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2月4日 西の日 【SS】目指せ最西端

【今日は何の日】- 西の日

 ごろ合わせで「西」の日と制定されたようだ。この日は、西に行けば幸運に巡り会えたり、西から来た人と仲良くなれる日とされている。「西」というのは、もともと日が沈む意味で日が去にし(いにし)方向がいつの間にか「にし」にかわっていったのだそうだ。

 西自体はマイナスイメージがあるのも事実だが、中国の風水では西は金の方位とされている。幸運を目指して西に移動してみるのもいいかもしれない。

 ちなみに私も東京→広島→福岡と徐々に西に移動してきている✌️


【SS】目指せ最西端

 東北の青森に生まれた西村タテルという若者がいた。物心ついた頃から、もっと暖かい土地に行きたいという憧れを漠然と持っていた。そして、できることなら鉄道を使って移動し日本の一番西まで行ってみたいなと考え始めていた。ちょうど高校を卒業する頃だった。タテルは大学受験をしなかった。かといって就職するわけでもなかった。どうしていいか悩んだのである。小さい頃から憧れていた「西」を目指して旅してみたいという思いが強くなっていたのである。

 タテルの両親は良き理解者だった。一度しかない人生だから迷っているならその迷いがなくなる様な行動をしてみればいいと背中を押してくれたのだった。タテルは、日本最西端の鉄道の駅を調べ、そこまで鉄道での移動を敢行し、しばらくは最西端の駅近くに住んでみたいと考えた。しかし、全ての費用を親にねだるわけにはいかない。なのでアルバイトをしながら最西端の駅を目指すことにした。

 同級生が大学に通い始めたり、新しい会社で仕事を始めようとしているときに、タテルは最西端の駅までの鉄道を調べ、どこでバイトをすべきかを調査し、大体の計画を立てていた。タテル一人だけが友達とは違う行動に打って出たのだ。タテルの計画は、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡のそれぞれの地で一ヶ月ずつバイトを実施して、最終的には、長崎県のたびら平戸口という駅を目指すというものだった。目的地を除けば大きな都市ばかりである。これはバイトを見つけるのに時間をかけたくないという思いもあった。問題は住むところとバイトがセットになっている仕事が都合よくあるのかということだったが、探してみると居酒屋やスナックなどで割と見つかることが多かった。もっともまだ十八歳なので新成人とはいえアルコールは飲めないし飲んだこともなかった。それでもなんとかバイトの口を見つけながら日本列島を南下し西に向かうことができた。

 はなやいだ街でバイトを経験するうちに都会で生活するのは大変だけどなんでも揃うものだということも理解した。しかし、気をつけていないと騙されてしまうということも同時に覚えていった。そして、目的地の日本最西端の駅、たびら平戸口に辿り着いた。ここは、平戸島という島への玄関口でもある。昔はフェリーで渡るしか術がなかったが今は橋がかかっている。

「やっとここまで来ることができた。半年以上かかったけど、寒くなる前にたどり着くことができたなぁ。しかし、これまでバイトしてきた街と違って、僕が育った街みたいに何もないところだったんだ。でも、ここにしばらく住んでみようかな。どうせなら島に渡って生活をしたいな」

 そう思ったタテルは、強い意志で歩き出し、平戸島につながる平戸大橋に向かった。そして歩いて橋を渡った。ここは、ジャパネットたかたの高田会長が生まれ育ったところで、その昔は隠れキリシタンが多く住んでいた島だった。リュック姿で歩いていると、声をかけられた。

「おにいさん、どちらから観光に来らしたと」

「え、いや。仕事と住む場所を探しにきました」方言に戸惑いながらも答えた。

「ここで仕事?そがん人は初めてばい。よかったらウチ来るね」

「えっ、おばさんの所へですか?いいんですか」

「ええよ。困ってる時は助け合わんばたいね」

 偶然に声をかけてもらい一緒に行くことになったが、タテルはまだ半信半疑だった。「上手い話には裏があるもんだ」と内心思っていた。

 着いたところは、水産物の加工工場「西島かまぼこ工場」というところだった。さっき出会ったおばさんは、この工場の主だったのだ。最近、働き手が高齢化で減って困っていたのでお互いが渡りに船だったようだ。

 工場に着いた時、奥から若い女性が出てきた。

「お母さん、どこにおったと。心配しよったとよ」

「ああ、かんにん、かんにん。この人が仕事探しとるっていうけん、連れてきたったい。ああ、そういえばまだ名前を聞いとらんやった。なんていう名前」

「あ、僕は、青森出身の西村タテルといいます」

「タテルさんね。うちは西島マサコでこっちが娘のサクラ。タテルさんは方言があまりないね」

「はい、この半年でどこに行ってもいい様に標準語を訓練しました。ただ、イントネーションはまだまだですけどね」

「うちのサクラも今年高校を出て、ここを手伝い始めたんだけど、やっぱり力仕事はむずかしかっちゃんね。もっぱら販売を担当させとると。だから、タテルさんはかまぼこを作る工場で働いてもらいたかと思っとるとたい」

 こうして、とんとん拍子に仕事も見つかり、住むところまで貸してもらえることになった。西嶋かまぼこ工場は、昨年ご主人が亡くなり、妻であるマサコが家業を引き継ぎ、サクラが手伝い始めたということだった。そのため自宅には女性二人しかいないので、タテルは用心棒代わりでもあったのだ。こうしてタテルの平戸での生活が始まった。西に向かえば幸運に巡り会えると信じて平戸までやってきたが、もしかするとまだまだ幸運が転がってくるのではないかという予感をタテルは感じ始めていた。なぜならサクラという女性はとてもしとやかでタテルは一眼見た時から惹かれてしまっていたのである。その時、サクラが工場にいるタテルを呼びにやってきた。

「タテルさん、ご飯できましたよ。一緒に夕食にしましょう」なぜかサクラはタテルにだけは標準語で話しかけるようになっていた。

 タテルはにっこりと微笑み、これが生涯続いていくに違いないと感じていた。そして、この地方の方言を早く覚えないといけないなとも思い始めた。


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