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【第54話】道営野塚野営場──漁火までの乾杯

北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々

静かに続いていく──
旅の空気と、光と温度で紡ぐ日々の記録。

【第54話/刈払機の距離】

野塚──漁火までの乾杯

音だけで、距離がわかる。
カーテンの隙間に、白い光が細く刺さる。


昨晩も「道営野塚野営場」に
お世話になりました。

刈払機の回転が近すぎて、
眠りの底が薄くなる。
6時58分。
カーテンをほんの少しずらすと、
作業の人がすぐ側まで来ていて、
こちらの車体のリヤが完全に
道をふさいでいた。

起床時の温度計。
車内30.3℃、外気25.2℃。
数字は夏だけど、
海の側の空気はまだ硬くない。
とにかく前へ移動する。
エンジン音が、
いまの静けさの中だと少し大きい。

道営野塚野営場の朝

草を刈ってくれている人と、短い談笑。
トイレへ行って戻る間に作業は終わって、
「下げていいよ〜」の合図が飛んできた。
元の場所に戻すと、
さっきまでの慌ただしさがふっとほどける。

みゅうちゃんの朝ご飯を先に置く。
皿のかすかな音が車内に残る。

風は穏やかで、海も穏やか。
今日はタープを少し高めに上げておく。
影が薄く広がって、
空気が通り抜けやすい。

ポールを伸ばし、タープを少し高めに

コーヒーを淹れて、トーストと豆乳ゼリー。
北海道のYouTuber
「ちょぴこ北の暮らしch」さんの
動画が上がっていて、
朝ご飯を食べながら
「第2回 道南ミーティング」
の場面を追いかける。
YUKARA AUTO CAMP(RVパークおおぬま)
の空気が、画面の中でだけ忙しい。

YouTubeを見ながらの朝食

影の端──チェアの角度

外は快晴なのに、日陰の空気が軽い。
8時59分、チェアを持ってタープ下へ。
砂の明るさが目を押してくるけれど、
影に入ると反動みたいに身体が緩む。

海面は薄く光って、
SUPを出している人がいる。
水の上を滑る動きは、
音にならないまま続く。
見ているだけで、
体の熱がひと段落する。

タープの下で海を眺めながらのんびり♪

9時32分。
タープ下に広い影ができていて、
そこにいるだけで十分になる。
遠くで子どもの声が跳ねる。
波はその後ろでずっと同じ速さ。

昼はご飯を炊いて、
朝ご飯みたいなお昼ご飯。
皿がシンプルだと、
時間も静かになる。

13時41分、またタープ下へ。
土曜日らしく、
続々と来場者が増えていく。
炊事場に近いサイトはテントが密集して、
布とポールが小さな街みたいに並ぶ。
砂浜では子どもたちが走って、
足跡がすぐ上書きされる。

砂浜には子どもたち

富岡さん──カンパーイの入口

16時前ぐらいに、
富岡さん(クレア)が遊びに来てくれた。
先日の「第2回 道南ミーティング」で見た顔が、
海辺のサイトに混ざるだけで空気が少し動く。

16時8分。タープ下でカンパーイ。
ご飯まで買ってきてくださっていて、
袋を置く音、缶の触れる音が続く。
タープの影が、いきなり“部屋”になる。

富岡さんと乾杯♪

いろんな話題で談笑。
言葉が途切れても、
海の音が埋めてくれるから困らない。

18時32分、
夕日がきれいに見えている。
でも水平線の上に濃い雲があって、
19時2分には隠れてしまった。
空がふっと普通の色へ戻る。

日本海に沈む夕日

19時29分、遠くに
イカ釣り漁船らしき漁火が見えはじめる。
点が増えて、
海に小さな穴が開いていくみたいだ。
タープの周りにもテントが立ち、
キャンプ場らしさが夜側へ寄っていく。

海にはイカ釣り漁船らしき漁火

21時17分、辺りは暗くなり、
漁火だけがやけに明るい。
21時29分、タープ下を片付けて、
富岡さんのクレアで二次会。
奄美の黒糖焼酎が出てきて、
グラスの中の色がやわらかい。

クレアの車内で2次会

ビールは5、6本……たぶんそれ以上。
さらに焼酎とハイボール。
時間の輪郭が少し曖昧になるのに、
会話の筋だけはなぜか途切れない。
気づけば0時近くになり、おひらき。
車へ戻る道が、昼より少し遠い。

網戸にして
マックスファンを回していたせいか、
車内の湿度が上がっている。
家庭用エアコンの除湿を30分タイマーにして、
着替えてベッドへ滑り込む。


あとがき

刈払機の音で始まった一日が、
漁火の点滅で終わった。
海辺のキャンプ場は、
静かな時間と人の気配が交互にやってくる。

朝は車を少し動かしただけで落ち着いた。
タープを高くして、
影の広がりを確かめ、
チェアの角度を決める。
そんな小さな調整が、
そのまま一日の呼吸になる。

富岡さんが来て、
影の中が急に部屋になった。
缶の音や袋の擦れる音が混ざり、
遠くの波は同じリズムのまま。
夕日は雲に隠れたけれど、
代わりに漁火が点いて、
夜の海が別の顔を見せた。

車に戻ると湿度が肌にまとわりつき、
除湿の風だけがやけに現実的だった。
みゅうちゃんはいつもの場所にいて、
こちらの動きに合わせて静かに目を開ける。

今日という日が、
野塚の砂と影と、
いくつかの乾杯の音でできていた。
それだけが、きちんと残っている。


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