アイデアは 逃げる獲物だった
アイデアって 捕まえないとすぐ逃げる
そう気づいたのは メモを取るのが上手くいかなかったからだ
歩いている時
料理をしている時
子どもの話を聞いている時
ふと 面白いことを思いつく
これは 絶対忘れないでおこう!
そう思った数時間後には 綺麗さっぱり消えている
私は何度もそれを繰り返した
思い出そうとしても思い出せない
何か面白いことを考えていた気はする
でも その何かが分からない
まるで森の中で見つけた獲物を
作業が終わったら捕まえに行こう
と思ったまま 見失うような悔しさ
だから私は いろんなメモ術を試した
スマホ
ノート
紙切れ
手の甲
どれも一長一短だった
スマホは便利だが 便利すぎて埋もれる
ノートは好きだが 開くまでが遠い
紙切れは風のように消える
手の甲は 美しくない
そんな私が辿り着いたのが 正方形の付箋だった
思いついたら とりあえず一枚
整理しない
分類しない
綺麗にまとめない
まず捕まえる
殴り書きでいい
読めなくてもいい
未来の私に全部丸投げでいい
逃がさないことの方が大事だ
後から見返すと 意味不明な単語が並んでいる
「一本足の鳩」
「味噌汁」
「電柱」
「転生」
…なんか 大事だった気がする
未来の私は時々途方に暮れる
後からたまに思い出す
ああ あの時の違和感か と
すると付箋は ただの紙切れから足跡へ変わる
私はメモを取っているのではない
狩り札を付けているのだ
逃げる前に目印を残しているだけ
そして
もう一つ 私には欠かせない道具がある
A5のシステム手帳
スマホにすべてを集約できる時代に
私はいまだに手帳を使っている
スマホでは考えられないからだ
スマホの中の情報は それぞれの箱に収まっている
検索はできる
保存もできる
でも並べられない
私が本当にやりたいのは比較だ
仕事でも
生活でも
思考でも
並べて見たい
だから私は手帳を使う
付箋を貼る
書き直す
ページを並べる
机の上に広げる
すると バラバラだった獲物たちが少しずつ繋がり始める
付箋で捕まえる
手帳で並べる
そして繋がる
そんな感じだ
手帳は単なる記録ではない
思考を広げるための空間なんだと思う
私は思考を整理しているのではなく
日常で獲物を捕まえて
机の上に並べているだけだ
忘れたと思っていたアイデアが
思いもよらない形で繋がることがある
最初に思っていた着地点とは
全然違う場所に辿り着くこともある
それが 結構面白いんだ
だから今日も私は付箋を持ち歩く
どうせ逃げるから
先に捕まえておくために
