好きな韓国語、アイゴの話
K-POPと韓国ドラマが好きで韓国語をスピードラーニングしていたら、少しは話せるようになった。日本から韓国の店に電話をかけて、旅行時に行きたい店の予約を取ったこともあるし、韓国の市場のアジュンマに値段交渉をふっかけたこともある。日常生活をギリ送れないくらいの韓国語しか話せないが、その中でも好きな言葉がある。アイゴという言葉だ。
アイゴは様々な場面で使われる。あらま遠いとこからよくきたねぇ、のアイゴ。わぁ!びっくりした、のアイゴ。なんて可愛い子犬なの、のアイゴ。やれやれ、のアイゴ。よっこらしょ、のアイゴ。おっとっと、のアイゴ。あちゃちゃ、のアイゴ。
無人島に3つだけ道具を持っていけるなら?の質問みたいに、この世からほとんどの単語が消えてしまって、3つだけ残せるとしたら?の質問をされる時が来たら、その時は「アイゴ」と言おうと決めている。あとの2つすらいらない可能性まである。
学生時代、家庭教師のアルバイトをしていたときに、韓国人の姉弟を2人同時に教えることになったことがある。両親が韓国人で子供はインターナショナルスクールに通っているようで、二人とも日本の教育を受けてはいなかった。
そのため九九を習っていないので、中学生のお姉ちゃんでさえ4×7とか6×9とかの計算が信じられないくらい遅かった。「ししち」と「ろっく」を知らなかったのだ。
その子たちに日本の教育基盤は通用しなかったので、私は韓国語を例に英語を教えるなどしたこともあった。韓国語は基本的には日本語と同じ文法なのだけれど、時々そうはいかない部分、英語の文法に似ている部分もあるのだ。
例えば韓国語はunhappyのように接頭辞で否定することができる。好き、という動詞の前にアンという言葉をつけて好きではない、と言うことができる。日本語は動詞の場合、語尾でしか否定できない。
(いや、私は言語学にはアン精通なので語尾で「しか」というのは危険かもしれない。間違っていたら教えて欲しいけれど、可能ならばできる限り優しい形でお願いしたい)
お姉ちゃんはよく計算間違いをした。本当は計算間違いのまま進んで答えが合わなくて、なぜ間違えたのかを考えて計算間違いが原因であることに気づき、自分はいつも計算間違いが多いから気をつけないといけない、と至るまでの過程を見守るべきなのかもしれないけれど、家庭教師の授業時間90分の中ではそんな悠長にしていられる時間はなかった。
だからお姉ちゃんが計算間違いをするとすぐに、違うよ、と言って間違っていることを知らせた。するとお姉ちゃんはほとんど毎度「アイゴ」と言った。若者でも言うんだ!私はそこでドラマの中だけで聞いていたアイゴを初めて生で聞いた。
アイゴは主に年配の人が使う言葉だと思っていたので、若者の生アイゴには痺れた。するとお姉ちゃんのあちゃアイゴに聞き慣れている小6の弟は、お姉ちゃんそれやめて、と言ったのだ。
それやめて。ということはやはり年配の人が使う言葉なのだろう。お姉ちゃん、そんなババくさい言葉使わないで、ということだろう。意外とやっぱりが交互にやってきて私の脳内では意外とやっぱりのシャトルランが始まってしまった。
ジジババ言葉であったとしても、私はアイゴと言いたい。初めはアイゴと言って、そんな言葉どこで覚えたの、というように韓国人を笑わせたい。笑わせたいと意識してアイゴと言いたい。それからいくつもの場面でアイゴを繰り出し、アイゴ界で黒帯をもらったら、もう次は意識せずともアイゴが勝手に口から生まれてしまうことを待ち望んでいる。無意識のアイゴを夢見て。



