転生したら記憶が追いつかなくて3年寝込んだ件
最近 思うことがある
転生ものの主人公は
記憶力が良すぎやしないか
悪役令嬢に転生したり
ゲームの世界に転生したり
婚約破棄イベントを回避したり
未来の災厄を防いだりする
見始めたら 続きが気になる
でも
時々冷静になってしまう
本当にそんなに覚えていられるのだろうか
婚約破棄する王子の名前くらいは覚えている
それはメインイベントだから
問題はその先
数年後の春
第二王子が庭園で何かを言う
その後
モブ商人の息子がどうのこうの
そしてルート分岐が発生する
いや
無理では?
読んだ物語や ゲームの詳細なんて
覚えていられる気がしない
さらに不思議なのは
転生した瞬間に
元の体の持ち主の記憶が流れ込んでくるやつだ
あれ
脳 大丈夫なのか
記憶がインストールされたら
自分の記憶は押し出されないのだろうか
私は去年のゴールデンウィークに
何を食べたかも覚えていない
それなのに
公爵令嬢十五年分を追加する余裕があるとは思えない
幼少期の思い出
友人関係
初恋
トラウマ
家族との会話
貴族の作法
全部一気にインストール
いやいや
オーバーフローだ
普通に 寝込むだろう
まず整理が追いつかない
私は私なのか
それとも令嬢なのか
あの王子が嫌いなのは私なのか
令嬢なのか どっちだ
となる気がする
アイデンティティ崩壊である
転生初日で 寝込むな
そして三年くらい
天井を見ながら考える
「私は誰なんだろう」と
さらに言うなら
現代知識チートも怪しい
転生したら醤油を作る
スイーツを作る
この知らない木の実は
日本のあれに似てるなとか
周りの人たちから 絶賛される
でも私は
醤油の作り方を知らない
大豆と麹と
なんか発酵させるんだっけ
くらいだ
ガラスも作れない
石鹸も怪しい
電池なんて 無理だ
圧力鍋だって便利さは語れるが
作れと言われたら困る
つまり
転生しても私は無双できない
せいぜい
「あの王子なんか嫌な感じがする」
とか
「この人たぶん信用できる」
とか
そのくらい
でも
今もそうやって生きている
人を観察して
仕組みを考えて
危なそうな場所を避けて
面白そうなものを拾う
未来を正確に知っているわけではない
それでも そうやって生きている
記憶よりも
残るものがあるとしたら
たぶん
考え方や 物の見方だろうな
転生したところで
結局やることは変わらないのかも
未来は知らない
醤油も作れない
でも
生き延びる方法を考えることはできる
たぶん私は
転生しても きっとマタギだろうな
【マタギの脳内サバイバル】
転生チートは 無理だ
だが 思考の癖だけは持ち込めそう
料理教室で習ったお料理すら
満足に再現できませんのに
転生など 荷が重すぎますわっ
まずは今世のバッドエンドを回避するのが先ですもの
