ママが自分の病院に行けない問題を、看護師としてちゃんと言葉にしてみる
朝から晩まで、
子どもの病院、予防接種、健診、園の書類――
「子どものことで動く予定」はちゃんと入っているのに。
ふと気づくと、自分の方はどうでしょう。
ずっと続いている頭痛
産後からなんとなくつらい腰や背中
生理痛やPMSで毎月しんどい
眠れない、泣きたくなる、何もやる気が起きない
「一回ちゃんと診てもらった方がいいかも」と
どこかで分かっているのに、
病院の予約画面を開いては閉じる。
そして今日も一日が終わっていく。
「子ども優先だし、私くらい後回しでいい」
「この程度で受診するなんて、大げさかな」
「仕事も家事もあるし、時間がもったいない」
そんなふうに、自分の体のサインを
“なかったこと”にしてしまうママの姿を、
私は小児分野で働く看護師として、何度も見てきました。
この回では、
なぜママは自分の病院に行けなくなってしまうのか
本当はその裏で何が起きているのか
「それでも一歩だけ、自分のために動く」ための小さな工夫
を、こどもと親のそばにいる看護師として
いっしょに言葉にしてみたいと思います。
1.「忙しいから」は本当だけど、それだけじゃない
もちろん、
ママが忙しいのは事実です。
早朝からの身支度・朝ごはん・子どもの支度
仕事や家事、上の子・下の子の送り迎え
夜のごはん・お風呂・寝かしつけ
その合間に、
電話で予約を取って、
決まった時間に病院に行く――
考えただけで、
「いや、無理じゃない?」と思えてきます。
でも実は、それだけじゃありません。
看護師としてお話を聞いていると、
そこにはこんな“目に見えないハードル”が
積み重なっていることが多いです。
「子どもを誰かに預けないと行けない」
「仕事を休んだり早退したりするのに、また周りに頭を下げるのがしんどい」
「待ち時間で子どもがぐずったらと思うと、行く前から疲れる」
「たいしたことなかったら、“この程度で来たの?”と思われそうでこわい」
これらは全部、
受診ボタンの手前に並んでいる“見えない段差”です。
「忙しいから行けない」ではなく、
「行くまでに越えなきゃいけないハードルが多すぎる」
と言った方が、
本当の姿に近いのかもしれません。
2.子どもの病院には行けるのに、自分の病院には行けない理由
同じ「病院」なのに、
子どものこととなると
がんばって時間を作れるママも多いです。
じゃあ、何が違うのでしょうか。
私は、こんな違いがあると感じています。
子どもの病院
「行かなかったら、この子に何かあったら困る」
園や学校から「受診してください」と言われることもある
周りの大人たちも「行くべき」と言ってくれる
何より、“親として当然”と扱われやすい
自分の病院
「行かなくても、今すぐじゃなければ大丈夫かも」と思ってしまう
誰も「行ってきて」と背中を押してくれない
仕事を休む・家事を人に頼むことへの罪悪感が大きい
なんとなく、“ぜいたく”のような気がしてしまう
つまり、
「子どものため」は“義務”として認められやすいけれど、
「自分のため」は“わがまま”に見えてしまう
社会の空気と、
ママ自身の中の「こうあるべき感」が
重なっているように思います。
でも、本当は逆なんです。
親の体がボロボロになってしまったら、
子どもの「困った」を支える人も
いっしょに倒れてしまう。
だから**自分の受診は、
“ぜいたく”ではなく、
「子どもを守るための大前提」**なんです。
3.「行かなきゃ」より前に、「行けない自分」を責めるのをやめたい
ここまで読んで、
こんなふうに感じた人もいるかもしれません。
「それは分かるけど、結局行けてないんだよな…」
「また先送りにしてる自分が情けない」
でも、どうかここで
自分を追い詰める方向には
舵を切らないでほしいな、と思います。
自分を責めるほど、動くエネルギーは減っていく
「なんで私はすぐ行動できないんだろう」
「この程度もできないなんて…」
こういう言葉を
自分に向ければ向けるほど、
心のエネルギーは減っていきます。
エネルギーが減ると――
予約の電話をかける気力が出ない
何から手をつけたらいいか分からなくなる
「まあ、また今度でいいか」と先送り癖が強くなる
という、悪循環が始まってしまうんです。
だからまずは、
「この状況で自分を後回しにしてしまうのは、ある意味ふつう」
「それくらい大変な毎日を、今私は生きている」
と、
現状をフラットに認めることから
スタートしていい、と私は思っています。
そこから、
「じゃあ、そのうえで“できる範囲の一歩”ってなんだろう?」
を、一緒に考えていきましょう。
4.看護師として提案したい、「受診へのハードルを下げる小さな工夫」
ここからは、
実際に受診につなげるための
現実的な工夫をいくつか挙げてみます。
① 「電話をかける」だけを、別のミッションにする
「受診する」というゴールを
いきなり目指すと、ハードルが高すぎます。
なのでまずは、
【ミッション:予約の電話を1本かけるだけ】
にしてしまってOKです。
電話がつながらなくてもOK
希望の日に取れなくてもOK
「相談だけしたくて…」でもOK
とにかく、
“受診のアクションを1ミリ動かした”
という事実を作ることが大事です。
② 「子どもをどうするか」を、一緒に考えてもらう
受診のハードルのひとつに、
「子どもを預けられない」問題
があります。
ここは、一人で抱え込もうとせずに
最初から周りを巻き込んでいいところです。
パートナーに「この日だけ、◯時〜◯時は子どもをお願いしたい」と具体的に頼んでおく
実家や義実家に、日時を指定してヘルプをお願いする
一時保育・ファミサポ・ベビーシッターなどを、「今回だけ」と決めて使ってみる
「毎回頼む」のはハードルが高くても、
「この症状が落ち着くまでの“期間限定プロジェクト”」
と思うと、
少し頼みやすくなるかもしれません。
③ 「子どもの受診」とセットにしてしまう
自分だけのために行くのが
どうしても気が引けるときは、
子どもの予防接種や健診のタイミングに合わせて、同じ病院・同じ日で受診枠をとる
「ついでに、私も一度相談してもいいですか?」と受付や先生に聞いてみる
という“セット受診”も一案です。
小児科で難しければ、
小児科の日の前後に
自分の婦人科や心療内科の予約を入れる
など、「子どもの予定に自分を“便乗”させる」
作戦もあります。
④ 「一人で説明できる自信がない」場合はメモを味方にする
いざ診察室に入ると、
緊張してうまく話せないことも多いです。
症状の経過
生活の状況(子どもの年齢・ワンオペかどうかなど)
心配していること・聞きたいこと
を、
スマホのメモか紙に箇条書きしておくだけでも、
診察のハードルはぐっと下がります。
看護師側からすると、
「ここまで書いてきてくれたんだ」と分かるだけで、
こちらもサポートしやすくなります。
5.「自分の受診」は、子どもへのプレゼントでもある
最後に、とても大事なことを
一緒に確認させてください。
あなたが自分の体を大事にすることは、
子どもにとっても大事なことです。
親がずっと我慢し続けて、
ある日突然倒れてしまうよりも、
しんどいときに「病院に行く」という選択肢を持っている
困ったら誰かに相談することを知っている
「私の体も、この家族にとって大事なんだ」と扱っている
その姿を、
子どもは思った以上によく見ています。
「具合が悪くなったら、ちゃんと助けを求めていいんだ」
というメッセージを、
あなた自身の行動で
少しずつ教えてあげることにもつながります。
おわりに:今日も「自分を後回しにしながら」家族を回してきたあなたへ
もしかしたら今、
痛み止めでごまかしている症状
「そのうち行こう」と思いながら何ヶ月も経っている不調
が、頭に浮かんでいるかもしれません。
それでも今日まで、
家族の生活を回し続けてきたあなたは、
決して「自分を大事にできないダメな人」ではありません。
そうせざるを得ないくらい、
大変な毎日の中で踏ん張ってきた人です。
このnoteを読み終わったあと、
病院名を一つだけ検索してみる
スマホのカレンダーに「受診候補日」を入れてみる
パートナーや友人に「実は、こんな症状が続いてて…」と話してみる
そんな**「1ミリの行動」**からでかまいません。
この連載ではこれからも、
親自身の体と心を守る視点
子どもの病気と親のケアのバランス
「自分を後回しにしがちな人」のための小さな作戦
について、
こどもと親のそばにいる看護師として
言葉を届けていきます。
もしこの記事が少しでも、
「私が病院に行くことも、家族のためなんだ」
「まずは電話だけでもしてみようかな」
と思うきっかけになっていたら、
フォローやスキで教えてもらえると、とても励みになります。
今日も、自分の不調を抱えながら
家族のために動き続けた一日、本当におつかれさまでした。
どうか近いうちに、
あなた自身の体にも、
誰かの専門的な目とやさしい手が届きますように。
