【第67話】暑寒海浜キャンプ場──曇りの充電、雨の余白
北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々
静かに続いていく──
旅の空気と、光と温度で紡ぐ日々の記録。
【第67話/曇りの充電、雨の余白】
白い天井──窓の北だけ青
曇りは明るいのに、影がはっきりしない。
数字と空気が、同じ速度でゆっくり動く。
昨晩も増毛町の「暑寒海浜キャンプ場」にお世話になった。
6時29分。窓の外は曇りで、光が薄く広がっている。北の空だけ、青がちょっと残っていた。
温度計は車内29.9℃。外気も29℃台で、起きた瞬間から肌にまとわりつく。
みゅうちゃんの朝ご飯を先に出す。器が鳴って、みゅうちゃんは黙って食べ始める。
外へ顔を向けると、空気がもうモワッとしている。風はある。だからタープは低いままにしておく。

コーヒーを淹れる。トーストとゆで卵、正さんにもらったヨーグルト。
白いヨーグルトがスプーンに重く乗って、口に入れるとすっとほどける。
100〜600w──消費と充電の往復
YouTubeを流しながら、車内の熱がじわじわ上がってくる。冷房(家庭用エアコン)をON。
曇り空の下でソーラーは気まぐれで、数字が100〜600wを行ったり来たりする。
冷房を回すと、充電が伸びる感じがしない。温度が落ちたらOFFにして、できるだけサブバッテリーへ回す。
明日は一日雨の予報。その一言が、スイッチの上に乗っている。
アブが増えてきた。しかも大きい。音が太くて、近づくと分かる。

11時を過ぎてトイレから戻ると、正さんも外に出ていた。正さんのキャンピングカーはルーフにファンがなくて、車内を冷やすためにエンジンをかけ、車両のクーラーを回している。
熱を持った車の周りを、アブが寄ってくる。ひときわ大きいのが、うちのフロントガラスに止まった。
次の瞬間、正さんのハエ叩きが軽く振られて、空気が一回だけはじけた。

うまかちゃん──湯気の控えめな輪郭
12時58分。昼は「うまかちゃん」。暑いのにラーメン、と頭のどこかで思いながら、湯気がいつもより短く立つのを見ている。

食べ終えて動画を眺めていると、眠気が落ちてきて、そのままベッドへ滑り込む。
目が覚めたのは16時前。真上にみゅうちゃんの顔がある。近すぎて、ひげの一本一本が見える。

起き上がってノートPCを開き、お客さんへのメルマガを作って予約を完了させる。指先だけが働いて、車内は静か。
タープの鼓動──雨音のリズム
16時36分。外へ出ると、雨が通ったあとの温度が残っていた。湿度は高いのに、肌に当たる風がさっきまでと違う。
チェアを持ってタープ下へ。地面は濡れていない。昼過ぎにも雨は降ったのに、ここだけ乾いたままだ。
ぽつぽつ、と来る。布が小さく鳴る。
止むまでこのまま、と腰を落ち着けたところで、雨脚が太くなる。
17時。雨が一気に強くなる。風もある。
でもタープを低くしていたおかげで、座っている場所まで雨は入り込まない。雨音が布に散って、一定のリズムを作る。
数字のことも、スイッチのことも、いったん遠のく。

17時30分を過ぎて小雨になる。チェアを抱えて車内へ戻る。
ジンギスカン──缶が開く音
17時51分。晩ご飯はジンギスカン。サッポロクラシックも並べる。
外はまだ湿っているのに、体感は軽い。冷房はOFFのままでいける。

曇りで暑い日。うちにとって一番やりにくい。
冷房(家庭用エアコン)を使わなければサブバッテリーは満充電へ向かうのに、冷房を回すと消費と充電が行ったり来たりして、残量は微増程度で落ち着く。
こういう日が続くと、じわじわ減っていく。
明日は一日雨の予報。最高気温は27℃。
今日より少しだけ低い数字が、窓の外の湿った白さと並んでいる。
あとがき
曇り空は、明るいのに影が濃くならない。ソーラーの数字が揺れるたびに、天気が見えない手でサブバッテリーを撫でているみたいだった。
冷房(家庭用エアコン)をONにした瞬間の、空気が切り替わる感じ。OFFにしたあとの、じわっと戻る温度。その往復が、そのまま一日の骨格になっていた。
正さんのハエ叩きが空気を割ったことも、みゅうちゃんが目覚ましみたいに顔を近づけたことも、雨がタープを鳴らしたことも、同じ距離で並んでいる。
メルマガを書いて、予約を確定して、鍋の気配が車内に溜まり、缶が開く。
旅の中の作業と食事が、生活の手順として淡々と混ざっていく。
暑寒海浜キャンプ場のタープ下は、雨が降っても小さく乾いたままで、そこが一枚ぶんの部屋になった。
外は濡れて、車内は少し涼しくなって、みゅうちゃんの器は空になる。
今日がここにあった、という手触りだけが残る。

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