【目印を見つけるノート】2138. 詩はその人の言葉で聞きたい
昨日の夜は珍しく、サンフランシスコのシティライツブックストアのYoutube動画(『City Lights LIVE』)を見ていました。新着に気づいて気まぐれに視聴していたのです。
本当に珍しいです。通しで聴くのは初めてかも。
いつもと違うことをやってみたかったのかしら🤔
番組の内容はKevin Killianさんの2025年刊行の詩集『Padam Padam: The Collected Poems』の特集でした。著者は2019年に他界しているのでご本人の登場はないのですが、7人のゲスト(ライターなど)がリモートで著者の思い出を語ったり、詩集の評論や選んだ詩を朗読するという内容でした。1時間半、ありがとうございます。
もし興味のある方がいらっしゃいましたら。
シティライツブックストアといえば1950年代に興ったBeat Generationというカルチャームーヴメントのメッカです。見る理由はそこなのですが、何しろ日本語字幕はありませんので、ひたすら英語を聴き続けることになります。これがもう、私には大きなハードルです。テーマの詩人さんも存じませんし、さぞかし分からないだろうと思ったのです。
確かに評論の部分など分からない単語がいくつも出てきましたが、不思議なことに詩の朗読になるとストンと飲み込めるのです。初めての詩人さんですが、風景と流れる時間をスケッチしているような詩だと思いました。そして時たま意表をついたリズムのある言葉が入ってくる。
Amazonレビューの話とカイリー・ミノーグ、ヒューマン・リーグが出ていたのが印象的でした。1980年代前半のアイコン。
詩は印象や感覚、感情を書くもので、「あまり難しい言葉を使わないから聞きやすいのかな🤔」とふと思いました。また、動画で聞く詩の朗読は、絵本を読み聞かせるような日常の声だったりします。それもいいのかな。
いずれにしても、
日本の作家さん詩人さんは何となくどのようなジャンルの人か分かるのですが、外国のかたとなるとさっぱり分かっていないなと実感しました。
実用的なこと、生活に使うスラングなどはよくSNSでも紹介されていますが、文学の潮流などは、たとえば身近な英語圏でもあまり言及されません。それ以外の地域だったらもう惨憺たるものです。
知るべきことはまだまだ天文学的にあります。

と、いうことで、
この前入手したドイツの小説家・詩人・法律家シュトルムの詩集をチラチラと読んでみました。ドイツというより、ほぼデンマーク地域の方だったのですね。
ふたつの詩を挙げてみましょう。
日本語訳はすべて『シュトルム詩集』(旺文社文庫、石丸静雄訳)から引用しました。
🌟
町
灰いろの浜 灰いろの海
そのわきに伏したような町
霧が家々の屋根をおさえつけ
単調な波の音が
ひっそりとした町をかこんでいる
風にそよぐ森もない 鳴きしきる
五月の鳥の声もきこえぬ
ただ秋の夜空を けたたましく
雁が鳴いて渡るばかり
浜べでは 草が風になびいている
灰いろの海辺の街よ
それでも私の心はお前から離れない
素晴らしい青春が いつもいつも
にこやかにおまえに抱かれている
灰いろの海べの町よ
せっかくなのでドイツ語の朗読を。
やってみて分かりましたが、
この作業はなかなか骨が折れます。
まず日本語の訳文をアプリでドイツ語に翻訳して検索をかけて、何か見つかったらもうけものという感じです。上記の『町』という詩はたいへん有名だそうですし、町という単語は明快。すぐに出てきてくれましたが、次は挫折しました。
🌟
人間は大きくはなれない
人間は大きくはなれない
けれども 人間のなかで
思想の世界が
しだいに大きく伸びていく
日々にきびしい要求が
生きている人たちをうながす
心得のある人には すべて
それがわかるのだ
十字架にたいする幸福な信仰から
にわかに別の信仰がうまれ
夢中で大きくなる。
その厳命はこうであろうーー
けだかく 美しく生きよ
未来の存在をあてにすることなく
報いにこだわることなく
ただひたすら人生のうるわしさのために
ーーーーーーーーー
見てみると、時期によって詩のテーマが変わっていました。比較的若い頃は恋愛の詩が多く、後に哲学的なテーマが多くなります。きれいな言葉の連ねかたですね。
ー人生のうるわしさのためにー
私だけかは分かりませんが、詩はその人の言語で聞きたいと思ったりします。例えばアレン・ギンズバーグさんなら英語、エリュアールさんならフランス語、シュトルムさんならドイツ語です。聴くだけなら、ということですが、自分がその言語が分かるかはあまり大きな問題ではありません。
音楽と同じで、詩は聞くものだと思っているのかもしれません。
またいい感じの詩があったら紹介します。
Bob Dylan『Shelter From The Storm』
なぜこの曲かというと、Beat Generation で思い出したのもありますが(Dylan さんはGinsbergさんと交流がありました)、何よりシュトルムさんの綴りがStorm だと知ったからです。
Storm!
『海底2万マイル』(ヴェルヌ)の最終盤で「メールストローム!」という叫び声の描写がありますが、それをハッと思い出したのでした。それはデンマークよりもっと北、ノルウェー・ロフォーテン諸島の沖で起こる大海嘯のことです。思い出すと今でも子どもの頃のようにハラハラします。悲観大王?のネモ船長は、どこに行ったのかしら🤔
「ストローム」はStormで、英語でもドイツ語でもノルウェー語でも同じ意味(嵐)です。
シュトルムさんもその綴りだったのを初めて知った金曜日でした。
嵐を避けるシェルターがほしいですね。
あ、今日もシティライツの、アップしてる😓
それでは、お読み下さってありがとうございます。
尾方佐羽
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