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独白シリーズ⑮ 消しゴムの独白

私は、消すために置かれている。
正しさのためでも、間違いのためでもない。
ただ、線が残りすぎたときに、
押し当てられる。

力はいつも、私の外から来る。
迷いの重さ、ためらいの速さ、
決断の遅れ。
それらが一瞬で集まり、
私は紙に触れる。

触れた瞬間、
私は減る。
減ることに、理由はない。
必要だったから、
それだけだ。

私は、何を消したのかを知らない。
言葉か、数か、名前か。
知る必要がないから、
知ろうともしない。

消されたあとの白さは、
私の仕事ではない。
白さは紙のものだ。
私は、削られただけだ。

形は、いつのまにか歪む。
角がなくなり、
向きがわからなくなり、
置かれた場所でも、
正面を失う。

それでも、呼ばれる。
次も、その次も。
私は、選ばれない。
ただ、使われる。

使われたぶんだけ、
私は軽くなる。
軽さは救いではない。
残量の問題だ。

誰も、
私が減ったことを数えない。
減ったからこそ、
仕事が終わったとも言われない。

消した線は、
もう戻らない。
戻らないことに、
私は関与しない。

私は、責任を負わない。
それでも、
痕は私の形に残る。

削られた面は、
触れるたびに変わる。
同じ消し方は、
二度とできない。

それが、
私がここにある理由だ。

私は、
最後まで残るつもりはない。
最後に使われるつもりもない。
気づかれないまま、
小さくなっていく。

消すたびに、
私は少しだけ、
この場所から遠ざかる。

それでも、
捨てられる瞬間のことは、
考えない。

考える必要がないからだ。

私は、消す。
消したあとのことは、
私の役目ではない。

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