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#41 ビジョンを語りたい、でも難しい。経営者に贈る「ストーリーテリング術」

「おいしい組織 〜今、経営者に聞いてほしい人事と事業の話〜」は、ビジネスの根幹である組織にスポットライトを当て、経営や事業に生かせる思考法を語るポッドキャスト番組です。

この公式noteでは、ポッドキャストの文字起こしを、ダイジェスト版でお届けしていきます。

パーソナリティは、株式会社事業人共同代表の宇尾野彰大と、株式会社Mentor For代表の池原真佐子です。

第48回のテーマは、「ビジョンの語り方とジレンマ」。経営者は自分の言葉で夢を描き、人を巻き込むことが求められますが、ビジョンを作り込むほど、現場の実態と乖離してしまうことも….。

今回は、言語化力の磨き方から、ビジョンに乗せる「ナラティブ」、そして理想と現実のギャップを乗り越える仕組みまで語り合いました。

さまざまな現場を見てきた2人の、リアリティある経営・人事トークをお楽しみください。


なぜ「自分の言葉」で語るのか

宇尾野:今回のテーマは、経営者の「ストーリーテリング術」です。ビジョンやミッションを含め、経営者は「自分の言葉」で語ることを求められる場面が多くあります。

池原:
 まさに、経営者は自分の言葉で夢を描いて、人を巻き込んで、社会を魅了するのが仕事…というイメージがありますよね。

たとえば宇尾野さんはポッドキャストでまさにご自身の言葉を発信していますが、ここにもそういう意図があったり?

宇尾野: そうですね。組織論って、そもそも原理原則があるので、誰が語っても同じような語りになりやすいなと思っています。それをどう面白く楽しそうに、文脈ごと届けるかと考えた時に、ポッドキャストが自分に相性が良かったんです。

ビジョンって、経営者が語る機会も多いし、何が一番届くんだろうと苦労される。一方で作り込むほど実態と乖離したり、思うようには届かなかったりもする。

今日は、そのあたりをお話しできたらと思っています。

言語化力は「反応」で磨かれる

池原:言語化力って難しいですよね。たとえば、具体を抽象化して言葉にしていくこともそう簡単ではない。宇尾野さん自身は意識されていることはありますか?

宇尾野: まさに反応を見ながら、というところが大きいですね。このテーマをこの粒度、この言葉で伝えると「うんうん」となる話もあれば、自分では伝わっていると思っているのに全然伝わっていない話もある。

それを微調整して、次に同じ話になった時はこの言葉選びにしよう、と意識してやり始めたら、徐々に精度が上がっていきました。

池原: 私自身もビジネスコンテストやピッチにたくさん出て、3分間で自分と会社の魅力、社会をどう変えるかをパワーワードで伝える、という場数を踏んできました。

研修や講演も多いので、誰が聞くかに合わせて何を伝え、どんな言葉を選ぶかを脳内でシミュレーションすると、徐々に上手くなる印象があります。

ビジョンに「ナラティブ」を乗せよう

宇尾野: 先に考え方をシェアしておくと、ビジョンを語る時やジレンマを解消する手立てとして、「ナラティブ」という要素がすごく大事だなと感じています。一言でいうと、その人らしいストーリーを、会社の経営やビジョンにどれだけうまく盛り込めているか、ということですね。

池原:たとえば 「人と組織に寄り添う会社です」という機能だけで語るんじゃなくて、こんな思いがあって、こんな社会を作りたくて起業した、というストーリーを乗せた方がいい、と。

宇尾野: はい。まさにご自身の物語ですね。こんな困難や原体験があった、こんな転機があった、それにどう向き合うと決めたか。

価値観の形成のプロセスがあって、使命の発見があって、それをチームで、この商品を通じて実現したい、と。長く語るのではなく、コンパクトにシンプルに伝えられると、ナラティブのパワーが増します。

一人でやる場合は、コーチングで引き出してもらったり、ジャーナリングで内省の時間を定期的にとる。取引先とのやり取りにイラついたのか、ワクワクしたのか、同じ事象でもいろんなことを感じるので、それを言葉にする。そのうえで「その話は少し長いかも」といったフィードバックをいろんな角度からもらって、言葉を形にしていくことが大事だと思います。

キラキラビジョンと現場のジレンマ

池原: でも、結構難しいものだなとも思います。キラキラしたビジョンの発信は大事なんですが、いつもビジョナリーでは業務が回らないところがあるじゃないですか。

「綺麗なことを言っているけど、現場ではもっと細かいよね」という周囲からの評価のギャップに悩むスタートアップの経営者が意外と多いと聞きます。

宇尾野: まさにそうですね。周りには「すごい会社になろうとしている」と宣伝しているけれど、実際にはビジネスって地道なことの積み重ねの上にあるものですから。でも、それがないと会社経営は成り立たない。

ビジョンを高らかに語っているのに、思ったより近づけていない感覚の中で焦っていく。ゴールが遠いほど起きやすいシチュエーションです。

池原:おそらく2パターンあって、外でキラキラ言うわりに事業の成長が全く追いついていないケースと、社内では粒度をぐっと下げて細かく入らざるを得ず「あれ、ビジョナリーじゃないじゃん」とがっかりされるケース。どちらも理想と現実のギャップですよね。

これって、どう乗り越えたらいいのでしょう。

宇尾野: おそらくポイントは二つあって、一つはご自身の弱さを認めること、もう一つはビジョンと現場の間を「編集」することです。

まず弱さについては、リーダーシップ界隈でよく出てくる「脆弱性」ですね。高らかなメッセージを掲げつつも、「これを語っている自分は不安だし、ここが不足していると思う。だから助けてほしい」と自己開示する。

少し隙を見せることが、フォローしてくれる方々の信頼を作り、入り込む隙間になる。ビジョンがキラキラなほど手を入れづらいので、そこを開いてあげるのは大事なプロセスです。

二点目は、通訳をしてくれる人を置くということですね。リーダーが細かいことをしなくていいように、なぜその細かさに入るのかという意味を、経営側に立ってメンバーに伝えるマネージャーを置く、と。

池原:なるほど。「外で語っているあのメッセージは、この仕事ではこういう意味なんだ」と落とし込める人にサポートをお願いするわけですね。

宇尾野: まさにです。マネージャートレーニングでも「結節点になる」という言葉がよく出てきますが、社長が言行一致を全部担保するのは難しいので、会社として言行一致をどう担保するかをマネージャーが一緒に考える。

社長のプレゼンをそのまま伝えるとメンバーはこう感じるな、と理解して言葉を少し変形してあげる。その力があるかどうかが、強い組織の分かれ目になるのだと思います。

言葉を磨くトレーニング

宇尾野: そして、こうした言語化力は今後さらに重要になっていくと感じます。

実際、AIで叩けば言葉が出てくる時代だからこそ、なぜこう編集したか、社長は何を感じ、現場はどう感じているかを理解した上で届け方を変えなきゃいけない。言葉の開発自体は簡単でも、どう伝え、どんな意味を付加して渡すかに差が出ます。「これってAIっぽいな」と分かってしまいますからね。だからこそ、自身の言葉を発信しつつ、それを的確にフィードバックできる人を内部でも外部でも周囲に置けるかが大事だと思っています。

池原: まさに、経営者を壁打ちして言葉を引き出す役割の仕事もありますよね。余談なんですが、経営者ほど、思いを短い言葉に凝縮するトレーニングをすると磨かれる気がしていて。

私、一時期、俳句をやっていたんです。制約の中で情景を短い言葉にする。斜めから自分の言葉を磨く練習として面白いなと。

宇尾野: 面白いですね。私も自分にコーチをつけていて、定期的に「自分が失敗だと思うこと」を言語化する制約をかけているんです。失敗をちゃんと振り返って、初めての人に伝えるって、意識しないとやらない。

経営陣が自分のミスを語るのは弱さを見せる話にもつながりますが、普段振り返らないテーマを言葉にして棚卸しできると、ナラティブのパワーがより発揮されます。

池原: メンターも同じで、人生のシェアやアドバイスを短い時間で一言にする練習をすごくするんです。教訓を言ってから詳細を言う、とか。少し考えてから話す、というのが響く言葉を出すコツかもしれませんね。

『おいしい組織』は、毎週月曜日に各種プラットフォームで配信しています。
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▼MC
宇尾野彰大(株式会社事業人 共同代表)
池原真佐子(株式会社Mentor For 代表)

▼事業人 公式サイト
https://jigyojin.com/

▼制作
Podcast Studio Chronicle

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