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【第19話】湯の沢四日目──灰色の空が、今日のリズムをゆっくり整えていく

北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々

静かに始まり、北へ続いていく──
自作キャンピングカーと共に過ごす、風と自由の旅の記録。

【第19話/曇り空の下でほどける時間と、旅立ち前夜の静けさ】

湯の沢四日目──灰色の空が、今日のリズムをゆっくり整えていく

雲が低く垂れこめる朝。
光の色が変わるだけで、時間の流れまで変わって見える。
そんな一日の中で、心は少し緩んで、少し整う。
明日、湯の沢を発つ前に訪れた“静かな節目”のような日だった。


朝8時7分。薄い光に包まれた車内で目を覚ます。
窓の向こうは、やはり曇り。
青空の朝とは違う、少し湿り気を帯びた静かな空気が満ちていた。
温度計は18.1℃。肌に触れる空気はひんやりしていて、
思わず肩をすくめたくなるような優しい冷たさだった。

まずは、みゅうちゃんの朝ごはん。
器に向かって小さく鳴く声が、
いつもの朝の始まりをそっと整えてくれる。

外を見ると、今にも雨が降りそうな雲の厚み。
タープは夜露に濡れていないようで、
撤収のタイミングとしてはちょうどいい。

車内でコーヒーを淹れ、トーストと豆乳ゼリー、ゆで卵の朝ごはん。
曇り空の下で食べる朝食はどこか落ち着いていて、
光の強い朝とは違う味わいがあった。

湯の沢水辺公園の朝は曇り空

朝のルーティンを終え、YouTubeを少し見てから外へ出る。
その瞬間、小さな雨粒が肩に落ちてきた。
「まずいな」と思いながら急いで作業に取りかかる。
焚き火台とテーブルを収納し、最後にタープを畳む。

9時57分。作業が終わるころには雨も止み、
空は再び曇りの色へと戻っていた。
助手席のみゅうちゃんは、その様子を真剣な顔で見つめていた。

後片付けを見ているみゅうちゃん

12時。お昼をどうしようかと考えていたところへ、
米田さんが「キムチ」を差し入れてくれた。
今日のお昼は、久しぶりの“卵かけご飯”。
そこに納豆、そしていただいたキムチを添えると、
車内いっぱいにふわりと良い香りが広がった。

外は曇り空で落ち着かない天気だったけれど、
薄い灯りの車内で食べる温かいご飯は、
静かな部屋の中にゆっくり満ちていくようなやさしい温もりがあった。

本日のお昼ご飯

外の天気は不安定で、雨が降ったかと思えば日が差し、また曇る。
空の揺らぎが、そのまま一日の気配になっていく。


15時25分。少し甘いものが欲しくなり、
キットカットと「あゆかちゃんクッキー」をつまみにビールを開けた。
曇りの光に照らされたクッキーの素朴な色が、
やけに美味しそうに見えるのが不思議だった。

ABEMAで格闘技を見ていると、エントランスのドアを軽く叩く音。
誰だろうと思って外へ出ると──伊豆の正さんだった。
今日北海道に入ったばかりで、その足で湯の沢まで来てくれたらしい。
福岡の私の家に遊びに来てくれた1月以来の再会。
曇り空の午後が急に明るくなった気がした。

伊豆の正さん

16時54分。トイレに行く途中、
米田さんが猫ちゃんと散歩をしていた。
その姿があまりに微笑ましく、つい笑みがこぼれる。

みゅうちゃんも車内から興味津々で覗き見をしている。
ガラス越しに猫ちゃん同士が向き合う光景は、
どこか小さなドラマのワンシーンのようだった。

見つめ合う猫ちゃんたち

夕方、再び車内で格闘技を見ながら、晩ご飯の準備を始める。
白菜、豆腐、鶏肉──材料はそろっている。
今日はひとり鍋に決めた。
米田さんからいただいた“キムチ”も追加投入。
驚くほど美味しくて、思わず笑ってしまう。

さらに「ホルモン煮込みうどん」まで差し入れてもらい、 これがまた絶品。
旅のつながりが作ってくれた温かさそのもののような夕食だった。

米田さん差し入れの「ホルモン煮込みうどん」

夜には雨も上がり、曇り空の下、キャンプ場には多くの車が並ぶ。

19時前、相方から電話があり、1時間ほど談笑。
6月後半に北海道へ来る予定だと聞き、
この先の季節の流れが少しだけ鮮やかになった気がした。

夕方の「湯の沢水辺公園」

明日は朝から晴れの予報。
トヨタのディーラーでオイル交換をするため、湯の沢を出発する。
次の目的地は「徳舜瞥山麓キャンプ場」。
ここ湯の沢で過ごした静かな時間の余韻を胸に、また北へと進んでいく。


【あとがき】

曇り空の一日は、青空の日よりもゆっくりと心に染み込んでくる。
光が弱いぶん、音や空気の温度、誰かの気配が際立つ。
その静けさの中で、旅の“内側”がそっと整っていくようだった。

湯の沢で過ごした数日間は、動かない時間の中で心が動く日々だった。
明日からまた走り出す。
けれど今日のような曇り空の一日が、
旅の“リズム”をやさしくつくってくれるのだと思う。


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次回:【第20話】湯の沢を発つ朝──光が切り替わる瞬間に立ち会う

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