病院のドア一枚で隔てられた世界。小児科ナースが伝えたい、付き添い入院の「もう一つのリアル」
先日、私が書いた「付き添い入院の過酷なリアル」についての記事に、ある読者の方からとても大切なコメントをいただきました。
「付き添いをしている保護者のことを、もっと多くの人に知ってほしいです。どんなご家族も、少しでも負担が減るような環境ができることを望んでいます」
この言葉を読んだ時、私はハッとさせられました。 小児科病棟で働いていた際、親御さんたちの過酷な環境を少しでも楽にしたいとお手伝いしてきましたが、根本的な解決のためには「病室の中の工夫」だけでは足りないのだと。
今回はこのコメントにお応えする形で、前回とは少し違う視点からお話しさせてください。 当事者の方だけでなく、今、健康に日常を送っている「周囲のすべての人」に知ってほしい、付き添い入院のもう一つのリアルです。
▼病院のドア一枚で隔てられた「ふたつの世界」
子どもが入院したその日から、親御さんの時間は病室の中でピタリと止まってしまいます。
しかし、病院の自動ドアを一歩外に出れば、社会は何事もなかったかのようにものすごいスピードで動いています。この「社会とのギャップ」が、親御さんを深く孤独にします。
「職場に迷惑をかけているのではないか」という焦り
健康に走り回るよその子を見た時の、言葉にできない感情
きょうだいを実家や友人に預けっぱなしにしている罪悪感
SNSを開けば、友人の楽しそうなランチの写真や仕事の愚痴が流れてきます。 「こんなことで悩めるなんて羨ましいな」と黒い感情が湧いてしまい、そんな自分にまた自己嫌悪してしまう……。
考えたくなくても、暗い病室に独りでいると嫌なことばかりが浮かんでくるし、子どもの病状に対しての不安や、病気にもかかわらずわがままを言ってくる我が子に対するストレスを感じると思います。
そんなことを思ってはならない、言ってはならないことはわかっていても、子どもに対して時にはきつい言葉を投げかけてしまうお母さんやお父さんをたくさん見てきました。
それだけ付き添い入院は過酷であり、その真の過酷さは体の疲労だけでなく、こうした「社会からポツンと取り残されたような精神的孤立」にあると、私は現場で感じています。
▼「頑張って」よりもご家族を救う、周囲のサポート
もし、あなたの友人や職場の同僚が、子どもの付き添い入院をすることになったら。 私たちは、どう声をかけ、どうサポートすればいいのでしょうか。
「大変だね、頑張ってね」「何かあったら言ってね」という優しい言葉も、もちろん嬉しいはずです。
でも、極限状態の親御さんは「こんなこと頼んだら迷惑かな」と遠慮してしまい、自分からSOSを出すことはほぼできません。
本当に助かるのは、「考えさせない、具体的なサポート(提案)」です。
友人として: 「何か手伝う?」ではなく、「今日のおかず多めに作ったから、〇〇ちゃんの(きょうだい児の)お迎えの時についでに渡しに行くね!」「病院の差し入れ、AとBどっちがいい?」と、相手が「YES/NO」や「A/B」で答えられる具体的な提案が喜ばれます。
職場として: 「いつ戻れる?」という確認はプレッシャーになります。「仕事のことは〇〇さんで引き継いで回しているから、今は100%お子さんのことだけを考えてあげてね」と「休むことを明確に許可・肯定する言葉」が、どれほど親御さんの心を軽くするかしれません。
▼誰もが「付き添い」を安心してできる社会へ
子どもが病気になることは、誰のせいでもありません。 明日、あなたの大切な人が、あるいはあなた自身がその立場になるかもしれないのです。
だからこそ、「親の愛情と根性」だけで付き添い入院を乗り切る今の状況は変えていかなければなりません。
きょうだいを安心して預けられる地域のサポート。 気兼ねなく休める職場のシステム。 そして何より、付き添いをする親御さんが「一人で抱え込まなくていいんだ」と思えるような、社会全体での温かい理解。
いただいたコメントの通り「どんなご家族も少しでも負担が減るような環境」を作っていくためには、まず「知ること」が第一歩です。
この記事を読んで「そうか、病室の親御さんはこんな孤独を抱えているのか」と一人でも多くの方が知ってくれれば、たくさんの家族が救われると思います。
▼最後に
「子供と親のそばにいる看護師」として、私はこれからも皆さんの不安に寄り添えるような言葉を紡いでいけたらよいなと思っています。
社会に向けて「ご家族のリアル」を発信し続ける代弁者でありたいと、今回のコメントをいただいて改めて思いました。
現在、大学院に向けて勉強をしているのも、こうしたご家族を取り巻く環境全体をより良いものにしていきたいと思っているからです。
この文章を読んでくれた人々が今よりもより良い明日になれるように願っています。
最後に私が最近読んでいる本のリンクを貼っておきます!
気になる方は是非読んでみてください!
後日、読んでみた感想を書いてみたいと思っています:)
【この記事をシェアしていただけませんか?】
付き添い入院のリアルを社会に広めるため、もしよろしければこの記事の「スキ」や、SNS等での「シェア」にご協力いただけるととても心強いです。
また、「こういうサポートの制度が地域にあって助かった」「企業としてこんな取り組みをしている」といった前向きな情報や、引き続きご家族の生の声もコメント欄でお待ちしております!
