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R.I.P. Ozzy Osbourne 

 オジー・オズボーンが死んだ。ついこないだ故郷バーミンガムで盛大なコンサートをやったばかりだったのに……とてつもない喪失感に見舞われている。

 いつもお世話になっている通訳の染谷和美さんのポスト。確かにそうかもね。76歳はまだ若いが、大往生と言える死に様だったかもしれない。

 正直、オジーのレコードって70年代サバスの諸作しか聞き込んだことはない。ソロでよく聴いたのは、82年に出た全曲サバスのセルフカヴァーのライヴ・アルバム『Speak of the Devil』のみ。オジーさんは歌へただし、ステージの動きも弱い。声も美声とはとても言えない。なのになぜこんなに喪失感が大きいのか考えると、もちろん彼のどこか憎めない愛されキャラもあるし、オジー時代のサバスが、こと日本ではお話にならないぐらい評価が低くて、メディアからはまったく無視されていたから、その時代の個人的ルサンチマンが大きいんだと思う。

 レッド・ツェッペリンは別格としても、ディープ・パープルあたりと比べても、サバスは人気も評価も全くもって低かった。これは当時からサバスを聴いている人なら誰でも同意してくれると思う。以前から言っているように、70年代前半〜半ば、アルバムでいうと『Vol.4』(1972)から『Sabotage』(1975)までの諸作でサバスが到達した高みは、同時期のレッド・ツェッペリンにもキング・クリムゾンにもデヴィッド・ボウイにもロクシー・ミュージックにもクイーンにもひけをとらないものだったと確信する。海外ではそれなりに人気も評価もあったと思うが、少なくとも日本では、ともすればキワモノ呼ばわりされ、まっとうな音楽として扱われなかった。正直、その時に感じた日本の音楽メディアの批評眼の節穴加減には今でも腹が立つ。

 とはいえそういう私自身も『Technical Ecstacy』(1976)『Never Say Die』(1978)という凡作が続き、すっかりサバスへの熱意が冷め、同時期に台頭してきたパンクやニュー・ウエイヴに夢中になって耳が変わってしまい、オジーのサバス脱退というニュースにもまったく心が動くことはなかった。

 70年代末〜80年代のNWOBHMのムーヴメントを経て、ソロになったオジーはアメリカに拠点を移しLAメタル周辺で存在感を強めていく。前記の『Speak of the Devil』もその文脈で制作されたと思うが、このアルバムをきっかけに「やっぱりサバスかっこいいじゃん」という声が高まる。少なくとも私はそうだった。私はヘヴィ・メタル界の動きにはまったく疎かったので、世間の動向関係なく、ただ昔のサバスの曲をオジーが再演してるというだけで喜んで聴いていたんだけど、でもやっぱり当時の日本ではさして話題にもならなかった気がする。とはいえその後オジーがメタル界のドン、もしくはトリックスターとして巨大なカリスマになっていくにつれ、日本も含め世界的にサバスの評価も高まったことは確かで、それが先日のバーミンガムでの空前の「生前葬」にも繋がっていくわけだ。しかし、オジー時代のサバスというと初期2枚に評価が集中していて、『Vol.4』や『Sabotage』は未だ全く正当に評価されていないと思う。

 オジー時代のサバスの影響はヘヴィ・メタル界隈だけではない。グランジ以降のオルタナティヴ・ロックやヒップホップへの影響も極めて大きい。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロが先日のライヴのオーガナイザーをつとめたことがその証だ。以前『Rockin' On』に書いた文章を一部引用します。

 「Who Samled」というウエブ・サイトによると、ブラック・サバスのカヴァー・ソングはのべ649。この数は今回の特集(=『70年代ハード・ロック伝説』引用者注)で取り上げられたバンドの中でクイーンに次いで多い。そしてサバスの楽曲をサンプリングした曲はのべ208で、クイーン、レッド・ツェッペリンに次いで多い。内訳を見ると、スレイヤー、メタリカ、ガンズ&ローゼズなどヘヴィ・メタルはもちろん、モグワイ、ウィーザー、ベック、レッチリ、アークティック・モンキーズといったオルタナ、カーディガンスやダフト・パンクといったポップス/テクノ、そしてカニエ・ウエストやエミネム、ビースティ・ボーイズといったヒップホップまで、その範囲は驚くほど広い。もちろんカヴァーやサンプリングの多さがそのままアーティストの評価や人気に繋がるものではないが、少なくとも後進のアーティストに対する影響力の大きさという点では、今回の特集の中でも屈指のものであることがわかる。
 さらにニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンもサバスの影響下にあることを表明しており、ヘヴィ・メタルのみならストーナー・ロック、ドゥーム・メタル、スラッジ・メタルといったサブ・ジャンルを生んだオリジネイターでもある。

『Rockin' On』2022年8月号


ヒップホップに於けるブラック・サバスの影響はどうだろうか。ウエブ・サイト「Who Sampled」によれば、ブラック・サバスの曲をサンプリングした楽曲はのべ236。もっとも多くサンプリングされたのはファースト・アルバム『黒い安息日』(1970)収録の「眠りのとばりの後に(Behind the Wall of Sleep)」で、主にビル・ワードのドラム・フレーズがア・トライブ・コールド・クエストやアウトキャスト、ジャングル・ブラザーズなどのべ47ものアーティストにサンプリングされ、たとえばレッド・ツェッペリンの「ホエン・ザ・レヴィー・ブレイクス」のジョン・ボーナムのプレイと同様、ヒッピホップに於ける定番ブレイクスとなっている。またセカンド・アルバム『パラノイド』(1970)収録の「アイアン・マン」は、そのヘヴィなギター・リフと共に楽曲のモチーフまでが、カニエ・ウエスト、バスタ・ライムス、サー・ミックス・ア・ロットといったアーティストによって引用されている。ほかにもビースティ・ボーイズ、アイス-T、サイプレス・ヒルといった人たちがサバスをサンプリングしているが、いずれにしろ共通しているのが、ただの素材として扱うのではなく、その世界観やサウンドの質感といったところにまで共鳴しているのがうかがえること。サバスのサンプリングを用いて、重厚感や陰鬱でグルーミーな雰囲気を自らのサウンドに加え、音楽ジャンルや年代、国境や民族やトライブを超えたクロスカルチュラルな融合を果たし、音楽の多様性を広げ、新しい音楽表現の可能性を示している。

『Rockin' On』2024年5月号

 まだまだ書きたいことはいっぱいあるが、詳しくはロッキングオン2022年8月号と2024年5月号をご覧ください。サバスの長文論考をロッキングオンで書ける時が来るとはまさか思わなかったが、それも巡り巡って渋谷陽一さんのおかげ、と言えるかも。

 見事な大往生を遂げた魔王・オジー(私は「オズボー」なんて呼んでたけど)のご冥福を祈ります。

以下、過去のインスタグラムの投稿。

Ozzy Ozbone / Speak of the Devil (1982)

ブラック・サバス時代はよく聞いてたけど、独立してからのオジーはイマイチ関心がなかった。なぜこのライブ盤を買ったかと言えば、全曲オジー時代のサバスの曲をやってるから。ブラッド・ギルズ(g)など、LAの若手ミュージシャンがバックをやってるけど、はっきり言ってサバスよりはるかにうまい。タイトでソリッドな演奏のキレのよさは相当にカッコイイ。これに比べるとサバスの演奏はずいぶんモタモタして聞こえるが、それはそれで別の味わいがある。このライブ盤のカラッとしたスポーツ感覚の演奏は英国風の深みや翳りに欠けることは確かだが、当時はそれが新鮮で、周りの友達はニューウェイブばかり聴いてた中、ひそかに愛聴していた。もちろんオジーさんのヴォーカルのダサさは全然変わらないが、そのダサさがいいんです。これはアメリカ盤だが、確かイギリス盤で「Talk of the Devil」というタイトルのものもあって(中身は同じ)、SpeakとTalkってなんかニュアンスの違いがあるのか。単にイギリス英語とアメリカ英語の違いか。

それにしてもアタマ悪そうなジャケットだなぁw

ブラック・サバスと言えば1〜3枚目ぐらいまでが評価の対象で、それ以降はあまり顧みられることはない。特にこの1975年発表の6枚目とか、サイアクなジャケの印象もあって全く無視されてるけど、私は本作こそがサバスの最高傑作であり、70年代英国ロックの金字塔だと思っている。ポップとは程遠い実験性、ハード・ロック〜ヘヴィ・ロックの枠を大幅に踏み越えたプログレとクラシカルと狂気の祭典。ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」と同じ年の発表というのは納得。久々にフルで聴いたけど「MEGALOMANIA」とか「SUPERTZAR」なんてヤバいの一言。ボウイにもロキシーにもクリムゾンにもクイーンにも負けてない、75年当時の英国ロックの頂点だと今でも思うが、このジャケのせいで、みんな中身を聴く前に敬遠しちゃったんじゃないか。これは当時のUSオリジナル盤だけど、それまでのサバスのくぐもったような、バーミンガムの曇天のような録音に対して、メリハリの効いた派手な音になっている。音作りの方針が変わったのか、アメリカプレスだからそういう音になったのかはわからない。エンジニアは前作と同じ人なんですけどね。英国オリジナル盤を聴いてみたいところ。


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