【小椋夏己文庫第2話】「最後のデュエット」
第一章 相棒の不調
大学生の時からの8年来の相棒である愛車でドライブをしていた時、突然妙な音がし始めた。
「ぶおんぶおんぶおんぶおん」
そういう鈍い音が足の下、つまり車体の下からして、何かが車体に当たっているようだ。強いて言うなら、子どもが細長い棒でいたずらでもしているかのような。
車本体は順調に走っているし、何かのエラーも出ない。
「なんかアクシデントみたいだ、ちょっとごめん」
同行者にそう告げると車を路肩に止め、俺はスマホで祖父の代からの付き合いのある自動車整備工場に電話をかけた。
高速や広い国道ではなく、郊外の路肩の広い二車線の道路でよかったなと思う。車を端に寄せてしまうと、後続車が追い抜いていくのに何も問題がない場所だ。
馴染みの整備士さんが電話に出たので症状を伝えると、ちょうど代車が空いてるのですぐに来るようと言ってくれた。見てみないと分からないが、特に急ぐ用ではないのなら今日はそのままこちらに来て、早めに修理をした方がいいだろうということだ。
俺は次の曲がり角を左折して愛車を方向転換させると、ドライブを中止して整備工場へと向かうことにした。
到着すると、俺より6つ歳上の35歳だが、もう中学生の娘さんのいる結構イケメンの整備士の田上さんは、何かの作業中だったのだろう、少し頬に黒く汚れをつけ、やはり汚れのついた軍手を脱ぎながら、
「ちょっと面倒かも知れないな。とりあえず預かりますよ」
と言って代車のキーをくれた。
俺は礼を言って代車の軽に乗り換えると、同行者と一緒に出発した。
一度戻ったことで少し遅くなったし、こういうケチが付いた日は遠出はやめるに限る。どこかでお茶と飯、ついでに映画でも見るかと話がまとまり、郊外行きだった予定は都心部へと変更された。プランAからプランBへ、柔軟に変更して違う楽しみの一日といきますか。
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