架空事例で学ぶ「伴走型ワークショップ・コンサルティング」の実際
はじめに
〜現状把握と課題抽出のプロセス〜
こんにちは。今回は、コンサルティングの中でも「伴走型ワークショップ形式」という方法を、架空の事例を使って詳細に解説します。
このスタイルは、単なる助言型コンサルとは異なり、クライアントと一緒に現状を分析し、課題を発見し、解決策を導き出すことを目的としています。
特にこの記事では、全プロセスのうち最初の重要ステップである 「現状把握」 と 「課題抽出」 に焦点を当て、どのように進めるのかを、具体的な流れ・問いかけ・ファシリテーションの工夫とともに解説します。
1. 伴走型ワークショップの全体像
伴走型ワークショップは、コンサルタントが一方的に答えを出すのではなく、クライアントと共に考え、答えをつくりあげていく方法です。
全体の流れは、大きく4つのステップに分かれます。
現状の把握
→ 事業や組織の現状を、参加者の視点から詳細に整理し、共有認識をつくる。課題の特定
→ 現状の中から、改善すべき問題点や障害を洗い出す。解決策の立案
→ 課題に対する具体的なアプローチや施策を共に考える。解決策の検証と実行
→ 実施の計画を立て、小さく試しながら改善する。
今回は、このうち ①現状把握 と ②課題特定 に焦点を当てます。
2. 架空のクライアント設定
今回の事例では、以下のような架空の企業を想定します。
事業形態:2つの主要事業を運営
経営層の関心事:
既存事業のアップデート
新規事業の可能性探索
事業全体の方向性の見直し
背景:
若手社員の離職増加
現行の仕事のやり方や価値観が若手に合わない
社内から「事業が時代に合っていない」「やりがいが薄い」という声
売上は現状維持だが将来的な伸びは不透明
経営層は次のように判断しました。
「今のうちに現状を正しく把握し、潜在的な問題を見極め、新しい舵を切るべきだ」
3. ワークショップのスコープ設定
ヒアリングの結果、今回のワークショップの対象は 既存の2つの事業 と決定。
そのため、現状把握と課題抽出は 事業ごとに2回実施します。
4. 準備段階(ロジスティクス設計)
コンサルタントは、実施前に以下を準備します。
事前情報の収集
クライアントから現状・背景情報をできるだけ入手。
数字、組織図、顧客データ、過去の戦略資料などを確認。
対象者の選定
各事業に深く関わる現場メンバーを中心に招集。
役職・職種のバランスも考慮。
所要時間・進行計画の設計
現業を抱える参加者の負担を考慮し、短時間でも集中できる構成を設計。
ワーク内容の設計
どの問いを立て、どの順番で進めるかを決定。
オンラインの場合はMiro、オフラインならホワイトボードを活用。
5. ワークショップ1:現状把握ワーク
伴走型ワークショップでは、課題抽出は 「表面的な不満や困りごとを拾う」 だけで終わらせず、「事業の本質的な制約条件やボトルネックを構造的に見つける」 ことが重要です。
ここでは、1→2→3のステップ構造で説明します。
1. 課題を洗い出す(ブレインダンプ)
目的は、参加者の頭の中にある課題や懸念を、できる限り網羅的に可視化することです。
この段階では質より量を重視し、評価や批判は一切行いません。
進め方
問いを提示する
「日常業務で困っていることは?」
「お客様対応で発生している不満やトラブルは?」
「業務を円滑に進められない要因は?」
「成果や売上を阻害しているものは?」
「事業が成長しない理由は何か?」
個人作業(静かに書く)
時間は3〜5分程度(短め)
1付箋に1課題を書くルール
感覚的な課題も歓迎(例:「モチベーションが低い」「会議が多い」)
全員分を貼り出す
ホワイトボード/Miroなどで一覧化
この時点では仕分けせず、とにかく見える化
ポイント
「課題」という言葉を使うと抽象的になりがちなので、「困りごと」「不便なこと」と言い換えると出やすい。
数字や事実が絡む課題は、その場で軽く補足を入れると後の深掘りが楽になる。
2. 課題を整理する(グルーピング)
洗い出した課題はバラバラで、粒度もバラつきがあります。
ここで似たもの同士をまとめ、テーマを明確にします。
進め方
類似課題を近くにまとめる
「顧客対応系」「業務フロー系」「人材育成系」「営業戦略系」など大まかなカテゴリーを作る。
名前をつける
各グループに仮タイトルをつける(例:「顧客対応の遅延」「在庫管理の不透明さ」)。
粒度を揃える
「細かすぎる課題」→ 上位のテーマに統合
「大きすぎる課題」→ 下位に細分化
ポイント
ファシリテーターが勝手にまとめず、参加者自身に仕分けをしてもらうと納得感が高まる。
粒度を揃えることで、後の深掘り(WHY分析)がやりやすくなる。
3. 課題を深掘る(原因分析)
整理された課題は、まだ表層的な「症状」にすぎません。
次は「なぜそれが起きているのか?」を掘り下げ、根本原因(Root Cause) を特定します。
3-1. WHY分析(5 Whys)
課題を1つ選ぶ(優先度が高く、全員に関係するもの)
「なぜ?」を繰り返す(3〜5回程度)
例:
課題:「納期が遅れることが多い」
なぜ1:製造工程が予定より長くかかる
なぜ2:製造ラインが混雑している
なぜ3:受注計画が現場の生産能力を超えている
なぜ4:営業が現場の稼働状況を把握していない
なぜ5:営業と製造部の情報共有の仕組みがない
根本原因に行き着く
→ この例では「部門間の情報共有不足」が本質的な課題。
3-2. 業務フロー分析
WHY分析だけでは見落とすこともあるため、業務プロセスを可視化して確認します。
現状の業務フローを描く(現場の人に描いてもらう)
誰が/いつ/何を/どうやって行うか
情報の流れや承認プロセスも含める
問題点にマークをつける
遅延ポイント
無駄な工程
情報の断絶箇所
原因候補を特定する
3-3. 制約条件の特定(Theory of Constraints的アプローチ)
「この事業のボトルネックはどこか?」
「この部分が改善されれば全体が大きく良くなる」という1点を見極める。
すべての課題を同時に解決しようとせず、最重要ポイントを絞る。
4. 優先度をつける(評価時く)
深掘りで得られた課題は多くても、実際に取り組めるのは数個です。
そこで次の2軸で優先度をつけることもできます。
インパクト(Impact)
解決したときの効果の大きさ
実現可能性(Feasibility)
実行のしやすさ、必要リソースの少なさ
→ インパクト大×実現可能性大 の課題から着手。
4-1. 優先度をつける(投票)
優先度は必ずしも客観的な事実で決めることも難しく、上層部の意向など様々な要素が関わります。一つここでおすすめなのは投票です。
投票は参加者に一人何票か与え、時間内に優先度が高い課題に票を投じてもらうやり方です。メンバー全員の目線で注目度が高いところがどこかわかり、上位層が意思決定する際にも大きく参考になります。
実務的な進行時間の目安(2時間ワークショップの場合)
課題洗い出し(個人作業+共有) … 20分
課題整理(グルーピング) … 15分
WHY分析+業務フロー分析 … 30分
優先度付け … 15分
まとめ・次のステップ確認 … 10分
まとめ
このプロセスを通じて得られる成果は次の2つです。
現状の整理
事業内容・顧客・提供価値を明確化。
課題の深い理解
表面的ではなく、根本原因まで掘り下げる。
これにより、単なる課題列挙ではなく、次の戦略につながる問題構造化が可能になります。
