【実験記録2-2】湯船の反響 ②
42℃、右足から。
左足、腰、胸、肩、そして首。
10秒ほど慣らしてから、ふぅと大きく息をつく。
会議の声、未返信のチャット、失敗したプレゼン、
じわじわと滲み出る汗に混ざって染み出てくる。
肩甲骨を触るとざらざらしていた。
目を閉じると今日一日が繰り返される。
言い直せたはずの一言。
黙らなくてもよかった間。
搔き消すように、喉がメロディを奏でる。
家族でドライブしていた車の中で父親が流した歌。
初めて買ったアルバムの1曲目。
バンド名は忘れたけど覚えているフレーズ。
学生時代に自分で作った歌。
歌声はだんだん大きくなる。
自分の声が自分でないみたいに聞こえる。
歌手になった人がなりたいと思ったときは
風呂場で歌いながらだったのではないか。
高音はお尻の穴に力を入れると出るのよ。
いつだったかテレビで有名な歌手が言っていた。
足の指にも力が入る。
力を抜いて、ふぅと大きく息をつく。
静寂は水面をゆっくり揺らす。
指で掬った水の音だけが残響になる。
耳まで浸かると、残響すら聞こえない。
ぶくぶくという息の音と心臓の鼓動だけが、聞こえていた。
