見出し画像

独房のいちごと 白い花

独房の神に なる

外出先で ふと足が止まった

小学生の女の子が 大切そうに小さな瓶を差し出し お友達に「お福分け」をしている

「これ うちで穫れたブルーベリー
お母さんが ジャムにしてくれたの
良かったら 食べて」

なんと 眩しい循環だろう

けれどすぐに 現実的なノイズを弾き出してしまう

ブルーベリーは 一本では実がならない
ベランダに出せば 最も忌むべき「虫」がつく

しかし憧れを 憧れのまま終わらせるのは 私の流儀ではない

私は 今の暮らしに可能な 独房を作ることにした

買ってきたのは いちごの苗

食べ終えた大きなプリンカップに穴を開け
鉢へとジョブチェンジする

置き場所は 窓際ではない
家の中にある 水槽のライトの真横だ

私の家には観葉植物が窓際を占拠している
太陽が満席なら 別の光を分ければいい

水槽の白い光に照らされて
今日 小さな白い花が 三つも咲いた

家の中に 羽音も 不純な虫も存在しない

私は 綿棒を取り出し 無機質な光の下で 花をポンポンと叩く

虫すら排除した 完璧に管理された「農」

けれど 一人でポンポンしながら ふと思うのだ

このいちごは 私がいなければ 実がならない

そして いちごの「神」を気取っている
私自身もまた

誰かに 生かされているのだと

この「不自然な命」を繋いでいるのは 私という傲慢な愛情ひとつ

ならば私も この水槽のライトのように
誰かの「春」を呼ぶための 光のひとつでありたい

これこそが 令和のマタギが営む
最小最強のインフラサバイバル


【マタギの脳内サバイバル】
「ないもの」を嘆くより
「あるもの」を回して 新しい実りを作る


なんて 感謝の言葉で 話を濁すのはやめよう

いちごの神は この不自然な営みを たまらなく楽しんでいるだけだ

太陽を奪い 季節を偽り 綿棒一本で命を操作する

この滑稽で 少し残酷で
けれど本気の支配欲こそ
我が愛の正体




いいなと思ったら応援しよう!