『魔女の庭』 第一話:視聴覚室の向こう側
掃除の時間。
ぼくたちは、いつものように視聴覚室へと忍び込んだ。
カーテンの裏でこそこそ笑いながら、時間が過ぎるのを待つのが日課だ。
けれどその日、何かがちがった。
「暗室、鍵開いてるぞ」
ツネが、そっとドアを押した。
いつもは鍵がかかってるはずのそこが、すんなりと開いたのだ。
中は、漆黒だった。
光ひとつなく、空気が重い。
誰かが小声で、「電気どこだ?」と言った。
ぼくは、手探りで壁をなでた。
その瞬間——
ぱっと、世界がひらけた。
……そこは、森だった。
苔むした地面に、木漏れ日の光が落ち、ゆれていた。
ざわざわと風の音がして、空気は青い匂いがした。
少しひんやりとしていて、でもやわらかかった。
そして、目の前に、
ふたりの女の子が立っていた。

年の違う姉妹のようなふたり。
どちらも、黒い外套にカラフルな模様をまとい、
ぼくをじっと見つめていた。
目が合った。
何も言わないのに、心臓だけがどくんと鳴った。
ぼくは、そっと目線を外し、後ろを振り返った。
——ツネも、サトルも、いなかった。
「わたしたちのお母さんを、助けて」
背の高い女の子が、そう言った。
ぼくは、わけがわからなかった。
