【SS】雨上がり (1000字) #シロクマ文芸部
水たまりがたくさんできている。梅雨の季節の土砂降りの後だから仕方ない。そう思いながら舗装されていない田舎道を長靴で歩いている女の子がいた。もう、雨は上がっている。水たまりが雲の間から顔を覗かせた太陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。
「きれい」思わずマリは口に出してしまった。
近くにいた人たちが不思議そうな視線を投げかける。でも、マリは全く気にしない。黄色い長靴で水たまりに近づいてはしゃがみ込み、覗き込んで挨拶をする。
「小さい水たまりさん、こんにちは。もう、晴れちゃったから大きくなれないね」
次の水たまりでも同じことを繰り返す。
「少しだけ大きい水たまりさん、こんにちは。あなたはキラキラが一番綺麗よ」
挨拶をして角を曲がったら、大きな水たまりが道を塞ぐようにできていた。
「大きな水たまりさん、池みたいだね。マリ、渡れるかな」
「ここは少し深いのよ。渡りたいの?」水たまりが返事をした。
「うん、おうちに帰りたいの」マリは驚いた様子もなく返事した。
マリの周りから人影は消えていた。水たまりの表面がしばらくの間ザワザワと音を立てて波立った。マリは水たまりの変化をじっと見つめた。
「さぁ、マリちゃん。階段を作ったわよ、降りて行きなさい」
「わぁ、すごーい。大きな水たまりさん、いつも、ありがとう」
マリは現れた階段を降りて、大きな水たまりの中へと吸い込まれていった。マリが水たまりの中に消えてしまうと大きな水たまりは、再びザワザワと音を立てて波立ち階段を水で覆い隠してしまった。
階段を降りながらマリは空を見上げた。そこには入ってきた大きな水たまりが見えていた。
「まるで海の中にいるみたい。大きな水たまりがキラキラして綺麗」
「ふふ、そうでしょう。雨が降っている時は泥が入って濁ってしまうけど、太陽が出れば綺麗な水たまりになるのよ」
「うん、マリ知ってる。だって、昨日も入ったもん、昨日はキラキラしてなかったよ」
「そうだったわね。でもどうして私はマリちゃんとお話ができるのか知ってる?」
「うん、だって私も水田マリだもん、ママが言ってた」
「ふふ、そうね。マリちゃんの名前も『みずたまり』だったわね。うーん、でも違うわよ…マリちゃんは世界中で一番大きな水たまりから生まれたからなのよ」
「そうなの?」
「だって、マリちゃんの涙は塩からいでしょう」
マリはズンズン階段を降りてトンネルの先につながる海を目指した。
了
あとがき
子供の頃は、水たまりを見つけると靴のままバシャバシャと入っていたことを思い出しました。そして靴を汚してしまい母に叱られたものです。そんなことを雨上がりのたびにやっていたように思います。まだ、舗装されていない道がたくさんありましたから…
表紙の画像はCHATGPTに作ってもらいました。
こっちの長編もよろしくお願いします。
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