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【第58話】美国漁港海岸緑地広場──影が動く広場

北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々

静かに続いていく──
旅の空気と、光と温度で紡ぐ日々の記録。

【第58話/影が動く広場】

美国漁港──青の張り替え

言葉になる前の潮の匂い。
青だけが先に、窓の外で張り直される。


昨晩お世話になったのは「美国漁港海岸緑地広場」。6時51分に起き上がる。

窓の向こうは抜ける青。海側から入る光が、車内の角を静かに押してくる。
温度計は車内26.3℃、外気25.4℃。数字ほど重くなくて、空気にまだ薄い冷たさが混ざっている。

みゅうちゃんの朝ご飯を器に落とすと、足音が小さく近づく。
外は快晴。爽やかで、ひんやりした分だけ肌が目を覚ます。

テントはフルメッシュにして、タープは元の高さへ。影の輪郭を整える。
コーヒーを淹れ、トーストと豆乳ゼリーを並べる。湯気はすぐ薄くなり、代わりに海の匂いが残る。

美国漁港海岸緑地広場ほ朝は見事な快晴

朝のルーティンを一通り終えたら、YouTubeを流す。
スマホにLINEが入る。大島さんの奥さん、まあちゃんから。「小樽築港公園」からこっちへ向かっている、という短い連絡。
ノートPCを開いて少し作業して、10時にはタープ下へ移る。


タープの下──風の角度

昼どきは車に戻ってパスタ。
「ウニの塩漬け」をそのまま使う。皿の上で塩気が先に立って、そのあとに海の濃さが追いかけてくる。
前に混ぜた「たらこ」のパスタソースのことが頭をよぎる。あれはあれで、別の輪郭ができていた。

12時を回ったころ、赤い車体が広場に入ってくる。
大島さんの赤クレア。エンジン音が止まると、急に周囲が広くなる。
外で少し話して、その流れのまま設営へ。

大島さんが来場

13時48分、シェードが立ち上がる。
「ダークルーム」の「パーティーシェード」。買ってから一度も使っていなかったらしく、布の折り目がまだ新しいまま。
影の形が一つ増えると、居場所も増える。

14時46分、焚き火用に一応準備をしておく。
昼を過ぎると、新しい来場者がテントを張りはじめる。色の違う布が並び、広場の地図が少しずつ描き変わる。

テントやタープが増えてきました

網戸の切り替え──冷えた車内

15時半ぐらい、いったん車へ。
冷房をOFFにして、網戸とマックスファンへ切り替える。車内が冷えすぎていて、腕に触れる空気が妙に硬い。

ノートPCでメルマガを作り、そのまま予約まで終える。
キーボードを叩く音だけが続いて、外の風の気配が遠くなる。

晩ご飯は白菜と、解凍していた味付きの鶏肉。
炒める音がフライパンの底で弾けて、残っていたミニトマトを二つだけ足す。
食べ終えたら炊事場でフライパンを洗う。水は冷たく、指先がすぐに目を覚ます。

本日の晩ご飯

影の逃げ場──ホルモンの火

17時47分。太陽が傾いて、タープの影が思ったより短い。
影が届かない場所が増えていくので、テントが伸ばした影に移動する。

大島さんのほうから、何かを焼く匂いが流れてくる。
18時10分、手元にホルモンが来る。網の上で脂が落ちて、火が小さく跳ねる。
車に戻って「角ハイボール」を一本持ってくる。戻るとホルモンが少し増えている。

角ハイボールとホルモン

18時15分、テーブルとチェアを大島さんのところへ移す。
シェードの隣にはテントが一つ。長野県から来たバイク旅の松村さんが、そこから混ざる。
言葉は多くなくても、火の前は埋まっていく。

19時5分、トイレの帰りに空を見上げる。
夕焼けが少しだけ残って、広場の輪郭がやわらかくなる。戻ると、そこがそのまま宴会場になっている。

本日の宴会場

21時15分。満月一歩手前の月が、海側の暗さを薄く押し広げる。
真上には星がいくつも出ていて、数えようとすると目が追いつかない。

21時38分、松村さんは朝が早いと言って、先に引く。
片付けの音が静かに続き、最後にそれぞれが自分の影へ戻っていく。

夜は半袖だと少し足りなくて、薄手のパーカーを羽織る。
明日は快晴の予報。最高気温は24℃。
数字だけが、先に置かれていく。

宴会はおひらきに、我が家(キャンピングカー)へ

あとがき

「美国漁港海岸緑地広場」は、同じ場所にいても、影の形と匂いで別の一日になる。
朝は青が強くて、タープの布が光を受け止めた。昼は赤クレアが入ってきて、広場の空気が少し組み替わった。

まあちゃんの短いLINEが、道の先を一瞬だけ具体的にした。
「小樽築港公園」からここへ、という線が頭の中に引かれて、その線の終点が赤い車体で現れた。

ホルモンの火は、小さな音を立てながら、会話の間を埋めていった。
松村さんのバイク旅は、ヘルメットの置き場所と、早起きの一言だけでそこにあった。

月は満ちきらず、星は多すぎる。
パーカーの薄さと、洗い場の水の冷たさと、タープの影が短くなっていった時間。
今日という日が、広場の上に一枚、重なっただけ。


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