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【SS】 食事が喉を通らない (1103字)  #シロクマ文芸部

 熱帯夜の不快な湿った暑い空気が忍び寄ってくる。夕方になると決まって起きる現象だ。昼間は酷暑が連続する日々が続き、夜も涼しくなることはない。遂に日本から四季が消え去り、酷暑の夏だけが日本列島を一年中覆うようになってしまっていた。二十四節は暦上だけは残ってはいるが、その違いはもはや過去のものだ。しかも、昼間の電気の使用量が遥にキャパを越えるため夜は電気が強制的に止められる生活を強いられている。政府も頭を抱えている。

 今日もまた太陽が傾き、湿った暑い空気がどこからともなく忍び寄る恐怖を感じ始めた。今夜もまた眠れないかもしれないという覚悟を日本人は迫られているかのようだった。だが、昨日のそれとは明らかに何かが違っていた。

「おい、今日はなんだか速くないか…」
「えっ、まさか…本当だ、速い、明らかに速いしいつもよりかなり高いぞ」
「これじゃあ、今日も食事にありつけそうにないかな…」
「だよな…俺、もう一週間くらいはまともに眠れてないんだが…」
「いいじゃないか、俺なんてもう二週間だ」
「えっ、あ、本当だ。顔がすごいことになってる。げっそりして目がくぼんでるよ。しかも、そこに水というかお湯が溜まってるし…」
「ああ、体の中の水分と空気中の水分が引き合ってるみたいで、俺の体が負けるんだよ。全部引き出されてるみたいだ…」
「お前、窓開けて寝てるか?」
「そんな恐ろしいことはできないよ。むっとした鼻をつくような暑い空気が窓から入って身体中にまとわりつくじゃないか。そういうお前はどうやって寝てるんだよ」
「俺は…ほら、裏に流れてる川…そこで浮かんで寝てる」
「えっ、メチャクチャ危険じゃないか」
「そうでもないさ。ちゃんとロープで岸に固定してるし」
「いやいや、他の人に見つかるだろう」
「大丈夫。棺桶じゃなくて屋形船みたいにしてるから。流れる水を取り込んで船底で浸りながら寝てるんだよ。酷暑の昼間は」
「なるほど…考えたなぁ。俺もそれパクろうかなぁ」
「いいんじゃない。十人くらいはおんなじことやってるし」
「えっ、そんなに…」
「それより今日も食事は無理そうだなぁ。腹減ったよなぁ」
「ああ、でも沸騰してるような熱すぎる血は俺たちには無理だしなぁ」
「まぁ、半年くらいならなんとか我慢できるけど終わりが見えないよな」
「ああ、もしかしたらこのまま餓死してしまうかも…」
「いや、俺たちはすでに死んでるんだからもう一度死ぬことはないよ」
「あー、昔みたいにフレッシュな真っ赤な血が恋しいなぁ」
「まさか、この状況…永遠に続いてしまうのかな」
「…」

 その日の夜、日本中のバンパイアたちは、人間よりも先に絶滅してしまうかもしれないという恐怖に晒された。


あとがき

 毎日毎日、暑い日が続きますね。我が家でも24Hエアコンがフル稼働です。もし停電にでもなったらと考えると恐怖です。暑すぎる昼間は外出を控えてますが、平日はショッピングモールなどに涼を求めていく生活が続いてます。8月になれば聖子ちゃんのコンサートもあるので体力を温存しなければと考えながら、熱帯夜とバンパイヤのお話を捻り出しました。どうやら熱帯夜や酷暑日はバンパイヤにとっても耐え難いもののようです。

 表紙の画像はCHATGPTに作ってもらいました。

こっちの長編もよろしくお願いします。


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