自意識過剰な僕にとって、この世界は目のやり場が少なすぎます。
お巡りさんとすれ違う時、僕はいつも緊張してしまいます。
悪いことなんて何もしていません。
なのに、目のやり場に困ってしまいます。
「今、本官をチラ見したね。何か隠し事があるんじゃない?」
そう疑われそうで怖いのです。
かといって、スマホや景色に目をやると…
「今、わざと目を逸らしたね。何か隠し事があるんじゃない?」
それはそれで、怪しまれる気がしてなりません。
自意識過剰な僕にとって、目のやり場不足は極めて深刻な問題なのです。
「安心してください。見てませんよ」アピールで疲弊した話
鹿児島行きの新幹線での出来事。
僕は窓側の席、隣にはスーツ姿のおじさんが座りました。
“しごデキオーラ”ムンムンのおじさんは、着席してすぐにノートPCを開きました。
恐ろしいことに、僕の席から画面が丸見えでした。
Excelらしき数字と文字の羅列。
それが目に飛び込んだ瞬間、僕は自分に言い聞かせました。
「見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ…」
すぐに体の向きを窓側に変えました。
「安心してください。見てませんよ」フィールド全開です。
音楽でも聴きながら、車窓に映る景色でも満喫…
…するつもりが、トンネルに入っては出ての繰り返し。
同じ暗闇なら瞳を閉じてしまえと、夢の世界へ逃げることにしました。
ところが、HSPの僕は周囲の環境に敏感です。
自宅以外では快眠できず、15分ほどで目が覚めてしまいました。
背伸びするふりをして、体を正面に戻してみます。
おじさんはまだ絶賛仕事中でした。
乗り物酔いをするので、スマホも本も我慢。
僕は仕方なくもう一度、窓のほうを向くことにしました。
眠れないのに瞳を閉じる。
しかも慣れない体勢で。
それはちょっとしたお地獄でした。
そんな状態が30分ほど(体感としては1時間以上)続いたでしょうか。
痛い、痛いよお母さん、腰回りが、腰回りが!
普段使わない筋肉が、悲鳴をあげ始めました。
同時に、なぜこんなに苦しまないといけないのかと、怒りが込み上げてきました。
僕は我慢できず、再び正面を向きます。
そして、そのまま視線をおじさんに送ると…
ちいかわがいた。
おじさんは仕事ムーブをかましておきながら、いつの間にかPCで「ちいかわ」の動画を見て癒されていたのです。
「もう、いいんだよ。わたし」
まず、安堵感に包まれました。
「あんたバ●ぁ?」
でも、すぐに怒りが後を追いました。
苦しみに耐えていた僕の横で、原因を作った張本人は、有意義な時間を過ごしていたのですから。
同じ空間、同じ移動時間。
平等に与えられた環境で、天国を味わった人と地獄を味わった人がいるという不条理に涙。
自意識過剰な僕にとって、この世界には目のやり場が少なすぎます。
泳がせっぱなしの目を、一体どこで休ませたらいいのでしょうか。
おわり
追伸
エヴァファンの皆さん、すみません!
