誤変換と 命の尋問
「今日の給食は 漁業の授業に関連して たいめしが出たんだって」
私の脳内では 「漁業 たい」という単語が放たれた瞬間 猛烈な勢いで 東南アジアの現地の市場の喧騒風景が展開された
「へぇ タイって漁業が盛んなんですね!
じゃあ 米はタイ米とか使うんですか?」
全員の頭上に浮かんだ巨大な【?】が
次の瞬間 一気に爆笑へと変わった
私の純粋な好奇心と 誤変換が「鯛」という名の 異国の旅をしてしまったようだ
そんな私は かつて旅行で行ったタイの食堂で
一つの真理にぶつかった
「活きた魚」と「死んだ魚」を選べるメニュー
私は店員さんに聞いた
「この死んだ魚は いつ死んだのですか?」
周囲は笑ったが 私は至極真面目だった
異国で腹を壊すことは 楽しい旅行の終わりを意味する
だからこそ 私は「いつ どうやって死んだのか」という死因と鮮度に
真剣に向き合っていただけなのだ
結局 地元民は安い「死んだ魚」を食うのか
外国人の私は 高い「活きた魚」を選ぶのか
……いや 待てよ
実は裏では同じ魚で 観光客から「安心料」を巻き上げているだけではないか?
おそらく 地元民には聞かない質問だろう
もし 私が入店する直前に「捌いたばかりの死んだ魚」が作られていたとしたら……
高い活魚を選んでも 調理されれば死んだ魚と変わりない見た目で判断できない…
私はいったい何を選択させられているのか
dead or alive?
経済的デッドか?肉体的デッドか?
もちろん異国の地で 鮮度の低い魚は
加熱したとしてもアウトだ
迷わずもがな!
疑心暗鬼と好奇心
それは 異国で数日間生き残るための 私のミステリートラベルの始まりだった
結局 高い活魚を選んだが 味は覚えてない
お腹を壊さなかったという 唯一の勝利だけは覚えてる
試合に勝ったが 勝負に負けた気分だ
周りを不快にしたくはない
食事は 楽しい方がいい
スマートに活魚を注文して 大人しく食べてる客に扮してた
その頭の中でずっと ぐるぐる推理してただけだ
ますます 闇は深くなるばかり
【マタギの脳内サバイバル】
食とは 単なる栄養摂取ではない
ときにそこには 嘘と真実の気配が混じる
後日 ジャンに この話をした
彼は笑い転げながら
あはは ブレないねぇ
でもさ 現地の人が当たり前に食べてるものでも 慣れない観光客には毒かもしれない
店は観光客を守るための配慮として 選択肢を設けていたんじゃない?
ジャンはそう言って
読んでいた本を パタンと閉じた
別方向からの視点でようやく腹落ちした
……まあ 実際はただの観光客向け価格だったんだろうけどね
そう 絶っっ鯛!
若い頃の貧乏旅行 サバイバルで楽しかったな
