正月に「しゃぶ葉」と「温野菜」をハシゴして見えた、2つの戦略
今年の正月、長年の論争に決着をつけるべく、
しゃぶ葉 と しゃぶしゃぶ温野菜 をハシゴしてきた。
結論から言うと、この2つは
同じ「しゃぶしゃぶ食べ放題」というカテゴリーにいながら、
戦い方がまったく違う店だった。
気軽さの しゃぶ葉。
品質と気配りの 温野菜。
どちらが優れているか、という話ではない。
顧客にどんな価値を届けたいか。
その戦略が完全に違う。
■ 温野菜:品質と気配りのストロングスタイル
まず驚いたのは、肉質の違いだ。
特に牛肉は、火を通した瞬間の香りと食感が明らかに違う。
タレは2種類しかない。
だが、その2つの完成度が高い。
「選ばせない代わりに、迷わせない」設計だ。
そして、今回いちばん印象に残ったのがこれ。
「出汁、少なくなってますね」
こちらが頼む前に、足しに来てくれた。
この一手間で、店のレベルは一気にわかる。
お客さんのテーブルを見ている。
忙しいはずの時間帯で、この動きができる。
このご時世、この業態で、これは本当にすごい。
■ しゃぶ葉:体験価値とセルフ文化の王者
一方のしゃぶ葉は、とにかく楽しい店だ。
タレを自分で選び、
デザートも自分で作り、
ワッフルを焼く音が聞こえる。
体験そのものが、商品の一部になっている。
ただし、その分だけ店舗は戦場になりやすい。
これまで何度も行った経験からも、
スタッフが常に補充に追われている
人が集中する場所ほど汚れやすい
厨房よりホールの負荷が高い
こういう「構造的にしんどい時間帯」が生まれやすい。
さらにセルフ中心ゆえ、お客の動き=オペレーションの乱れが、
そのまま店の空気に反映される。
■ 実は最大の違いは「どこで人件費を使うか」
近年の外食は、人件費と食材高騰で、生き残りが一気に難しくなった。
しゃぶ葉は、「自分でやる楽しさ」を前面に出し、
人件費を極限まで圧縮するモデル。
温野菜は、品質と接客密度に人件費を集中投下するモデル。
食べ放題で配膳式を採るのは、正直、勇気がいる。
ロスは抑えられるが、人は必要になる。
温野菜はその分を、品質と顧客体験で回収する戦い方をしている。
■ 顧客体験は「世界観」で決まる
しゃぶ葉の強みは、
「家族でワイワイ楽しむ場所」であること。
温野菜の強みは、
「品質と気配りの店」であること。
どちらも正義で、どちらも間違っていない。
ただ、今回あらためて感じたのは、
顧客の視点を、どれだけ細かく拾えているか。
ここが、ブランドの強さを決める。
温野菜で出汁を足してくれた、あの一瞬に、店としての思想が全部詰まっていた。
■ 業態の違いは、オペレーションの違い
これは、実は組織論の話でもある。
飲食店に行くと、
天井のエアコンルーバーや、グリストの臭気、トイレの清掃まで見てしまうのは、マック時代の職業病みたいなものだが(笑)
汚れが残っている店は、オペレーションが乱れている店。
汚れに気づけない店は、気配りの余裕がない店。
しゃぶ葉は
「構造的に忙しくなる設計」。
温野菜は
「忙しい中でも、気づきの余裕を残す設計」。
完全に思想が違う。
■ 結論
「しゃぶ葉」も「温野菜」も、どちらも良い店。
ただし、戦っている土俵が違う。
今日はゆっくり、品質で満たされたい → 温野菜
家族でワイワイ、自分で作る楽しさを味わいたい → しゃぶ葉
どちらも、正月にふさわしい満足がある。
ただ、今日の体験を一言で言語化するなら、
“気づきの一手間”が、価格以上の価値を生む。
温野菜は、それを見事に体現していた。
▼ 僕の世界観の中心はこちら(第1シリーズ)
https://note.com/oneforward/m/m11ada02b9313
▼ もっとライトに読める短話はこちら(小ネタ集)
https://note.com/oneforward/m/m9e9742efde9b

