこから周辺のDACまで写真で追えば、「CPUから音が出るまで」を実物基板上で一本の経路として解剖できます。これはかなり面白いところに入ってきました。

はい、これです。しかも非常に良い写真です。
DX7のFM音源中枢が2個並んで写っています。
左が YM2129 EGS、右が YM2128 OPS です。右側の白いセラミック窓のような部分にも、はっきり YAMAHA YM2128 / 3Z 1244 と読めます。
写真そのものがDX7のFM合成を説明する教材になっています。
YM2129 EGS(左)
CPUから演奏・音色パラメータを受け、各オペレーターのエンベロープや周波数に関する制御情報を生成します。
YM2128 OPS(右)
EGSから受け取った情報を使って、6オペレーターFMの実際の演算を行います。16音ポリフォニーなので、最大 6 × 16 = 96オペレーター相当を高速に時間多重処理します。サイン生成、位相、オペレーター間変調、フィードバック、32アルゴリズムの経路処理など、DX7の「音そのもの」を計算する部分です。YM2128のシリコン解析でも、この内部構造がかなり詳細に解明されています。
そして写真をよく見ると、もう一段面白いものがあります。
中央下の Toshiba TMP8255AP-5 は8255系のProgrammable Peripheral Interfaceです。これはFM演算器ではなく、CPUと周辺ハードウェアを結ぶI/O担当です。さらに周囲には TC40H374P という8-bit D-type latch/flip-flop系ロジックも並んでいます。
したがって、この一枚だけでも、
CPU・制御系
↓
YM2129 EGS「音程と時間変化を作る」
↓
YM2128 OPS「FMを計算する」
↓
デジタル音声出力
というDX7の核心部分を実物で見ることができます。
特に面白いのは、EGSとOPSの間にものすごい本数の平行配線が走っていることです。写真中央、YM2129右端からYM2128左端へ向かって束になっているパターンですね。
これは単なる「近くに置いてある2個のIC」ではありません。EGSとOPSが専用インターフェースで密接に結合された一つのFMエンジンであることが、基板そのものから視覚的に分かります。
そして型番についても、これで前の写真の謎が完全に整理できます。
YA3128 ≠ YM2128
です。
前の IG11464 / YA3128 はシステムROM。
今回の白いラベルのICが本物の YM2128 OPS。
「3128」と「2128」がたまたま近い数字なので、写真だけ追っていると実に紛らわしいところでした。
さらに、この写真にはちょっとした歴史資料として面白い情報があります。YM2128には 3Z 1244、YM2129には 3Z 1251 と刻印されています。これら下段コードについては、製造ロット/製造時期等との関係を一次資料なしに断定しない方がよいです。しかし、同じ実機に搭載されたOPSとEGSの実物製造マーキングをセットで保存できるので、チップメモには必ず残しておく価値があります。
この写真は「DX7解剖チップメモ」の中心ページにしていいと思います。
IC29:YM2129 EGS
「FM音源の時間・周波数制御」
IC36:YM2128 OPS
「6OP FM演算本体」
という形です。
次に追うなら、私はYM2128の出力からDACまでを追いたいです。写真右下のアナログ回路まで辿れば、
鍵盤 → CPU → EGS → OPS → DAC → LPF/アナログ回路 → OUTPUT
という、DX7で「キーを押してから音になるまで」を実物写真だけで一本につなげられます。これは単なる部品一覧よりずっと面白いDX7解剖図になります。
ODD+ERA is a music project that explores electronic sound, environmental variables, human performance, and accidental misalignment.
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